【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。

大森 樹

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7 助けて

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 そして暗い部屋で目が覚めた。どれくらい時間が経ったのかわからない。

 ――そういえば前回フィン様に助けてもらった時も、こんな状況だったわね。

 とても怖いはずなのに、そんなことを思い出すことが不思議だった。今回は彼が来てくれるはずがないのに。

 この部屋には私以外誰もいないが、ハンナや他の皆は無事だろうか。

 食事の約束をしていたので、時間通りに行かなければきっと誰かが我が家に連絡してくれるはずだ。もしくは……身代金の要求をすでに犯人がしているかもしれない。

 そんな時、乱暴にドアが開けられてゴロつきが入ってきた。

「おお、起きたのか」
「……ここはどこなの」
「そんなこと言うわけねぇだろ。死なれちゃ困るから食え」

 パンと水を目の前に置かれたその時、外でドサドサと大きな音がした。

 ――まさか、フィン様?

「なんだ、この物音は」

 ゴロつきが異変に気がついて部屋の外に出ようとした瞬間、一人の男が中に入ってきた。




「アメリア、無事か!」




 それは……フィン様でなく、テオドールだった。彼はゴロつきたちを殴り飛ばして一瞬で倒してしまった。

「テオ……ドール……」
「大丈夫か? 怖かったな。もう平気だ」

 テオドールに抱き寄せられ、ポンポンと頭を撫でられた。

「……助けてくれてありがとう。よくここがわかったわね」
「ああ。店に来ないから、アメリアの家に迎えに行ったら誘拐されたって聞いて必死に探したんだ」
「心配かけてごめんなさい」
「いいんだ。君が無事なら」

 テオドールは私の頬を大きな手で包み込んだ。

「ハンナとアンは無事かしら? 二人侍女が乗っていたでしょう」
「ああ、二人とも無事だ。安心してくれ」

 笑顔でそう言ったテオドールの胸を、全力で押し除けた。

「っ……! アメリア、急にどうしたんだ」
「あの馬車に侍女はハンナしか居なかったわ。あなた、これはどういうことなの」

 全力で探したと言う割に、テオドールは汗ひとつかいていなかった。友達を疑いたくなかったが、それがなんとなく引っかかったのでかまをかけたのだ。

「答えて」
「……ハンナだけだったか。じゃあ俺の勘違いかな」

 テオドールからスッと表情が消えていく。口元だけで笑っているのが不気味に思えた。

「テオドールは、学生時代にハンナともよく顔を合わせていたはずよ。我が家に行ったというのであれば、彼女があなたに状況を話すはず。人数を間違うはずがないわ」
「ふっ……ははは、アメリアは本当に頭がいい女だな。わざわざここまで芝居したのに無駄になったな」

 テオドールは低い声を出し、意地の悪い顔で笑い出した。

「アメリア、世の中には知らない方が幸せなこともあるんだぜ?」
「なんですって」
「知らなければ私と幸せに結婚できたのに。頭はいいが、馬鹿な女だな」

 テオドールと結婚なんてするはずがないではないか。

「既成事実を作るしか無くなったな」

 私はテオドールに床に押し倒された。その歪んだ笑顔に、恐怖で身体が震える。

「冗談はやめて」
「これが冗談にみえるか? 公爵家のお嬢様ともあろう人が、初めてがこんな場所とは可哀想にな。でも私が触れればすぐに良くなるさ」

 テオドールの顔が私に近付いてきた。気持ち悪くて、怖くて身体が震える。

「嫌っ!」
「俺たちは夫婦になるんだ。大人しくしろ」
「フィン様、助けてっ!」

 私は来るはずのない人の名を必死にそう叫んでいた。

「あいつが来るはずないだろ」
「やめて、触らないで。助けて、助けてフィン様っ!」
「抵抗しても無駄だ」

 もうだめだと思ったその時、私に覆い被さっていたテオドールが宙を舞いそのまま床に叩きつけられた。

「アメリアに触れるな」

 そこにいたのはフィン様だった。まさか、まさか彼が助けに来てくれるなんて。


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