【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。

大森 樹

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9 人は見かけによらない

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 後に、全てはテオドールが仕組んだことだと判明した。彼は伯爵家の三男であるため、公爵家の肩書が欲しかったそうだ。

 実はテオドールは学生時代から私を狙っていたらしい。見た目が良く御令嬢から人気のあったテオドールは、そのうち私から彼を好きになるだろうと、たかを括っていたらしい。しかし実際は、私と友人にはなれたが恋仲に発展することはなかった。

 そのため、一年前に誘拐事件を計画した。彼が雇ったゴロつきたちに誘拐させて、自分が助けるという自作自演の予定だった。それで私がテオドールに惚れるはずという筋書きだったが……フィン様が一番に助けてしまった。

 そして、私とフィン様が婚約。それを彼は恨んでいたらしい。そのため今回もう一度誘拐を計画した。

 クラスの友人たちと集まる予定という話も真っ赤な嘘だったようだ。

「すみません。私は花言葉なんて全く知らなくて……アメリア様に花を贈りたいという話を騎士団でしていたら、あの男に『薔薇を贈ればいい。アメリアは黄色が一番好きだから、そうすれば喜ぶ』と言われたんです。あなたとあいつは友人だと知っていたので、話を信じてしまいました」

 やはり、彼は花言葉を知っているタイプの男性ではなかったのね。それは見た目通りだ。

「そうだったの」
「あなたから『別れたい』と手紙を貰って初めて変だと気が付きました。そして、他の人に聞いたら黄色の薔薇は別れる時に贈る物だと聞いて青ざめたんです」

 その後にテオドールに抗議したらしいが『まさかそんな冗談信じてたのか』と笑われたらしい。そして、誤解を解こうとしたが……私が会おうとしなかったのですれ違ったままになってしまった。

 しかも、あの子どもは全く関係なかったことが判明した。テオドールは、この計画のために人を雇ってフィン様に似た容姿の子どもを探したらしいのだ。

 そして見つかったのが、私が会ったあの子だった。あの子は父親が亡くなっており、お金に困っていたところにテオドールがやってきて大金をチラつかせて取引を持ちかけてきたらしい。

 髪の毛は違う色だったので、可哀想だが染めたとあの子の母親が泣きながら話してくれた。

 父親の肖像画を見せてもらうと、フィン様に少し似てはいるがもっと細身な男性だった。

「申し訳ありません。どんな処罰も受けます。お優しいあなた様に酷い嘘をつきました」

 あの女性は私が渡したダイヤも売ってはおらず、そのまま返してくれた。

「あなたも被害者のようなものだわ。それに、これはもうあなたにあげたもの」
「いえ、しかし……」
「あの子の髪の毛、早く戻してあげてね」
「うっうっ……はい。ありがとうございます」

 女性は泣き崩れていた。フィン様からは『あなたは甘いです』と言われたが、私はこれで良かったと思っている。

 つまりは、私たちのすれ違いは全てテオドールが計画したことだった。

 テオドールの罪が全て明らかになり、平民落ちさせた上での国外追放が決まった。なのでもう二度と会うことはないだろう。

 彼の生家から我が家にも多額の賠償金が支払われたため、そのうち没落するのではないかという話もある。

「アメリアを泣かせて二度も誘拐したのに、金で許してやるんだ。感謝して欲しいものだな」

 そう言ったお父様の目は笑っていなかった。そう、きっと……えげつない方法で搾り取ったのだろう。お父様はそういう男だ。敵には回したくはない。

 男前で人気者だったテオドールが捕まったこの事件は、社交界をざわつかせた。ショックを受けた若い女性たちも多かったらしい。

 誰もがテオドールは、爽やかで明るい好青年だと思っていた。しかし、実は裏ではかなり女遊びも激しかった上に金遣いも荒く……あまりいい男ではなかったようだ。

 まさに人は見かけによらないものである。


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