幸せな存在 ~歩み寄る恋をしよう~

志生帆 海

文字の大きさ
1,110 / 1,865
小学生編

HAPPY SUMMER CAMP!④

しおりを挟む
「宗吾さんっ、しっかりして下さい」
「参ったな……いや先方が間違えているのかもしれないか……」
「じゃあ、僕が確認しましょうか」

 可愛い瑞樹は女性受けする王子さまだ。必要以上に人目に付くわけにはいかない!

「いや、俺がしてくるよ。君は皆の所で待っていてくれ。そうだな流の後ろにいろ」(女性から見えないように、隠れていてくれ)
「えっと……そうしますね」

 くるりと振り向くと、月影寺men'sが揃って心配そうに俺を見つけていた。

「あー コホン」

 わざと咳払いして、もう一度インターホンを押す。

 すぐにザワザワと大勢の人の気配をドア越しに感じる。おいおい、一体何人で宿泊してるんだ? 何の集まりだか知らないが、俺たち並の大所帯のようだ。

「あの、すみません。怪しいものじゃありません」
「それは知っています」
「えぇ? 知っている?」
「あ、いえっ、何かご用ですか」
「ちょっと確認したいのですが、このログハウスの予約票を見せていただけませんか」
「えっ……予約票ですか」
「あの、本当に今日の予約ですよね?」
「えぇ、ほらっ」
「しっ、失礼しました」

 ヤバイなぁ。本当にダブルブッキングだったのか。しかも相手は女性だけのようだし、俺らはそもそも無料で宿泊予定だったので分が悪い。

「どうした? 宗吾」

 流が話し掛けてくれる。

「参ったよ。今日に限ってダブルブッキングだなんて。宿無しになるかも……あぁ、格好悪いな」

 気が動転して、不甲斐ないことを言ってしまった。

 すると流がスッと真顔になった。

「宗吾、そう気を落とすなよ。ほらっ、ピンチはチャンスだろ! いつもの調子はどうした?」
「あぁ、そうだよな」

 そもそもピンチとは、追い詰められた苦しい状態や苦境や窮地のことで、チャンスは物事をするのによい機会や好機のことだ。だから『ピンチはチャンス』とは、追い詰められた苦しい状況の時にこそ、新しいスタートをするのに絶好の機会という意味になる。

 俺は今まで仕事もプライベートもこのポリシーで乗り切ってきた。ピンチを好機にするのは自分の心持ち次第だ。ただし独りよがりでは上手くいかない。周囲を頼って知恵や助けを求めるのは、悪いことではないのを知っている。

 これは俺たちと月影寺men'sとの人間関係、信頼関係を更に深めるチャンスとなるのかも。

「よし! 流、ちょっと来てくれ」
「了解!」

 俺たちはフロントで予約状況を確認した。

「あぁ、やっぱりダブルブッキングだな」
「もっ、申し訳ありません」
「他に空いているコテージはないのか」
「今、お調べします!」

 キャンプ場のスタッフも、焦り顔で平謝りだ。

「あ、ありました……でも3人用のコテージが1棟だけです」
「あとは? あと10名の宿泊先はどうする?」
「申し訳ありません……生憎どこも満室です」

 いやいや打開策を考えてくれよ。いや違うな。俺が考えればいいのか。このキャンプ場は仕事で関わったので、ログハウス以外の内容も把握している。

「そうだ、ログハウス前のウッドデッキエリアにグランピングエリアをOPEN予定で整備していたんじゃないか」
「あ、はい」
「特別にあのエリアを解放してくれないか」
「ですが……まだあそこは整備途中なので、豪華なテントもシャワールームもありませんが……」
「知っているさ。だが普通のテントならいくつか在庫があるだろ?」
「はい、それならお貸し出来ます」

 内情を知っているから、どんどん提案できる!

「宗吾、いい感じだな。波に乗って来たな」
「流、テントの組み立てを手伝ってくれ」
「了解。それで3人用のコテージは誰が使うのか」
「……3人といえば」
「レディファーストだな」
「あぁそれがいいと思う」

 皆が待機している場所に戻り事情は説明すると、翠さんが柔和に微笑み拍手をしてくれた。

「宗吾さん、それは
いいですね。まさに『禍を転じて福と為す』ですね。テントで過ごすなんて貴重な経験だ。3人用のコテージは新婚さんに使ってもらうのはどうかな?」

 流石、翠さんだ。自然に俺が思っていたことを提案してくれた。

 ところが、潤は後ずさって遠慮している。

「え? でも……そんな……オレたちが使うなんて、一番よそ者なのに駄目っすよ」
「ん? よそ者だなんて、とんでもないよ。僕たちは縁があって瑞樹くんと巡り逢い、そして瑞樹くんの大切な弟さんに引き合わせてもらえて幸せに思っているんだ。だから遠慮はいらないよ」

 翠さんが滑らかに諭してくれる。

「で……ですが」
「潤くん、何だかこの雰囲気だと……お言葉に甘えた方がいいのかも?」
「そうだよ。潤くん、奥さんを大切にしないとね」

 翠さんの言葉は説法だ。

「あ……そうか……女性は菫さんだけだし……じゃあ……本当にオレたちがコテージに宿泊していいんすか」
「もちろん‼」

 皆の声が明るく揃う。

「流、僕はせっかくだから、テントに泊まってみたいよ」
「兄さんは絶対そういうと思っていました。俺がとっておきのテントをこしらえますよ」
「楽しみだな」

 流と翠さんはテントでOKのようだ。
 
「丈、俺たちもテントでいよな」
「そうだな、一番狭いテントを希望する。いや密室か」
「はぁ? お前キャラ変わった?」

 よしよし、丈さんと洋くんもテントだな。相変わらず熱々だな。

「こもりんと二人でテントか~」
「菅野くん、あんこも一緒ですよ」
「うーん、それはちょっと狭そうだな」
「そんなことないです。抱っこしたり枕にしましょうよ」
「うへぇ~」

 菅野くんと小森くんも楽しそうだ。

「宗吾さん、僕たちもテントにしましょう。芽生くんとテントに泊まってみたかったんです」
「瑞樹ぃ~ ごめんな」(君には特別は部屋を用意していたのだが)
「どうして謝るんですか。楽しいじゃないですか」
「パパ、ボク、テントつくるのおてつだいする!」

 俺たちもテントで大丈夫だ。

 すると、いっくんがトコトコやってきて……

「いっくんねぇ、めーくんといっしょがいいなぁ」
「いっくん! ボクもだよ」
「えへへ、めーくんとねんねしたいなぁ」
「ボクもー!」
 
 潤と菫さんが困ったように顔を見合わせている。

 すると瑞樹が優しく提案する。

「じゅーん、そうしてあげてもいいかな? 芽生くんにとって、いっくんは弟みたいに大切な存在なんだ。僕もしっかり見守るよ。だから、いっくんを今晩だけ僕たちに任せてくれるかな?」
「兄さん、本気でいいのか」
「もちろんだよ。ちゃんと約束したじゃないか」
「あ、ありがとう!」

 潤も素直に甘えられるようになった。

 それは……きっと瑞樹が頼もしくなったからだ。

「よーし! じゃあ早速オレたちの寝床を作るぞ!」


 仲間と……

 目的を一つにすること。

 何かを成し遂げようとすること。

 身体から力が湧き上がってくるような感覚が、今は心地良い。

「瑞樹、俺たちのテントを作ってやるからな」
「宗吾さん、あの……僕……案外得意ですよ」
「そうなのか。じゃあ一緒にやろう!」
「はい! 是非!」



 瑞樹の笑顔が弾ける。

 澄んだ声が明るく意気揚々としている。

 君が溌剌としていると、俺の心も踊り出すのさ!














  
しおりを挟む
感想 85

あなたにおすすめの小説

この冬を超えたら恋でいい

天気
BL
夜の街で、凪は人生の底にいた。 古いアパートに帰る途中、父の残した借金の取り立てに絡まれ、逃げ場を失う。 そこに現れたのは、大手企業の社長・鷹宮だった。 偶然の救い。年齢も立場も違う二人は、その夜を境に交わることになる。 事情を多く語らない凪は、不幸が当たり前のように身にまとい、誰かに頼ることを知らない。 一方の鷹宮は、完璧な成功者として生きてきた男だった。 危険から守るため、鷹宮は凪を一時的に自宅へ迎え入れる。 冬の同居生活の中で、凪は少しずつ日常を取り戻していく。 大学へ通い、温かい食事をし、夜を一人で怯えずに眠る。 しかし、守られることに慣れない凪は、距離が近づくほどに自分から一歩引いてしまう。 それは、失うことを恐れる、健気で不器用な選択だった。 一方、鷹宮は気づいてしまう。 凪が笑うだけで、胸が満たされることに。 そんな自分の感情から凪を守るつもりで引いた距離が、 凪を遠ざけてしまう。 近づきたい。 けれど、踏み込めば壊してしまうかもしれない。 互いを思うほど、すれ違いは深くなる。 2人はこの冬を越えることができるのかーー

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

【完結】番になれなくても

加賀ユカリ
BL
アルファに溺愛されるベータの話。 新木貴斗と天橋和樹は中学時代からの友人である。高校生となりアルファである貴斗とベータである和樹は、それぞれ別のクラスになったが、交流は続いていた。 和樹はこれまで貴斗から何度も告白されてきたが、その度に「自分はふさわしくない」と断ってきた。それでも貴斗からのアプローチは止まらなかった。 和樹が自分の気持ちに向き合おうとした時、二人の前に貴斗の運命の番が現れた── 新木貴斗(あらき たかと):アルファ。高校2年 天橋和樹(あまはし かずき):ベータ。高校2年 ・オメガバースの独自設定があります ・ビッチング(ベータ→オメガ)はありません ・最終話まで執筆済みです(全12話) ・19時更新 ※なろう、カクヨムにも掲載しています。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

君の想い

すずかけあおい
BL
インターホンを押すと、幼馴染が複雑そうな表情で出てくる。 俺の「泊めて?」の言葉はもうわかっているんだろう。 今夜、俺が恋人と同棲中の部屋には、恋人の彼女が来ている。 〔攻め〕芳貴(よしき)24歳、燈路の幼馴染。 〔受け〕燈路(ひろ)24歳、苗字は小嶋(こじま)

処理中です...