幸せな存在 ~歩み寄る恋をしよう~

志生帆 海

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小学生編

ハートフルクリスマスⅡ・7

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「菫さん、あのさ、今の聞き間違いじゃなかったよな?」
「うん……いっくん朝起きたら妖精になってるって言ってたわね」
「ってことは、寝ているうちにお着替えをさせておかないとヤバイんじゃないか!」
「そうみたい」

 スヤスヤとあどけない寝息を立てるいっくんを見て、菫さんと苦笑してしまった。

 いやぁ~ 世の中のお父さんって、皆こんなに大変なのか。

 オレたちはそっと昼間受け取った、白猫タロウの宅配便を開けて見た。

「うぉ! これはすげー可愛いな」
「うん、やっぱり流石大河さんだわ。柔らかくて着心地の良い上質な生地で作ってくれたのね」
「これを着たら、いっくん可愛いだろうな。菫さん早く着せてくれよ」
「えぇ? 私だとすぐに起きちゃうわ。潤くんがやって」
「えー 俺は雑だからダメだよ。いっくんが起きてしまったら、がっかりするだろう」


 二人で頭を抱えて悩んだ。

「あ、そうだ! 潤くん、宗吾さんがくれたイベントグッズに、確かサンタの衣装が入っていたわよね」
「あぁハロウィンの時にもらった一式に紛れていたよな」
「潤くんがサンタになってくれない?」
「ええぇ」
「サンタさんの格好なら、目覚めちゃっても誤魔化しが利くし、ねっ」

 菫さんに背中を押されて、オレはコンビニやチキン屋の街頭に立つようなサンタに変身した。

「なんだか、安っぽくないか」
「いっくんは寝惚けているし暗いし気付かないわよ。そうだ! 潤くんも来年は大河さんに作ってもらう?」
「えぇ! そんなことする大人はいないぞ……いやいるか」

 モクモクの綿の白髭をつけて、いよいよ準備完了だ。

 泥棒のようにいっくんの寝床に忍び込んで、そっといっくんのパジャマを脱がせた。

 菫さんは隣で、寝たふりをしている。

 よし! この調子で頑張るぞ!

 そーっとそっと黄緑色のズボンを穿かせて、それから上着を着せた。

 あともう一息だ。

 ところが帽子を被せようとすると、シャリンと鈴の音がした。

 そこで、なんといっくんがパチッと目を覚ましてしまった!

 バッチリ目が合う。

 や、ヤバイ‼

 オレだってバレる! 

 ところが、いっくんの弾んだ声が聞こえた。

「あー あー サンタしゃんだ!」

 菫さんが必死に目配せしてくる。

 サンタニ、ナリキッテ!

 そんな指示が飛んでくる。

「ほーほーほーっ、えっと……坊やのお名前は?」
「いっくんだよ」
「よしよし、いい子にはプレゼントだよ」
 
 小さな頭に三角帽を被せてあげると、いっくんは飛び跳ねて喜んだ。

「わぁい、わぁい! いっくんようせいしゃんになれたぁ」
「あぁ……えっとエルフというんだ」
「えるふしゃん?」
「そうだよ、朝が来たらしっかり手伝っておくれ」

 オレはわざと低い声で、必死に話を繋げた。

「はぁい。えっといっくんね……おねむだから……おねんねしてからでもいいでしゅか」
「あぁ、早くお眠り」
「ありがと。パパとのんでいってね」
「え?」
「ココアをいれてもらってねぇ……にんじんさんはとなかいさんだよぅ……いっくん……えるふしゃんになれたよぅ」

 いっくんがコテッと再び眠りに落ちていく。

 朝が来たら、大喜びだろうな。

「サンタしゃん……パパみたい……しゅき……」

 くぅ、鼻の奥がツンとする。

 可愛すぎる。

 こんな可愛い子の父親になれたなんて。

 いっくんこそ、最高の贈り物だよ。


****

「芽生、早く寝ないと、サンタさん来ないぞ」
「そうだね! パパ、これ、サンタさんにわたしておいて」
「ん?」
「おやすみなさい~」

 芽生はクマのぬいぐるみを抱えて、俺たちのベッドにもぐり込んだ。

「明日には『サンタぞく』になっているんだ」
「ええぇ?」

 サンタ族???

 芽生が眠った後、手紙を見て驚いた。

「なんと! 参ったな」
「何て書いてあったんですか」

 洗い物を済ました瑞樹がやってきたので、早速相談だ。

「サンタにへんしんできていますようにって」
「あぁ……最近変身する戦隊ものに夢中でしたものね」
「それはいいんだが、ここだよ。ここ」
「あ? 僕たちもですか」
「そうなんだ。『パパとお兄ちゃんもいっしょにへんしんしていますように。かぞくだからいっしょがいいんです』って書いてあるの、なんか泣けるな」
 
  瑞樹もうるっと瞳を潤ませていた。

「宗吾さん、僕たちも一肌脱いで、今日はサンタの衣装で眠りましょうか」
「あぁそうだな。じゃあ先に俺たちが着替えて、それから芽生もお着替えだ」

 せっかくラッピングしてもらったが、開封した。

「すごい……これは上等なサンタさんになれそうですね」
「君はこれな」
「あれ? 宗吾さんと違うスタイルなんですね。これは……マント?」
「ミニスカじゃないから安心してくれよ」
「くすっ、本気じゃなかったんですね」
「大河さんに止められた」

 瑞樹が楽しそうに目を細める。

「そうなんですね、僕はそれがクリスマスプレゼントになるのならと覚悟していたのに」
「えぇ」
「なんて! 冗談ですよ」
「コイツ!」

 瑞樹が去年よりも更に明るくなったのが、嬉しくて堪らない。

「宗吾さんは貫禄があるサンタさんですねぇ」
「ははっ、力持ちそうに見えないか」
「僕は芽生くんとお揃いのケープ姿でした」
「可愛いよ」
「芽生くんも着せましょう」
「おぅ」

 起きないかどうか心配したが、小学生の睡眠は深かった。

 芽生の赤いマント姿が想像以上に可愛くて、二人で感嘆の溜め息を漏らしてしまったよ。

「いつまでもあどけなく……とはいかないでしょうから、貴重な夜になりますね」
「あぁ、さぁサンタファミリーの出来上がりだ。『サンタ族』とも言うのか」
「ふふっ、品行方正に汚さないようにしないとですね」
「意味深だな」
「も、もう!」

 軽口を叩きながら眠るのもいい。

 身体を繋げる日もあれば、こんな風にじゃれ合って笑い合って眠る夜もあっていいだろう。

 それが家族だ。

 俺と瑞樹の頭の中は、明日芽生が起きて驚く顔、喜ぶ顔、三人でサンタの姿で出掛けることで満ちていた。

「メリークリスマス、瑞樹」
「メリークリスマス、宗吾さん」
「今日は賑やかに、明日はムーディーに行くぞ」
「そうですね。いろんな日があっていいと思います。今は毎日を安心して過ごせます」

 手を繋いで眠ろう。
 楽しい夢を見よう。

 恋人たちの聖夜もいいが、家族のクリスマスもいいな。





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