19 / 20
18 カッコいいよ
しおりを挟む
(スカイ視点)
「…………。」
無言で涙を拭きながら、俺はボンヤリと考える。
これから先、どうやったらムギとずっと一緒にいられるんだろう……?
「良いもの見せてやるから、ちょっと行くぞ。」
「……?」
グスグスと鼻を啜っていると、ムギは近くにある沼へと向かい、沢山の<イボイボ・ケロッグ>達を見せてきた。
ソイツらの体にはたくさんのイボがあり、そこからは絶えず臭い膿がドロドロと流れているせいでそこら中に、腐敗臭の様な匂いが漂っている。
「くっ……臭い!!」
俺が堪らずそう言うと、鼻を摘んでムギを睨んだ。
しかし、ムギは気にせずキョロキョロと周囲を見回し、何かを見つけたのか「あっ!」と声を出してある方向を指差す。
「ほら、あいつ見てみろよ。あの一匹だけ様子が違うヤツ。」
「はっ?……なに?」
ムギが指差す方向にいたのは、全然イボがないツルツルのイボイボ・ケロッグで、随分と珍しい外見をしているが、ムギが何を言いたいかは分からず首を傾げた。
「?あのツルツルのカエルモンスターがどうした?」
「あいつさ、生まれつきあんなツルツルした外見で生まれてきたらしくて、オタマジャクシの時からあんなんだったんだよ。」
「……ふん、どうでもいい話だな。生まれつき綺麗に生まれたから何だ?そんな戯言を聞かせるためにこんな臭い所に連れてきおって!」
『お前もあんなツルツルで生まれれば良かったのにな。可哀想に。』
ムギの言いたい事はこれかと思い、胸がズキンッ!と傷ついた。
ムギは優しいから、こうやって言葉ではなく間接的に俺の事が嫌だと言いたかったに違いない。
それに気づいて視線を下へ下へ下げていったが、ムギは俺の背中をぽんぽんと叩いた。
「アイツ、めちゃくちゃモテなくて、誰も仲間に入れてくれなかったんだ。
イボイボ・ケロッグは、あのイボが沢山あって大きい程カッコよくて、油が沢山出る程イケメンな世界だから。
俺が見ている限り、アイツは小さい頃から一人ぼっちでいたよ。」
「────!」
俺は下に下げていた視線をあげ、ツルツルケロッグを凝視する。
周りと違う外見のせいで、誰も近寄ってはくれない。
俺と同じ……?
妙な仲間一気を感じたが、直ぐにそのツルツルなヤツに寄り添うメスケロッグを見て、顔を大きく歪めた。
「……嘘をつくな。だって、アイツの隣には番のメスもいるし、今は他の仲間たちも普通に近くにいるじゃないか。」
俺は、メスの番に寄り添い、他の仲間たちに囲まれているツルツルケロッグを睨みながら、指を差した。
するとムギは懐から一個のトマトを取り出すと、突然大きく振りかぶってソレを沼地へと投げる。
すると────……。
ピョピョ~ン!!!
あのツルツルケロッグが我先に飛び出し、とんでもない大ジャンプをしたため素直に驚いた。
「…………っ!!」
その凄いジャンプをしたツルツルケロッグは、見事チャッチしたトマトを直ぐに自分の番へプレゼントする。
そして仲間たちからは沢山の羨望の眼差しを浴び、更に番はより一層そのツルツルケロッグの事を好きになった様で、ペロペロとその顔を舐めていた。
周りと違っても、あんなに好きになってもらえるの……?
俺が番に舐めてもらって嬉しそうにしているツルツルケロッグを見つめていると、ムギは俺の肩をポンポンと叩いた。
「俺は、周りからどんなに無視されようが馬鹿にされようが、自分のできる事を頑張って、ああやって認められるヤツってカッコいいと思う。
アイツは毎日頑張ってジャンプの練習をして、あんなに凄いジャンプができる様になったんだ。
それを周りは認めてくれたんだよ。
元々あるカッコいいを吹っ飛ばす、新しいカッコいいを創り出したんだ。
それでモテモテ人生まっしぐら!くぅ~……!カッコいいじゃないか!」
カッコいい?
ムギはカッコいい人が好き……。
俺はドキドキしながら、ポツリと呟いた。
「……自分ができる事?」
「うん。それは周りが羨む様なモノじゃなくても良い。
頑張る姿がカッコいいんだから。」
「…………。」
俺は自分の手のひらを見下ろし、開けたり閉めたりを繰り返す。
俺がかっこよくなったら……ムギはあの番のメスみたいに俺の側にいてくれる?
そんな考えが浮かぶと、先程見たツルツルケロッグと番の姿が俺とムギに変わり、カァ!と体が沸騰する様に熱くなっていった。
「……ムギは頑張る俺をカッコいいと思うか?こんな醜い姿の俺が頑張って……誰も見てくれなくても……。」
例え世界中の人に気持ち悪い、カッコ悪いと思われても……ムギがカッコいいと思ってくれるなら……俺は……。
目元が熱くなっていくのを感じながらそう尋ねると────ムギは大きく頷く。
「コロは頑張ってるだろう?
一人で知らない村に来て、必死に弱みを見せないコロはカッコいいと思う!
だから、色々頑張ってみろって!
ジャンプできるだけであんなモテモテになるヤツだっているんだしさ。」
ムギは俺をカッコいいと思っている!
俺の事を……あのツルツルケロッグの頑張りと同じくらい認めてくれてるんだ!
その事が嬉しくて嬉しくてボロボロと泣いてしまうと、ムギは俺を背負って家に送り届けてくれた。
それから日が暮れて、夜が来て……俺は異常なくらい熱くなったまま戻らなくなってしまった自分の身体を抱きしめ、ムギの事を考える。
ムギは初めて俺を俺として接してくれた人。
こんな誰もが気持ち悪いという醜い俺と話してくれて、触ってくれて……認めてくれた。
そして俺をカッコいいとまで言ってくれたのだ。
「ムギ……ムギ……ムギ……。」
名前をひたすら口にすると、熱い身体はグツグツとナグマの様にどんどんと熱くなっていった。
まるで身体の中から何かが飛び出そうとしている様な……?
「…………。」
無言で涙を拭きながら、俺はボンヤリと考える。
これから先、どうやったらムギとずっと一緒にいられるんだろう……?
「良いもの見せてやるから、ちょっと行くぞ。」
「……?」
グスグスと鼻を啜っていると、ムギは近くにある沼へと向かい、沢山の<イボイボ・ケロッグ>達を見せてきた。
ソイツらの体にはたくさんのイボがあり、そこからは絶えず臭い膿がドロドロと流れているせいでそこら中に、腐敗臭の様な匂いが漂っている。
「くっ……臭い!!」
俺が堪らずそう言うと、鼻を摘んでムギを睨んだ。
しかし、ムギは気にせずキョロキョロと周囲を見回し、何かを見つけたのか「あっ!」と声を出してある方向を指差す。
「ほら、あいつ見てみろよ。あの一匹だけ様子が違うヤツ。」
「はっ?……なに?」
ムギが指差す方向にいたのは、全然イボがないツルツルのイボイボ・ケロッグで、随分と珍しい外見をしているが、ムギが何を言いたいかは分からず首を傾げた。
「?あのツルツルのカエルモンスターがどうした?」
「あいつさ、生まれつきあんなツルツルした外見で生まれてきたらしくて、オタマジャクシの時からあんなんだったんだよ。」
「……ふん、どうでもいい話だな。生まれつき綺麗に生まれたから何だ?そんな戯言を聞かせるためにこんな臭い所に連れてきおって!」
『お前もあんなツルツルで生まれれば良かったのにな。可哀想に。』
ムギの言いたい事はこれかと思い、胸がズキンッ!と傷ついた。
ムギは優しいから、こうやって言葉ではなく間接的に俺の事が嫌だと言いたかったに違いない。
それに気づいて視線を下へ下へ下げていったが、ムギは俺の背中をぽんぽんと叩いた。
「アイツ、めちゃくちゃモテなくて、誰も仲間に入れてくれなかったんだ。
イボイボ・ケロッグは、あのイボが沢山あって大きい程カッコよくて、油が沢山出る程イケメンな世界だから。
俺が見ている限り、アイツは小さい頃から一人ぼっちでいたよ。」
「────!」
俺は下に下げていた視線をあげ、ツルツルケロッグを凝視する。
周りと違う外見のせいで、誰も近寄ってはくれない。
俺と同じ……?
妙な仲間一気を感じたが、直ぐにそのツルツルなヤツに寄り添うメスケロッグを見て、顔を大きく歪めた。
「……嘘をつくな。だって、アイツの隣には番のメスもいるし、今は他の仲間たちも普通に近くにいるじゃないか。」
俺は、メスの番に寄り添い、他の仲間たちに囲まれているツルツルケロッグを睨みながら、指を差した。
するとムギは懐から一個のトマトを取り出すと、突然大きく振りかぶってソレを沼地へと投げる。
すると────……。
ピョピョ~ン!!!
あのツルツルケロッグが我先に飛び出し、とんでもない大ジャンプをしたため素直に驚いた。
「…………っ!!」
その凄いジャンプをしたツルツルケロッグは、見事チャッチしたトマトを直ぐに自分の番へプレゼントする。
そして仲間たちからは沢山の羨望の眼差しを浴び、更に番はより一層そのツルツルケロッグの事を好きになった様で、ペロペロとその顔を舐めていた。
周りと違っても、あんなに好きになってもらえるの……?
俺が番に舐めてもらって嬉しそうにしているツルツルケロッグを見つめていると、ムギは俺の肩をポンポンと叩いた。
「俺は、周りからどんなに無視されようが馬鹿にされようが、自分のできる事を頑張って、ああやって認められるヤツってカッコいいと思う。
アイツは毎日頑張ってジャンプの練習をして、あんなに凄いジャンプができる様になったんだ。
それを周りは認めてくれたんだよ。
元々あるカッコいいを吹っ飛ばす、新しいカッコいいを創り出したんだ。
それでモテモテ人生まっしぐら!くぅ~……!カッコいいじゃないか!」
カッコいい?
ムギはカッコいい人が好き……。
俺はドキドキしながら、ポツリと呟いた。
「……自分ができる事?」
「うん。それは周りが羨む様なモノじゃなくても良い。
頑張る姿がカッコいいんだから。」
「…………。」
俺は自分の手のひらを見下ろし、開けたり閉めたりを繰り返す。
俺がかっこよくなったら……ムギはあの番のメスみたいに俺の側にいてくれる?
そんな考えが浮かぶと、先程見たツルツルケロッグと番の姿が俺とムギに変わり、カァ!と体が沸騰する様に熱くなっていった。
「……ムギは頑張る俺をカッコいいと思うか?こんな醜い姿の俺が頑張って……誰も見てくれなくても……。」
例え世界中の人に気持ち悪い、カッコ悪いと思われても……ムギがカッコいいと思ってくれるなら……俺は……。
目元が熱くなっていくのを感じながらそう尋ねると────ムギは大きく頷く。
「コロは頑張ってるだろう?
一人で知らない村に来て、必死に弱みを見せないコロはカッコいいと思う!
だから、色々頑張ってみろって!
ジャンプできるだけであんなモテモテになるヤツだっているんだしさ。」
ムギは俺をカッコいいと思っている!
俺の事を……あのツルツルケロッグの頑張りと同じくらい認めてくれてるんだ!
その事が嬉しくて嬉しくてボロボロと泣いてしまうと、ムギは俺を背負って家に送り届けてくれた。
それから日が暮れて、夜が来て……俺は異常なくらい熱くなったまま戻らなくなってしまった自分の身体を抱きしめ、ムギの事を考える。
ムギは初めて俺を俺として接してくれた人。
こんな誰もが気持ち悪いという醜い俺と話してくれて、触ってくれて……認めてくれた。
そして俺をカッコいいとまで言ってくれたのだ。
「ムギ……ムギ……ムギ……。」
名前をひたすら口にすると、熱い身体はグツグツとナグマの様にどんどんと熱くなっていった。
まるで身体の中から何かが飛び出そうとしている様な……?
167
あなたにおすすめの小説
今日も武器屋は閑古鳥
桜羽根ねね
BL
凡庸な町人、アルジュは武器屋の店主である。
代わり映えのない毎日を送っていた、そんなある日、艶やかな紅い髪に金色の瞳を持つ貴族が現れて──。
謎の美形貴族×平凡町人がメインで、脇カプも多数あります。
【完結】勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話
バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん<山野 石郎>改め【イシ】
世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中……俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない<覗く>という能力だけ。
これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。
無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。
不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!
【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《根暗の根本君》である地味男である<根本 源(ねもと げん)>には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染<空野 翔(そらの かける)>がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
前世が悪女の男は誰にも会いたくない
イケのタコ
BL
※注意 BLであり前世が女性です
ーーーやってしまった。
『もういい。お前の顔は見たくない』
旦那様から罵声は一度も吐かれる事はなく、静かに拒絶された。
前世は椿という名の悪女だったが普通の男子高校生として生活を送る赤橋 新(あかはし あらた)は、二度とそんのような事ないように、心を改めて清く生きようとしていた
しかし、前世からの因縁か、運命か。前世の時に結婚していた男、雪久(ゆきひさ)とどうしても会ってしまう
その運命を受け入れれば、待っているの惨めな人生だと確信した赤橋は雪久からどうにか逃げる事に決める
頑張って運命を回避しようとする話です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる