【完結】勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん

文字の大きさ
2 / 35

2 始まり始まり〜

しおりを挟む
そもそものこのパーティーが結成された発端は、約半年前の事。

俺はその時までは普通に地球という星に生きていた普通のサラリーマンというやつで、その日はめでたく32歳を迎えた日であった。
その日は平日であったため、祝うのは自分のみ。
そのまま家に帰るのは何となく嫌で、コンビニでカップ酒を買って一人寂しく近くの公園で飲んでいた。
両親はとっくの昔に交通事故で死に、こんな平凡な容姿に平凡収入の自分と付き合ってくれる様な女性はおらず、年齢=独り身となってしまった俺。
それでも精一杯生きてきたが、フッと突然寂しさを感じてしまった。

自分が生まれて32年。
俺は誰かにとって必要な存在になれたのかな……?

そう空に浮かぶまんまるお月さまに問いかけてみたが勿論答えてなどくれず、なんだか凄く悲しくなってきた。

両親がいなくなってからは、その悲しみを乗り越えたと思ってもフッとした瞬間にこうした暗い想いに囚われる。
唯一無二、無条件で自分を必要としてくれた両親がいない事。
それは自分になんとも言えない寂しさを与えた。

「寂しいな……。」

ポツリッ……と呟いた、その時────突然座っていたベンチの下が光り出したため、慌てて立ち上がり光る地面を見下ろす。
すると、そこには漫画に出てくる様な沢山の光る文字の集合体……いわゆる魔法陣と呼ばれる様な模様が浮き出ていた。

「えっ!!えええ────!!??な……なんじゃこりゃ────!!」

そんな叫び声を上げた直後に俺の姿は消え、その場に残されていたのは飲みかけのビール缶だけであった。


ゴゴゴゴゴ────ッ!!!

まるで台風の強風が吹き荒れる中に立っている様な……?
とにかく強い風と大きな太鼓の様な音を聞きながらなんとかそれに耐えていると、突然フッとその風が止み、下へと引っ張られる重力を感じた。

「えっ?えっ?ええええ────~……??」

驚いて目を開けると、自分は結構な高さに浮いていて、その直後にそこから落下。
物凄い早さで身体は地面に向かって引っ張られていく。
そして上手く受け身も取れず、無様にボテッ……と落ちてしまった俺を待ち受けていたのは、沢山の人!人!人!の視線。

「い……いてぇぇ~……!え、えぇぇ~……??何だ、何だ??あの~……ド、ドッキリか何かでしょうか……?」

周囲に立っている沢山の人達の視線に晒されドキドキしながら、俺は冷静にその人達と部屋の様子を観察した。

周りにいる人達の格好と部屋の内装は────何と言うか……中世ヨーロッパ風で、少なくとも日本の面影は微塵もない。
中央の上座的な場所に王様の様な格好をしているひげの生えた男性が、金色の大きな椅子に座っていて、その隣には王妃様?らしきキラキラのドレスを着た女性もいた。

まるで、映画とかで見たお城の中みたいだ……。

石造りの広い広間?みたいなその場所には、他にも鎧を着た騎士の様な人達や、それより軽装の黒いローブ?を着た人達などがいて、パッと見れば何処かのコスプレ会場にも見えるかもしれない。

そしてその中でも圧倒的存在感で佇んでいたのが【勇者】であるヒカリ君であった。

「…………。」

状況が分からずポカ~ンとする俺に、突然ジャラジャラ黄金の装飾品を沢山つけた白い聖職者の法衣?みたいなものを着たお兄さんが近づいてくる。
薄いグレーの髪色に、清潔感漂う真ん中分けのサラサラヘアー……この人も結構なイケメン青年だ。
そのイケメンお兄さんは俺の前で止まり、一礼。
その後はペラペラと此度の事について説明を始める。

曰く、ここは<ホライティア王国>という国で、激化するモンスター被害を食い止めるべく何百年に一度 勇者なる存在が国の何処かに生まれる……と、何だかゲームの設定の様なことを言い出した。

「はっ??ゆ、勇者……とは??」

俺の思い浮かべる『勇者』で合っているのか分からず、おずおず尋ねると、長い長~い話を要約すると、いわゆる圧倒的なパワーを持つスーパーチート様!……なのだそうだ。

うん、合ってた。
俺の子供時代に流行ったゲームそのものだ……。

頭の中でピコピコと懐かしいドット絵の勇者が魔王に挑んでいる姿を想像しながら、うんうんと頷いた。

「な、なるほど……そこまでは分かりました。でも、なぜ私がここに~?」

ササッ!と姿勢を正し、表情を引き締める。
その姿は、お得意様の会社に行く時と同じ!
悲しきサラリーマンの習性~!

少々の憂いもあったがニコニコ!と笑うと、向こうもお仕事モード全開の笑みを満面に浮かべてそれに答えてくれた。

「勇者様にはこれより神の導かれるまま各地に点在している、ユニークモンスターという周悪の根源を倒して頂きます。
つきまして~異世界人様にはそのお手伝いをして頂きたく~……」

「────へっ??……いやいやいや!何故そこで私の話が出てくるのでしょう??
私は極一般的な一市民でして……そもそも戦うなどはできませんし……?」

正直そんな壮大な戦いを手伝えと言われても、絶対何もお役に立てる事がないのは明白だ。
自衛隊とか、何かの軍隊に所属している人とかが召喚されるなら分かる。
しかし一般サラリーマンである自分が、突然召喚されて勇者様のお手伝いをしろと言われても、会社に持っていくノートパソコンくらいしか持てる筋力がない。
困った様にチラッと勇者様であるヒカリ君に視線を送ると、彼は既に興味なし!と言わんばかり視線一つ合わせてくれなかった。

「…………。」

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された悪役令息は隣国の王子に持ち帰りされる

kouta
BL
婚約破棄された直後に前世の記憶を思い出したノア。 かつて遊んだことがある乙女ゲームの世界に転生したと察した彼は「あ、そういえば俺この後逆上して主人公に斬りかかった挙句にボコされて処刑されるんだったわ」と自分の運命を思い出す。 そしてメンタルがアラフォーとなった彼には最早婚約者は顔が良いだけの二股クズにしか見えず、あっさりと婚約破棄を快諾する。 「まぁ言うてこの年で婚約破棄されたとなると独身確定か……いっそのこと出家して、転生者らしくギルドなんか登録しちゃって俺TUEEE!でもやってみっか!」とポジティブに自分の身の振り方を考えていたノアだったが、それまでまるで接点のなかったキラキライケメンがグイグイ攻めてきて……「あれ? もしかして俺口説かれてます?」 おまけに婚約破棄したはずの二股男もなんかやたらと絡んでくるんですが……俺の冒険者ライフはいつ始まるんですか??(※始まりません)

家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている

香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。 異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。 途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。 「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!

聖女の兄で、すみません!

たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。 三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。 そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。 BL。ラブコメ異世界ファンタジー。

第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」 学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!

灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」 そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。 リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。 だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。 みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。 追いかけてくるまで説明ハイリマァス ※完結致しました!お読みいただきありがとうございました! シレッとBL大賞に応募していました!良ければ投票よろしくおねがいします!

俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします

椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう! こうして俺は逃亡することに決めた。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

ちっちゃな婚約者に婚約破棄されたので気が触れた振りをして近衛騎士に告白してみた

BL
第3王子の俺(5歳)を振ったのは同じく5歳の隣国のお姫様。 「だって、お義兄様の方がずっと素敵なんですもの!」 俺は彼女を応援しつつ、ここぞとばかりに片思いの相手、近衛騎士のナハトに告白するのだった……。

処理中です...