姑が勝手に連れてきた第二夫人が身籠ったようですが、夫は恐らく……

泉花ゆき

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来た道を戻っていく馬車の中で、凌家夫人は深く背もたれへと身を預けると、ふと息を吐きました。

(まあ、おおむねは上々だろうさ……)

あの施設へ出向いたことは、夫人にとって正解でした。
屋敷を発った時の理由の分からないようなモヤつきが、少し収まったような気がしたからです。

大したことではない、と、自分に言い聞かせるように、夫人は目をつむります。
彼女にとって今の状況は、何も憂うことはないはずでした。

大事な息子の嫁……憎々しく思っていた最初の嫁は、万事追い出すことが出来たことですし。
そして、その後釜へと連れてきた女性には、凌家待望の子供が宿っています。

先ほど確認してきた通り、事業も順調に利益を上げ始めています。
書類へほどこした細工も何の漏れがないと思われるものでしたし、既に使い切ってしまった持参金ですが……
こちらも、元手がそうとは知れないように、その旨を法にのっとって記してあります。

誤算といえば、事業の取りまとめを託した男性が、思ったよりも頼りがないかもしれないことでしたが。
それでも、彼を雇った一番の理由は、口が堅いという評価を聞いていたからです。

夫人にとって今の状況は、何も憂うことはないはずでした。
すべてが好調に事を運んでいる……そのはずです。

夫人は、そっと目を開いて呟きます。

「……一体、何だっていうんだい……」

……それでも、やはり。
凌家の屋敷に近付くにつれて、彼女の胸の中には墨を落としたような、小さなもやが出来るのでした。

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