姑が勝手に連れてきた第二夫人が身籠ったようですが、夫は恐らく……

泉花ゆき

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「止まれ止まれ!」

「何の用だ!」

通達もなしに凌家の馬車を無視して駆けてくる馬が正式なものであるとも思えず、兵たちは槍をクロスさせて馬の眼前に掲げます。
鼻先に獲物を差し出されて、首を背けながら嫌がる馬は前脚を浮かせ、乗り手の人物も慌てさせました。

「うわっ!……お、お待ちください。私は決して怪しいものでは……!」

握った手綱を離して馬の背から飛び降りた人物は、やはり商会から引き抜いた、あの男性です。
彼は身分を証明するために上着へ手を入れようとしますが、それより先に首元を槍の柄に抑え込まれて地面に伏せる形で捕らえられてしまいました。
暴れかけている馬は厩舎係が手綱を取って落ち着かせていますが、騒ぎはすぐには収まりません。

そうこうしている内に凌家の馬車が到着してしまい、騒々しい中で当主がそこから降り立ちました。

「何だこれは、一体何の騒ぎだと言うのだ」

旅支度の外套姿で地面を踏んだ凌家当主がじろりと騒ぎの方を見据えます。無理矢理帰る時期を作ったことと、長時間馬車に揺られたことで疲れも隠せないようでした。
さっと近寄った凌夫人が、とりなすように言葉を送りました。

「お帰りなさいませ、あなた。……何でもないんですよ、ちょっと変なゴロツキが居たみたいで……ほら、もう捕らえられたようです」

男性が取り抑えられたのは門からやや離れたところで、何やら喚いているのは聞こえのですが内容までは伝わらず……その内に、凌夫人が指図した通りに縛られて裏手へ連れて行かれたようでした。
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