姑が勝手に連れてきた第二夫人が身籠ったようですが、夫は恐らく……

泉花ゆき

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その呟きは法廷によく響きました。
涼珩リャンハンが、弾かれたように顔を上げます。

「な……何を言ってるんだ、母上」

「お前、本当に……本当に、一緒に眠っただけなのかい?それ以外は?何もしていないのかい?」

「だ、だからそうだと言ってるだろう。それ以外に何があるんだ!」

涼珩リャンハンが叫びました。
そして彼もまた、遅まきながら気づいてしまったのです。
自分の信じていた世界が、根本から間違っていた可能性に。
愛する連花リェンホアが、自分以外の誰かと、自分では知らない何かを行い子を宿していた可能性に。

「俺は騙されていたんだ。母上も父上も、何も教えてくれなかったじゃないか!」

「痴れ者が!お前が至らんからこんなことになったんだろう!」

「あんたが家にいないからこんなことになったんじゃないか!」

裁判所が静まり返る中、凌家の三人の怒鳴り声だけが響き渡ります。
この名家が、内部で完全に情報共有すらも出来ていなかったこと。教育がおろそかであったこと、そして家族など形だけのものだったことが広間の人々に知れ渡ります。

責任転嫁だけが飛び交い、三人の言葉は互いの裏切りを罵り続けていました。

「静粛に!」

裁判員の声が石壁をびりびりと震わせました。

「そちらのやり取りは幾らでも屋敷の内で行ってください。ここは公の場です。主文とは異なる話題を続けるなら退廷を命じます」

三人は同時に顔を凍らせ、口をつぐみました。
しかし、その表情には隠しきれない絶望と混乱が張り付いています。
誰が悪かったのかを互いに押し付け合っている姿こそ、彼らの敗北を決定づけていました。

場内はようやく鎮まりました。
けれども凌家を見る人々の目は、もはや犯罪者を見る目ですらなく……哀れな道化を見る目に変わっていました。

裁定人が判決を述べます。

それは、蘭珠ランジュに非はなかったという完全な証明でした。
不当な扱いを受け、事実無根の理由で離縁されたことが公に認められたのです。

これについて、彼女は金銭を要求したわけではありませんでした。
ただ名誉の回復のみをもって勝利としました。
金銭よりも重い事実を大勢の前で暴き出されてしまったことは想定外でしたが……

蘭珠ランジュは静かに一礼しました。
ようやく憂いを無くすことが出来たという思いです。
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