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第1章 夜会
(7)一抹の寂しさはありますが、わたしにとってそれは大きな喜びなのです
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「この度、パトリツィアは我が娘となりパトリツィア・ビシュケンスとなった」
国王陛下が会場を見渡す。
貴族たちの中に驚いている顔もちらほらとあるが、その多くは第一王子派のようだった。
「そして、ディーデリヒ殿とパトリツィアは婚約が結ばれた。二人の結婚はルセアノ皇国とティリシス王国の架け橋の礎となるだろう」
大きく拍手が響き、ディーデリヒ様とともに礼を取る。長く続いた拍手が鳴りやんでようやく頭を上げた。
「それでは乾杯にしよう」
段上の袖に控えていた侍従たちがまず国王王妃両陛下へフルートグラスを渡す。続いてディーデリヒ様とわたし、それから王子殿下方と側妃様へとグラスを渡された。
フルートグラスに注がれているのはルセアノ皇国で作られたロゼのスパークリングワインだ。
ディーデリヒ様にいただいたものを昨晩の、ラインマイヤー家での最後の家族での団欒の際にいただいた。
華やかな香りに、飲みやすくも甘さは控えめで後味のすっきりしたスパークリングワインを両親も気に入っている。
二人は大階段から少し離れた場所で寄り添いこちらを見上げていた。わたしを見守る優しい視線には寂しさも滲んでいる。
今晩からディーデリヒ様とともにルセアノへ旅立つまで、わたしは王宮です過ごすのだ。
「では、ルセアノ・ティリシス両国の発展と二人の輝かしい未来を願って、乾杯」
国王陛下の言葉で会場の全てが左手を胸にあて、右手でグラスを掲げた。少しして国王王妃両陛下がスパークリングワインを飲み干す。それにならって、わたしたちや貴族たちも飲み干した。
会場の貴族たちがグラスの中身を見計らって国王陛下からファーストダンスが指名される。
もちろん今回の夜会ではディーデリヒ様が指名された。ディーデリヒ様はわたしに向かって膝をつきわたしの手を取る。
「踊っていただけますか?」
「はい、よろこんで」
ディーデリヒ様が手の甲に口づけると宮廷楽団がゆったりとしたワルツを奏で始めた。
ディーデリヒ様のエスコートでゆっくり階段を下りると、自然と大階段の下からは人が捌けスペースが円形に広がった。
ダンスホールに下りればディーデリヒ様の手が背中に回る。
「ちょっと緊張してるね?」
北部セトレア共和国への留学中、学園の親善舞踏会などでディーデリヒ様とは何度か踊っていた。
ディーデリヒ様がティリシスへいらっしゃってからの二日間でも何度か合わせているし、いままでダンスに緊張したことはなかったけれど。
「さすがに、ここまで注目されるなかでファーストダンスを踊るのは初めてですもの」
そう告げればディーデリヒ様はその柔らかな蓮の薄赤の瞳を細めて笑った。
「あなたが緊張しているのは、僕を意識してくれていることの証のようで嬉しいよ」
耳元で囁かれて首筋が熱くなる。次のステップが頭の中でこんがらがって、ディーデリヒ様の足を踏みそうになった。
けれどディーデリヒ様のリードでなんとか持ち直しす。周囲に分からないように睨ね付ければ、ディーデリヒ様はクスクスと嬉しそうに笑った。
国王陛下が会場を見渡す。
貴族たちの中に驚いている顔もちらほらとあるが、その多くは第一王子派のようだった。
「そして、ディーデリヒ殿とパトリツィアは婚約が結ばれた。二人の結婚はルセアノ皇国とティリシス王国の架け橋の礎となるだろう」
大きく拍手が響き、ディーデリヒ様とともに礼を取る。長く続いた拍手が鳴りやんでようやく頭を上げた。
「それでは乾杯にしよう」
段上の袖に控えていた侍従たちがまず国王王妃両陛下へフルートグラスを渡す。続いてディーデリヒ様とわたし、それから王子殿下方と側妃様へとグラスを渡された。
フルートグラスに注がれているのはルセアノ皇国で作られたロゼのスパークリングワインだ。
ディーデリヒ様にいただいたものを昨晩の、ラインマイヤー家での最後の家族での団欒の際にいただいた。
華やかな香りに、飲みやすくも甘さは控えめで後味のすっきりしたスパークリングワインを両親も気に入っている。
二人は大階段から少し離れた場所で寄り添いこちらを見上げていた。わたしを見守る優しい視線には寂しさも滲んでいる。
今晩からディーデリヒ様とともにルセアノへ旅立つまで、わたしは王宮です過ごすのだ。
「では、ルセアノ・ティリシス両国の発展と二人の輝かしい未来を願って、乾杯」
国王陛下の言葉で会場の全てが左手を胸にあて、右手でグラスを掲げた。少しして国王王妃両陛下がスパークリングワインを飲み干す。それにならって、わたしたちや貴族たちも飲み干した。
会場の貴族たちがグラスの中身を見計らって国王陛下からファーストダンスが指名される。
もちろん今回の夜会ではディーデリヒ様が指名された。ディーデリヒ様はわたしに向かって膝をつきわたしの手を取る。
「踊っていただけますか?」
「はい、よろこんで」
ディーデリヒ様が手の甲に口づけると宮廷楽団がゆったりとしたワルツを奏で始めた。
ディーデリヒ様のエスコートでゆっくり階段を下りると、自然と大階段の下からは人が捌けスペースが円形に広がった。
ダンスホールに下りればディーデリヒ様の手が背中に回る。
「ちょっと緊張してるね?」
北部セトレア共和国への留学中、学園の親善舞踏会などでディーデリヒ様とは何度か踊っていた。
ディーデリヒ様がティリシスへいらっしゃってからの二日間でも何度か合わせているし、いままでダンスに緊張したことはなかったけれど。
「さすがに、ここまで注目されるなかでファーストダンスを踊るのは初めてですもの」
そう告げればディーデリヒ様はその柔らかな蓮の薄赤の瞳を細めて笑った。
「あなたが緊張しているのは、僕を意識してくれていることの証のようで嬉しいよ」
耳元で囁かれて首筋が熱くなる。次のステップが頭の中でこんがらがって、ディーデリヒ様の足を踏みそうになった。
けれどディーデリヒ様のリードでなんとか持ち直しす。周囲に分からないように睨ね付ければ、ディーデリヒ様はクスクスと嬉しそうに笑った。
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