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第2章 国交回復の経緯
(8)ディーデリヒの、パトリツィアとの出会い
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ディーデリヒはパトリツィアを一目見て、そのときはまだ誰かも知らなかった彼女を妃にするのだと決めた。
北部セトレア共和国の学園の中庭にある東屋から見た、渡り廊下を通るパトリツィアの横顔が目に焼き付いて離れなかった。
どうしてその距離から彼女の瞳の色まで分かったのかと自分でも不思議に思う。
透けそうな白い肌に、白金の癖のない髪が風に靡いた。その髪を彼女が片手でおさえたその仕草、一瞬目を細めたあとの遠くを見通すような菫色の瞳、全てがディーデリヒの目に焼き付いていた。
彼女がどうしても気になる。自分の妃になるはずの女性だ。
そう思ってディーデリヒは学園での案内役となった一学年先輩のサウリ・メラートクに聞くことにした。彼は北部セトレア共和国首長の嫡子でもある。学園にいる留学生には詳しいはずだ。
そして、彼女は隣国ティリシス王国の王家の血を引く公爵の娘パトリツィア・ラインマイヤーだと教えられた。
ティリシス王国とは国交が断絶して長く、かの国の内部情報は少ない。なのでディーデリヒは主には北部セトレア共和国を通してティリシス王国や王家、そしてラインマイヤー公爵に関して調べさせた。
その後、サウリの双子の妹ヴァウラにパトリツィアを紹介してもらい、徐々に距離を縮めた。
当初、国交のないルセアノの皇太子との交流に戸惑っていたパトリツィアだったが、サウリとヴァウラに取り成され段々と打ち解けた。
ディーデリヒはパトリツィアと交流を深めるうちに、どんどん彼女を妃にするのだという決意を強めていた。
パトリツィアと交流を深めつつ、ディーデリヒは積極的にティリシス王国との国交を結ぶよう皇帝である父や貴族たちに働きかけた。
皇妃である母にもパトリツィアを通して取り寄せたティリシス王国の繊細な刺繍の施されたり美しく染められた絹織物を送る。
そのたびに、パトリツィアがいかに皇后に相応しいかを手紙に認た。
いずれティリシス王国と国交が再開されれば、両国間の結び付きを強めるための婚姻政略がなされるはずだ。
ディーデリヒの妹がティリシス王国の王子の誰かに嫁ぐだろう。そして、ディーデリヒと年の近い王女のいないティリシス王国では、パトリツィアが国王の養女となりルセアノ皇国に嫁いでくることになるのは明白だ。
けれど水面下では抜かりなく動いていたディーデリヒは、両国間で国交再開を実現させようとパトリツィアと語り合いつつも、肝心の自分の気持ちを伝えていなかった。
留学期間を終え、ディーデリヒもパトリツィアもそれぞれ国へと帰ることになった。
パトリツィアから第一王子との婚約が知らされたのは帰国から一ヶ月が過ぎた頃のことである。
ディーデリヒは慌てて両親にパトリツィアを妃にすると宣言し、ティリシス王国へ向かった。
北部セトレア共和国の学園の中庭にある東屋から見た、渡り廊下を通るパトリツィアの横顔が目に焼き付いて離れなかった。
どうしてその距離から彼女の瞳の色まで分かったのかと自分でも不思議に思う。
透けそうな白い肌に、白金の癖のない髪が風に靡いた。その髪を彼女が片手でおさえたその仕草、一瞬目を細めたあとの遠くを見通すような菫色の瞳、全てがディーデリヒの目に焼き付いていた。
彼女がどうしても気になる。自分の妃になるはずの女性だ。
そう思ってディーデリヒは学園での案内役となった一学年先輩のサウリ・メラートクに聞くことにした。彼は北部セトレア共和国首長の嫡子でもある。学園にいる留学生には詳しいはずだ。
そして、彼女は隣国ティリシス王国の王家の血を引く公爵の娘パトリツィア・ラインマイヤーだと教えられた。
ティリシス王国とは国交が断絶して長く、かの国の内部情報は少ない。なのでディーデリヒは主には北部セトレア共和国を通してティリシス王国や王家、そしてラインマイヤー公爵に関して調べさせた。
その後、サウリの双子の妹ヴァウラにパトリツィアを紹介してもらい、徐々に距離を縮めた。
当初、国交のないルセアノの皇太子との交流に戸惑っていたパトリツィアだったが、サウリとヴァウラに取り成され段々と打ち解けた。
ディーデリヒはパトリツィアと交流を深めるうちに、どんどん彼女を妃にするのだという決意を強めていた。
パトリツィアと交流を深めつつ、ディーデリヒは積極的にティリシス王国との国交を結ぶよう皇帝である父や貴族たちに働きかけた。
皇妃である母にもパトリツィアを通して取り寄せたティリシス王国の繊細な刺繍の施されたり美しく染められた絹織物を送る。
そのたびに、パトリツィアがいかに皇后に相応しいかを手紙に認た。
いずれティリシス王国と国交が再開されれば、両国間の結び付きを強めるための婚姻政略がなされるはずだ。
ディーデリヒの妹がティリシス王国の王子の誰かに嫁ぐだろう。そして、ディーデリヒと年の近い王女のいないティリシス王国では、パトリツィアが国王の養女となりルセアノ皇国に嫁いでくることになるのは明白だ。
けれど水面下では抜かりなく動いていたディーデリヒは、両国間で国交再開を実現させようとパトリツィアと語り合いつつも、肝心の自分の気持ちを伝えていなかった。
留学期間を終え、ディーデリヒもパトリツィアもそれぞれ国へと帰ることになった。
パトリツィアから第一王子との婚約が知らされたのは帰国から一ヶ月が過ぎた頃のことである。
ディーデリヒは慌てて両親にパトリツィアを妃にすると宣言し、ティリシス王国へ向かった。
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