9 / 21
第2章 国交回復の経緯
(9)国交回復と新たな婚約について
しおりを挟む
外交員や政務官は宣伝こそ積極的にしてはいないが、正式な訪問であり公にされてはいた。けれどルセアノの皇太子が入国したことを知るのはティリシス国王と宰相、その護衛騎士の一部である。
ディーデリヒは内密に国王へ謁見し、すぐにでも国交を回復したい旨を伝えた。
ティリシスでも国交回復は検討されておりそれについては前向きだったが、婚姻政策について国王は渋った。
現国王までの四代ほどは第一王子の王位継承が続いている。それが伝統というほどのものでないのは理解しているが、自分の代で四代続いたそれを変えるのもどうなのか。
しかしパトリツィアとの婚姻がなくなれば後ろ楯のないヘルムートの立太子は難しい。
ラインマイヤー公爵は国王が優柔不断なのを知っていた。臣籍降下したとはいえ同母兄弟で年も近いため、一緒に育ったのだ。
だから第一王子とパトリツィアの婚約が正式に発表されていないのをこれ幸いと、宰相として婚姻政略の有効性を説き国王を説得したのだった。
ラインマイヤー公爵はヘルムートを素行不良で王位を継げるかも分からず下位貴族の娘に入れあげていると認識していた。
そんな第一王子よりも隣国の皇太子であり、パトリツィアを望んでいるディーデリヒに嫁がせた方が娘が幸せになれると考えたのだ。
こうしてティリシス王国第一王子ヘルムート・ビシュケンスとパトリツィア・ラインマイヤーの婚約は二十日間で解消された。
正式に婚約が解消される三日前、パトリツィアにはヘルムートとの婚約解消が伝えられた。同時に国交回復の婚姻政策のためにパトリツィアがルセアノ皇国へ嫁ぐことも知らされた。
確かにディーデリヒとはお互いに国交回復へ向けて動くことを約束していた。そのためにも将来的には第一王子の王子妃となり隣国との国交のために働くつもりだった。
それを帰国してすぐ宰相を務める父にも相談していた。
けれど、王弟で宰相の父親に公爵の娘でしかないパトリツィアが国交回復を実現したいと伝えただけで、こうも急に事態が動くものだろうか。パトリツィアは不思議に思った。
不思議に思ってディーデリヒに手紙を書こうと考えた、その翌日、ディーデリヒが直接ラインマイヤー公爵邸を訪ねて来たときには言葉も出ないほどに驚いた。
「あなたが婚約したと聞いて、いてもたってもいられなかった」
向かい合って座ったディーデリヒの言葉にパトリツィアの胸の奥がドキドキと高鳴る。今まで生きてきて感じたことのない種類の緊張感だった。
気がつけば給仕人の姿も侍女の姿も部屋にない。応接室のドアや窓は開いているものの、パトリツィアは初めて家族以外の男性と二人きりになったのだ。
恐慌状態とまではいかなくとも、かなり混乱していた。
「あの、どうして……その、いてもたっても……?」
「一目見て、誰かも知れない貴女を僕の妃にしたいと思った。したい、というか絶対にするのだと決めた」
まっすぐと薄赤の瞳で他のなにも目に入らないという様子のディーデリヒに、さらに「一目惚れだよ」と囁くように言い募られる。
身体中が熱くなって、耳の奥でドクドクと血の流れる音がして、なにも考えられなくて、パトリツィアは卒倒しそうとだけ思った。
ディーデリヒは内密に国王へ謁見し、すぐにでも国交を回復したい旨を伝えた。
ティリシスでも国交回復は検討されておりそれについては前向きだったが、婚姻政策について国王は渋った。
現国王までの四代ほどは第一王子の王位継承が続いている。それが伝統というほどのものでないのは理解しているが、自分の代で四代続いたそれを変えるのもどうなのか。
しかしパトリツィアとの婚姻がなくなれば後ろ楯のないヘルムートの立太子は難しい。
ラインマイヤー公爵は国王が優柔不断なのを知っていた。臣籍降下したとはいえ同母兄弟で年も近いため、一緒に育ったのだ。
だから第一王子とパトリツィアの婚約が正式に発表されていないのをこれ幸いと、宰相として婚姻政略の有効性を説き国王を説得したのだった。
ラインマイヤー公爵はヘルムートを素行不良で王位を継げるかも分からず下位貴族の娘に入れあげていると認識していた。
そんな第一王子よりも隣国の皇太子であり、パトリツィアを望んでいるディーデリヒに嫁がせた方が娘が幸せになれると考えたのだ。
こうしてティリシス王国第一王子ヘルムート・ビシュケンスとパトリツィア・ラインマイヤーの婚約は二十日間で解消された。
正式に婚約が解消される三日前、パトリツィアにはヘルムートとの婚約解消が伝えられた。同時に国交回復の婚姻政策のためにパトリツィアがルセアノ皇国へ嫁ぐことも知らされた。
確かにディーデリヒとはお互いに国交回復へ向けて動くことを約束していた。そのためにも将来的には第一王子の王子妃となり隣国との国交のために働くつもりだった。
それを帰国してすぐ宰相を務める父にも相談していた。
けれど、王弟で宰相の父親に公爵の娘でしかないパトリツィアが国交回復を実現したいと伝えただけで、こうも急に事態が動くものだろうか。パトリツィアは不思議に思った。
不思議に思ってディーデリヒに手紙を書こうと考えた、その翌日、ディーデリヒが直接ラインマイヤー公爵邸を訪ねて来たときには言葉も出ないほどに驚いた。
「あなたが婚約したと聞いて、いてもたってもいられなかった」
向かい合って座ったディーデリヒの言葉にパトリツィアの胸の奥がドキドキと高鳴る。今まで生きてきて感じたことのない種類の緊張感だった。
気がつけば給仕人の姿も侍女の姿も部屋にない。応接室のドアや窓は開いているものの、パトリツィアは初めて家族以外の男性と二人きりになったのだ。
恐慌状態とまではいかなくとも、かなり混乱していた。
「あの、どうして……その、いてもたっても……?」
「一目見て、誰かも知れない貴女を僕の妃にしたいと思った。したい、というか絶対にするのだと決めた」
まっすぐと薄赤の瞳で他のなにも目に入らないという様子のディーデリヒに、さらに「一目惚れだよ」と囁くように言い募られる。
身体中が熱くなって、耳の奥でドクドクと血の流れる音がして、なにも考えられなくて、パトリツィアは卒倒しそうとだけ思った。
289
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?
鶯埜 餡
恋愛
バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。
今ですか?
めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?
【完結】出逢ったのはいつですか? えっ? それは幼馴染とは言いません。
との
恋愛
「リリアーナさーん、読み終わりましたぁ?」
今日も元気良く教室に駆け込んでくるお花畑ヒロインに溜息を吐く仲良し四人組。
ただの婚約破棄騒動かと思いきや・・。
「リリアーナ、だからごめんってば」
「マカロンとアップルパイで手を打ちますわ」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済みです。
R15は念の為・・
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
そちらがその気なら、こちらもそれなりに。
直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。
それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。
真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。
※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。
リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。
※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。
…ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº…
☻2021.04.23 183,747pt/24h☻
★HOTランキング2位
★人気ランキング7位
たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*)
ありがとうございます!
結婚式をボイコットした王女
椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。
しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。
※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※
1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。
1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)
双子の片割れと母に酷いことを言われて傷つきましたが、理解してくれる人と婚約できたはずが、利用価値があったから優しくしてくれたようです
珠宮さくら
恋愛
ベルティーユ・バランドは、よく転ぶことで双子の片割れや母にドジな子供だと思われていた。
でも、それが病気のせいだとわかってから、両親が離婚して片割れとの縁も切れたことで、理解してくれる人と婚約して幸せになるはずだったのだが、そうはならなかった。
理解していると思っていたのにそうではなかったのだ。双子の片割れや母より、わかってくれていると思っていたのも、勘違いしていただけのようだ。
熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください。私は、堅実に生きさせてもらいますので。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアルネアには、婚約者がいた。
しかし、ある日その彼から婚約破棄を告げられてしまう。なんでも、アルネアの妹と婚約したいらしいのだ。
「熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください」
身勝手な恋愛をする二人に対して、アルネアは呆れていた。
堅実に生きたい彼女にとって、二人の行いは信じられないものだったのである。
数日後、アルネアの元にある知らせが届いた。
妹と元婚約者の間で、何か事件が起こったらしいのだ。
【完結済み】婚約破棄したのはあなたでしょう
水垣するめ
恋愛
公爵令嬢のマリア・クレイヤは第一王子のマティス・ジェレミーと婚約していた。
しかしある日マティスは「真実の愛に目覚めた」と一方的にマリアとの婚約を破棄した。
マティスの新しい婚約者は庶民の娘のアンリエットだった。
マティスは最初こそ上機嫌だったが、段々とアンリエットは顔こそ良いが、頭は悪くなんの取り柄もないことに気づいていく。
そしてアンリエットに辟易したマティスはマリアとの婚約を結び直そうとする。
しかしマリアは第二王子のロマン・ジェレミーと新しく婚約を結び直していた。
怒り狂ったマティスはマリアに罵詈雑言を投げかける。
そんなマティスに怒ったロマンは国王からの書状を叩きつける。
そこに書かれていた内容にマティスは顔を青ざめさせ……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる