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第3章 マヌエラの話
(15)マヌエラ、ヘルムートと出会う
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「あの、どちらさまですか?」
「ヘルムートだ」
口うるさい側近や女子学生たちに追い掛けられて辟易していたヘルムートは、なんとか逃げ切った先に女子学生がいたことに落胆した。
けれど彼女はヘルムートのことを知らなかった。
ヘルムートはこの学院で自分を知らない女子学生がいることに驚いていた。
そのふわふわした蜂蜜色の髪に優しげなはしばみ色の瞳を持つ小柄な女子学生が、こてん、と首を傾げた様子を見て気に入った。
あの冷たそうな白金の髪に菫色の瞳の、素直でない婚約者とは違う。周囲にいてきゃあきゃあ声をあげる女たちとも違う。
「ヘルムート様、わたしはマヌエラ・レーヴェンと申します」
自分の名前を聞いても驚かない、可愛らしいが肝が据わった女だとヘルムートは感心したが、マヌエラは単純に国王と王妃の名前くらいしか知らなかっただけである。
それからヘルムートは学内でマヌエラを見掛ければ声を掛けるようになった。
そうして一ヶ月が過ぎた頃、午前の教養科目を終えたマヌエラの教室に、女子学生が四人乗り込んできた。
「貴女、ずいぶんとヘルムート殿下と親しいようね」
四人のうちの銀髪の女子生徒の言葉で初めてマヌエラはヘルムートが王子だと知った。王子殿下相手にだいぶ無礼な態度だったはずだ。マヌエラは顔を青くした。
「ヘルムート殿下には、パトリツィア・ラインマイヤー様という立派な、婚約者に相応しい方がいらっしゃるんですのよ」
「それなのにヘルムート殿下とあのように親しげにされるなんて」
「貴女は大した歴史もない男爵程度の娘ですわね? 立場を弁えなさい」
あとの三人にも口々に言われて恐ろしくなった。マヌエラは生まれてこのかた、ここまで正面切って詰られることなんてなかったのだ。
泣きそうになりながら彼女たちに素直に「申し訳ありませんでした」と謝った。
「分かれば良いのよ」
銀髪の女子学生がそう言うと四人はマヌエラのいた教室から立ち去った。マヌエラの周りには男子学生たちが集まって慰めてくれたが「一人にしてほしい」と告げればそっとしておいてくれる。
マヌエラは落ち込みながらも、いつもの裏庭の秘密の場所に向かった。
「大丈夫か?」
数日に一度、マヌエラの秘密の場所に来るようになっていたヘルムートは、その日もやってきた。
元気のないマヌエラに掛けるヘルムートの声は優しい。
「わたしヘルムート様、いえ、殿下が王子だったなんて知らなくて……しかも、婚約者になる方がいらっしゃったなんて……」
「殿下なんて呼ぶな。今まで通り呼べば良い」
「でも……」
「まさか、パトリツィアになにか言われたのか」
はっとして、あの銀髪の女子学生がヘルムートの婚約者だったのだとマヌエラは気がつく。
それならば彼女があんなにも怒りを見せていたのも合点がいった。
「ヘルムートだ」
口うるさい側近や女子学生たちに追い掛けられて辟易していたヘルムートは、なんとか逃げ切った先に女子学生がいたことに落胆した。
けれど彼女はヘルムートのことを知らなかった。
ヘルムートはこの学院で自分を知らない女子学生がいることに驚いていた。
そのふわふわした蜂蜜色の髪に優しげなはしばみ色の瞳を持つ小柄な女子学生が、こてん、と首を傾げた様子を見て気に入った。
あの冷たそうな白金の髪に菫色の瞳の、素直でない婚約者とは違う。周囲にいてきゃあきゃあ声をあげる女たちとも違う。
「ヘルムート様、わたしはマヌエラ・レーヴェンと申します」
自分の名前を聞いても驚かない、可愛らしいが肝が据わった女だとヘルムートは感心したが、マヌエラは単純に国王と王妃の名前くらいしか知らなかっただけである。
それからヘルムートは学内でマヌエラを見掛ければ声を掛けるようになった。
そうして一ヶ月が過ぎた頃、午前の教養科目を終えたマヌエラの教室に、女子学生が四人乗り込んできた。
「貴女、ずいぶんとヘルムート殿下と親しいようね」
四人のうちの銀髪の女子生徒の言葉で初めてマヌエラはヘルムートが王子だと知った。王子殿下相手にだいぶ無礼な態度だったはずだ。マヌエラは顔を青くした。
「ヘルムート殿下には、パトリツィア・ラインマイヤー様という立派な、婚約者に相応しい方がいらっしゃるんですのよ」
「それなのにヘルムート殿下とあのように親しげにされるなんて」
「貴女は大した歴史もない男爵程度の娘ですわね? 立場を弁えなさい」
あとの三人にも口々に言われて恐ろしくなった。マヌエラは生まれてこのかた、ここまで正面切って詰られることなんてなかったのだ。
泣きそうになりながら彼女たちに素直に「申し訳ありませんでした」と謝った。
「分かれば良いのよ」
銀髪の女子学生がそう言うと四人はマヌエラのいた教室から立ち去った。マヌエラの周りには男子学生たちが集まって慰めてくれたが「一人にしてほしい」と告げればそっとしておいてくれる。
マヌエラは落ち込みながらも、いつもの裏庭の秘密の場所に向かった。
「大丈夫か?」
数日に一度、マヌエラの秘密の場所に来るようになっていたヘルムートは、その日もやってきた。
元気のないマヌエラに掛けるヘルムートの声は優しい。
「わたしヘルムート様、いえ、殿下が王子だったなんて知らなくて……しかも、婚約者になる方がいらっしゃったなんて……」
「殿下なんて呼ぶな。今まで通り呼べば良い」
「でも……」
「まさか、パトリツィアになにか言われたのか」
はっとして、あの銀髪の女子学生がヘルムートの婚約者だったのだとマヌエラは気がつく。
それならば彼女があんなにも怒りを見せていたのも合点がいった。
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