婚約破棄ですか、すでに解消されたはずですが

ふじよし

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第3章 マヌエラの話

(14)マヌエラの学院生活

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 マヌエラは一度進学を諦めた以前よりもさらに必死に勉強して、なんとか無事に学院への二年次後期の編入を果たした。
 編入試験に合格できるものは数年に一人いるかどうか程度らしく、学内ではかなり話題になったらしい。


 学院では王都にタウンハウスを持つ高位貴族の子女はそこから通う。そして王都にタウンハウスを持つほど財力のない下位貴族や平民は学生寮に入る。

 学生寮は寄付金と成績で入れる部屋が変わる制度だ。部屋は、広い一人部屋、少し手狭な一人部屋、少し広い二人部屋、手狭な二人部屋とランクがあり、年度ごとに部屋替えもある。
 マヌエラは少し手狭な一人部屋に入った。


 学院へ編入した当初、マヌエラはクラスや男女問わずよく話しかけられた。そこで初めて自分が結構な人見知りであることに気づいた。

 とくに女子学生と何を話せばいいのか分からない。マヌエラがまともに会話をしたことのある同性といえば、母親とその同世代の使用人二人くらいだ。


 男子学生は学問に励む女子を差別したりしないし、兄たちとあまり変わらないので彼らにちやほやされるまま、マヌエラが受け答えするだけで問題ない。
 けれどそれは、ただでさえ女子学生と近づけないマヌエラから、さらに女子学生を遠ざける要因となった。

 ただ、マヌエラにとって学院での目標はしっかり学ぶことと、そのついでに良い結婚相手を見つけること、その二つだ。なので、他の女子学生と仲良くなれないことは大した問題ではない。
 すこし、さみしいとは思ったけれど。


 ある日、マヌエラは学舎の裏庭にあるアベリアという低木の茂みに囲まれた小さなスペースで一人昼食をとっていた。
 そこは日中、学院にいるあいだ一人になりたいときに訪れるマヌエラの秘密の場所だ。

 学期末には論文を提出しなければならない。マヌエラは論文は寮に戻ってから書くことにしていた。
 午前は教養科目の時間である。そのあとの昼休みの一人きりの時間に、論文の主題や仮定をどう検証するかなど頭の中でしっかり練り、午後の演習科目の時間でその考えに沿った研究をする。

 その大切な昼休みの時間の秘密の場所に現れたのが、ヘルムートだった。
 マヌエラは初めて王都に来たばかりの田舎貴族の娘なので王族の顔を知らない。だからヘルムートがこの国の第一王子なんて、最初は全く気がつかなかった。


 ただ美しい金髪に綺麗な翠の目を持つ、やたら顔の整った男が突然現れたことに驚いた。身なりが良いのでお金持ちなんだろうな。
 それがマヌエラのヘルムートに対する最初の印象である。
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