王子の婚約者の決定が、候補者によるジャンケンの結果であることを王子は知らない

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居た堪れない護衛騎士

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ここはエリザベス嬢のいる公爵家。

今日はこちらでお茶会という名の王子への苦情吐露会が行われている。王子の婚約者に決まったコリーナ嬢を元気づけるのが目的だったもので、護衛は今日は王子ではなく、コリーナ嬢に貸し出されていた。

コリーナ嬢はあれからというもの、王子殿下とは全く会わずに済んでいる。本人はそれが普通だと思っているのか、単に会いたくないのか、どうもしていないのだが、本来なら王家に苦情の一つも来るレベルの放置っぷりである。

あろうことか王子は平民のマリアとかいう女に執心しており、これでは不貞だといくら言い聞かせても聞く耳を持たない。

エリザベス嬢はじめ逃げおおせたご令嬢達はコリーナの近況を聞きたがり、その話によって、王子の非道さに話がすり替わり、挙げ句の果てに悪口大会になりつつある。護衛は怒る気もなくなった。コリーナ嬢への態度も褒めたものでもなければ、一見好意のあったご令嬢達にもなのかと、呆れたのである。

居た堪れない思いを胸に、ご令嬢の怒りと思いを受け止める。王子殿下はここにいる人間にとって「共通の敵」と成り下がった。


まず口火を切ったのは、この主催であるエリザベス嬢。

「彼の方、いつも先触れなしに我が家にお越しになりますのよ。何度も先触れを出してくださいとお願いしておりますのに。サプライズだから、嬉しいだろう、なんて。嫌でも完璧な準備と言うものがあるので、先触れを出してくださいと言っても、どこ吹く風という感じで。

で、何時間も勝手に待っておいて、遅かったな、なんて頭が沸いているのかしら。お会いしたとしても、大して楽しい話題もないし、人の胸ばかり凝視してはニヤニヤしてらっしゃるし、気持ち悪いのですわ。」

「あら、エリザベス様もですの?」

口を挟んだのは、侯爵家のフレイヤ嬢。

「私、屋敷には突然来られることはないのですが、出先でばったりと言うのが過去七回ほど続いておりまして、流石に偶然とは言えなくなって、気持ち悪いと思っていたところなんですの。あれは何なのでしょうか。監視、ですの?後、胸ではないのですが、ふと手が触れる、と言うのが本当にたくさんあるのですわ。何か本当に気持ち悪くて……あら気持ち悪いとしか言ってませんわね。ふふ。」

「私は……そうですわね。ふとした時に髪を触られるのです。鳥肌が立ってしまって……想像しただけで、ほら。凄いのですわ。皆様は殿下より少しだけ背が高くいらっしゃるでしょう?私は低い身長がコンプレックスなのに、殿下はちょうど良いと、髪を撫でられるのです。もう……」

「「「気持ち悪くて。」」」

会に参加している令嬢達の声が重なる。王子のスキンシップはハラスメントというやつですよ。

普段の殿下の行動を思い出しては、あれもそうか、と思い当たるあたり、護衛騎士も感覚が麻痺してしまっていたらしい。自戒の意味も込めて、殿下を今後は彼女達に近づけないと誓った。


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