王子は真実の愛に目覚めたそうです

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真実の愛

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兄上と名乗る平民が来なくなって数日、王妃が病のため、逝去されたことが、国民に告げられた。第一王子が廃嫡になって後、重大な病の為、闘病生活を送られていたらしいが、心労が祟ったのか、気の毒な最期であった。

実質、王妃の仕事は、側妃である母が以前から代行していたし、特に困ることはない。王妃が亡くなったことにより、王妃に寄生していた膿を全て排除することができたので、悪いことよりも良いことの方が遥かに多い。

王妃の贅沢病は国庫を常日頃から圧迫していたので、それも今後はなくなる。

「兄上は、よくやってくださいました。」

しみじみ呟くと、陛下は、ブッと吹き出している。

「長かったな。ようやく、元に戻ったと言うべきか。」

王妃との結婚生活で、皺がたくさん増えた父上を眺める。やはり、兄上と似ている部分はないように思う。対して私は、嫌になるほど見た目も性格も似ている。そもそも、幼馴染であった両親の性格が似ているのだから、どちらに似ていてもこの性格にはなるんだ。

仕方ない。

ここだけの話。兄上と、父上に血縁関係はない。王妃と父上の間に肉体関係はなかった。あるように王妃が嘘をついていたのだった。

側妃の母上と父上は、昔からの婚約者だったが、間に無理矢理王妃が入り込んで来たのだった。酒による過ちとは言っても、身籠ってしまえば、妃にするしかない。しかも、運悪く、王妃は隣国の公爵家の生まれだった。


真実の愛、とはよく言ったもの。王妃は、国王陛下の地位は愛していたが、陛下本人を愛することはなかった。国民を、自分が贅沢をするための駒としか見ていなかった。

母は、侯爵令嬢として、父の幼い頃からの婚約者として、父自身とこの国を愛していた。要は、その違いなのだろう。

母は、側妃と言う立場でも、国の為にできることはする、と言う姿勢だったし、父から受ける愛情を疑ったりはしなかった。


母は貴族の娘には珍しいのかもしれないが、息子である私を駒として扱わなかった。

愛する誰かが出来たら、その誰かのために、命をかけて生きなさい、と言うような意味のことを言われた気がする。

それは、父にされて、母が一番嬉しかったところだそうだ。

はいはい、熱い熱い。

こうしてみると、邪魔なものが取り払われて今が一番、しっくり来るのだが。


こんな幸せでいいのだろうか。




公務が終わって、王宮の庭園を、ジャンヌと二人歩く。

「こうして歩いていると、気持ちがいいね。」

書類にばかり埋もれていると、季節を感じられなくなったり、まわりが見えなくなったりしてしまう。

「そうですね。こうして、歩いていると、二人の時間ができて、嬉しいです。」

ほんのりと頬を赤く染めている、ジャンヌは美しすぎないか?

「できる限り、こう言う時間も作って行こうね。」

繋いだジャンヌの手をとり、手の甲にキスをすると、ジャンヌの顔がわかりやすく、緩んでいく。

可愛いが過ぎる。

「はい。約束です。」
「約束。」

手を繋いで、歩き出す。二人は微笑みながら、同じ歩幅で歩んでいく。


その様子は生温かい目で多くの使用人に見られていた。
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