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番外編 ダミアン
肖像画の人
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いつものように、勉強が終わって、家に帰ると、妹の他に、見たことのある男がソファに座っていた。不思議なことに、妙に仲良くなっている。何と言うか、二人の距離が近い……ような?
妹はどことなく、焦っていて、男は私の顔を一瞥したあとは、ずっと妹を熱い目で見つめている。知らないフリをするべきか。
平民になってからずっと、ぼんやりしていた妹が少し元気になってくれただけでも、良いと言うべきか。
その役が、自分ではなかったことを悔しいと思うべきか。血は繋がっていなくても、妹だと思って接してきた兄として、妹が幸せなら多少のことは目を瞑ることにする。
「お兄様、王妃様に会いに行きましょう!」
王妃様のお墓のことかと、思ったら、何とご本人が生きている、と聞かされる。理解が追いつかないままに、連れて行かれ、同じ食卓を囲むことになってしまった。緊張が表に出ないことをこんなに感謝したことはない。この性質だけは、貴族として生まれて、誇れる箇所だと思う。
隣国が狂った元凶であり、あの叔母が最も恐れ憎んだ人。クラリス・デーツ、元隣国の公爵令嬢で、現国王陛下の初恋の人。実の兄からの狂愛から逃げて、陛下を捨て、隣国で王妃になった悪女として、語られているその人と、今こうして、朗らかに卓を囲んでいる。
「私が、聞いた話と違うと困惑してるわね。」
私が必死に隠している、と思っていた表情を読み取られていた。恥ずかしくてたまらなくなる。
「そんなに、怯えないで。あれは私を憎んでいる誰かと誰かの作り話だから。」
ね、と首を傾げる彼女は可憐で、全てわかっている、と思わせる。
「昔、貴女の肖像画を見かけたことがあります。あまりに美しくて、見惚れてしまいました。お恥ずかしながら、実は私の初恋は貴女でした。お目にかかれて光栄です。クラリス様。」
ワインを片手に、上機嫌で微笑んで、私の頭を撫でる。
「息子ぐらいの子にそう言われて、嬉しいわ。もう、貴族でも王族でもないから、クラリスおばさん、でいいのよ。ダミアン。」
おばさん、にはそぐわない可憐さを目にして、動きが止まる。今日はどうやら、うまく頭が働いてくれない日だ。
「貴方の叔母さんはね、私のことが大嫌いだったの。それはね、私の兄を愛していたからなのよ。だから悪いのは兄であって、叔母さんではないのよ。彼女が貴方にさせたことは許せないかもしれないけれど、元々の原因は私の兄だわ。だから、ごめんなさいね。」
「貴女が謝ることではありません。叔母は、良くも悪くも貴族でした。貴族が義務を忘れて私利私欲に走った時点で幸せになる資格などありません。」
「手厳しいわね。私も思い当たる節があるわ。」
「私もです。だから、今はもう平民なのですよ、きっと。」
クラリス様は、ワインが好きなようで先程から随分一人で飲み続けている。楽しんでいらっしゃるのなら何よりだ。
妹はどことなく、焦っていて、男は私の顔を一瞥したあとは、ずっと妹を熱い目で見つめている。知らないフリをするべきか。
平民になってからずっと、ぼんやりしていた妹が少し元気になってくれただけでも、良いと言うべきか。
その役が、自分ではなかったことを悔しいと思うべきか。血は繋がっていなくても、妹だと思って接してきた兄として、妹が幸せなら多少のことは目を瞑ることにする。
「お兄様、王妃様に会いに行きましょう!」
王妃様のお墓のことかと、思ったら、何とご本人が生きている、と聞かされる。理解が追いつかないままに、連れて行かれ、同じ食卓を囲むことになってしまった。緊張が表に出ないことをこんなに感謝したことはない。この性質だけは、貴族として生まれて、誇れる箇所だと思う。
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「そんなに、怯えないで。あれは私を憎んでいる誰かと誰かの作り話だから。」
ね、と首を傾げる彼女は可憐で、全てわかっている、と思わせる。
「昔、貴女の肖像画を見かけたことがあります。あまりに美しくて、見惚れてしまいました。お恥ずかしながら、実は私の初恋は貴女でした。お目にかかれて光栄です。クラリス様。」
ワインを片手に、上機嫌で微笑んで、私の頭を撫でる。
「息子ぐらいの子にそう言われて、嬉しいわ。もう、貴族でも王族でもないから、クラリスおばさん、でいいのよ。ダミアン。」
おばさん、にはそぐわない可憐さを目にして、動きが止まる。今日はどうやら、うまく頭が働いてくれない日だ。
「貴方の叔母さんはね、私のことが大嫌いだったの。それはね、私の兄を愛していたからなのよ。だから悪いのは兄であって、叔母さんではないのよ。彼女が貴方にさせたことは許せないかもしれないけれど、元々の原因は私の兄だわ。だから、ごめんなさいね。」
「貴女が謝ることではありません。叔母は、良くも悪くも貴族でした。貴族が義務を忘れて私利私欲に走った時点で幸せになる資格などありません。」
「手厳しいわね。私も思い当たる節があるわ。」
「私もです。だから、今はもう平民なのですよ、きっと。」
クラリス様は、ワインが好きなようで先程から随分一人で飲み続けている。楽しんでいらっしゃるのなら何よりだ。
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