王子は真実の愛に目覚めたそうです

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番外編 ダミアン

ワインの減りが早い

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クラリス様は赤ワインがお好きなようで、ハイスピードでグビグビと飲んでいく。王妃であった時には考えられないほど安いワインでも、気にならないらしい。

「何故か今の方がより美味しく感じられるのよ。金額は千分の一ぐらいなのに。私の舌には豪華な食事は合わなかったみたいね。」

「いつもこれほど飲まれるのですか?」

「いーえ、心配しなくていいわよ。良いことがある日しか飲まないわ。今日は特別よ。お客様のおかげよ。」

訪れた家は、私達兄妹に充てがわれた屋敷よりは少し小さいぐらいの家だが、それでも平民の家にしては、大きい。

貴族ではないので、家には使用人がいない為、必要なものがあれば、自ら取ってこなくてはならない。

クラリス様は、千鳥足で、もう一本のワインを取りに行く。贅沢はできないが、安いワインなら毎日でも飲むことができる。クラリス様は、王妃を辞めたあと、人知れず、侍女の仕事に就いていて稼ぎがあるためだ。

働き先には、元王妃だとは勿論知られてはいない。情報統制はしっかりとされていて、苦労した未亡人だと思われている。

王妃の時分、あまり表に出なかったことが幸いした。所作の美しさから、元貴族であることは、見抜けてもまさか元王妃だと気づく者はいない。

私もワインを注ぎつつ、未だに半信半疑なところだ。

「貴方達、家が近いなら、またこうして一緒に食事をしたりしましょう?」

「宜しいのですか?」
私達は、王妃様をこの国に追いやった憎い仇の縁者であり、見るのも嫌だと言われても仕方ないのだが。

「勿論よ。若い人と飲むのは楽しいわ。自分の悩んでいたことが小さなことだと思い知らされるから。だから、嫌でなければ、またこうやって、飲みましょう?」

断る理由などない。

「はい、是非。」隣の妹に目をやると、ウィルヘルムと一緒に楽しそうに話している。一緒に過ごした日々全て思い返してみても、妹のあんなに優しい笑顔を見たことはなかった。

生まれてこの方、こんなに強く平和を感じたことはなく、あれほど苦しかった、私はあの時どうしたら良かったのか、との答えの出ない問いかけも、はっきりとした答えが出ないままに、ワインの中に溶けていった。

今の今まで忘れていた。私自身、幸せには無縁だった。いつも、何かに追われていて、怯えていて、がんじがらめにされていた。

自分と同じだと思った王女は、一足先に身の振り方を決めていた。結果はどうあれ、大切な人を守る、と決めて、実際にそうやって、後悔はないだろう。

ワインを飲み干すと、胸につかえていたいくつかの余計な感情が一緒に流れていくような感覚に陥る。

私はすでに、婚約者だった人と、進む道を違えた。後悔はない。







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