34 / 45
番外編 ダミアン
肖像画の人
しおりを挟む
いつものように、勉強が終わって、家に帰ると、妹の他に、見たことのある男がソファに座っていた。不思議なことに、妙に仲良くなっている。何と言うか、二人の距離が近い……ような?
妹はどことなく、焦っていて、男は私の顔を一瞥したあとは、ずっと妹を熱い目で見つめている。知らないフリをするべきか。
平民になってからずっと、ぼんやりしていた妹が少し元気になってくれただけでも、良いと言うべきか。
その役が、自分ではなかったことを悔しいと思うべきか。血は繋がっていなくても、妹だと思って接してきた兄として、妹が幸せなら多少のことは目を瞑ることにする。
「お兄様、王妃様に会いに行きましょう!」
王妃様のお墓のことかと、思ったら、何とご本人が生きている、と聞かされる。理解が追いつかないままに、連れて行かれ、同じ食卓を囲むことになってしまった。緊張が表に出ないことをこんなに感謝したことはない。この性質だけは、貴族として生まれて、誇れる箇所だと思う。
隣国が狂った元凶であり、あの叔母が最も恐れ憎んだ人。クラリス・デーツ、元隣国の公爵令嬢で、現国王陛下の初恋の人。実の兄からの狂愛から逃げて、陛下を捨て、隣国で王妃になった悪女として、語られているその人と、今こうして、朗らかに卓を囲んでいる。
「私が、聞いた話と違うと困惑してるわね。」
私が必死に隠している、と思っていた表情を読み取られていた。恥ずかしくてたまらなくなる。
「そんなに、怯えないで。あれは私を憎んでいる誰かと誰かの作り話だから。」
ね、と首を傾げる彼女は可憐で、全てわかっている、と思わせる。
「昔、貴女の肖像画を見かけたことがあります。あまりに美しくて、見惚れてしまいました。お恥ずかしながら、実は私の初恋は貴女でした。お目にかかれて光栄です。クラリス様。」
ワインを片手に、上機嫌で微笑んで、私の頭を撫でる。
「息子ぐらいの子にそう言われて、嬉しいわ。もう、貴族でも王族でもないから、クラリスおばさん、でいいのよ。ダミアン。」
おばさん、にはそぐわない可憐さを目にして、動きが止まる。今日はどうやら、うまく頭が働いてくれない日だ。
「貴方の叔母さんはね、私のことが大嫌いだったの。それはね、私の兄を愛していたからなのよ。だから悪いのは兄であって、叔母さんではないのよ。彼女が貴方にさせたことは許せないかもしれないけれど、元々の原因は私の兄だわ。だから、ごめんなさいね。」
「貴女が謝ることではありません。叔母は、良くも悪くも貴族でした。貴族が義務を忘れて私利私欲に走った時点で幸せになる資格などありません。」
「手厳しいわね。私も思い当たる節があるわ。」
「私もです。だから、今はもう平民なのですよ、きっと。」
クラリス様は、ワインが好きなようで先程から随分一人で飲み続けている。楽しんでいらっしゃるのなら何よりだ。
妹はどことなく、焦っていて、男は私の顔を一瞥したあとは、ずっと妹を熱い目で見つめている。知らないフリをするべきか。
平民になってからずっと、ぼんやりしていた妹が少し元気になってくれただけでも、良いと言うべきか。
その役が、自分ではなかったことを悔しいと思うべきか。血は繋がっていなくても、妹だと思って接してきた兄として、妹が幸せなら多少のことは目を瞑ることにする。
「お兄様、王妃様に会いに行きましょう!」
王妃様のお墓のことかと、思ったら、何とご本人が生きている、と聞かされる。理解が追いつかないままに、連れて行かれ、同じ食卓を囲むことになってしまった。緊張が表に出ないことをこんなに感謝したことはない。この性質だけは、貴族として生まれて、誇れる箇所だと思う。
隣国が狂った元凶であり、あの叔母が最も恐れ憎んだ人。クラリス・デーツ、元隣国の公爵令嬢で、現国王陛下の初恋の人。実の兄からの狂愛から逃げて、陛下を捨て、隣国で王妃になった悪女として、語られているその人と、今こうして、朗らかに卓を囲んでいる。
「私が、聞いた話と違うと困惑してるわね。」
私が必死に隠している、と思っていた表情を読み取られていた。恥ずかしくてたまらなくなる。
「そんなに、怯えないで。あれは私を憎んでいる誰かと誰かの作り話だから。」
ね、と首を傾げる彼女は可憐で、全てわかっている、と思わせる。
「昔、貴女の肖像画を見かけたことがあります。あまりに美しくて、見惚れてしまいました。お恥ずかしながら、実は私の初恋は貴女でした。お目にかかれて光栄です。クラリス様。」
ワインを片手に、上機嫌で微笑んで、私の頭を撫でる。
「息子ぐらいの子にそう言われて、嬉しいわ。もう、貴族でも王族でもないから、クラリスおばさん、でいいのよ。ダミアン。」
おばさん、にはそぐわない可憐さを目にして、動きが止まる。今日はどうやら、うまく頭が働いてくれない日だ。
「貴方の叔母さんはね、私のことが大嫌いだったの。それはね、私の兄を愛していたからなのよ。だから悪いのは兄であって、叔母さんではないのよ。彼女が貴方にさせたことは許せないかもしれないけれど、元々の原因は私の兄だわ。だから、ごめんなさいね。」
「貴女が謝ることではありません。叔母は、良くも悪くも貴族でした。貴族が義務を忘れて私利私欲に走った時点で幸せになる資格などありません。」
「手厳しいわね。私も思い当たる節があるわ。」
「私もです。だから、今はもう平民なのですよ、きっと。」
クラリス様は、ワインが好きなようで先程から随分一人で飲み続けている。楽しんでいらっしゃるのなら何よりだ。
4
あなたにおすすめの小説
差し出された毒杯
しろねこ。
恋愛
深い森の中。
一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。
「あなたのその表情が見たかった」
毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。
王妃は少女の美しさが妬ましかった。
そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。
スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。
お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。
か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。
ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。
同名キャラで複数の作品を書いています。
立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。
ところどころリンクもしています。
※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!
ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています
木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。
少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが……
陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。
どちらからお読み頂いても話は通じます。
何度時間を戻しても婚約破棄を言い渡す婚約者の愛を諦めて最後に時間を戻したら、何故か溺愛されました
海咲雪
恋愛
「ロイド様、今回も愛しては下さらないのですね」
「聖女」と呼ばれている私の妹リアーナ・フィオールの能力は、「モノの時間を戻せる」というもの。
姉の私ティアナ・フィオールには、何の能力もない・・・そう皆に思われている。
しかし、実際は違う。
私の能力は、「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」。
つまり、過去にのみタイムリープ出来るのだ。
その能力を振り絞って、最後に10年前に戻った。
今度は婚約者の愛を求めずに、自分自身の幸せを掴むために。
「ティアナ、何度も言うが私は君の妹には興味がない。私が興味があるのは、君だけだ」
「ティアナ、いつまでも愛しているよ」
「君は私の秘密など知らなくていい」
何故、急に私を愛するのですか?
【登場人物】
ティアナ・フィオール・・・フィオール公爵家の長女。リアーナの姉。「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」能力を持つが六回目のタイムリープで全ての力を使い切る。
ロイド・エルホルム・・・ヴィルナード国の第一王子。能力は「---------------」。
リアーナ・フィオール・・・フィオール公爵家の次女。ティアナの妹。「モノの時間を戻せる」能力を持つが力が弱く、数時間程しか戻せない。
ヴィーク・アルレイド・・・アルレイド公爵家の長男。ティアナに自身の能力を明かす。しかし、実の能力は・・・?
虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。
ラディ
恋愛
一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。
家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。
劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。
一人の男が現れる。
彼女の人生は彼の登場により一変する。
この機を逃さぬよう、彼女は。
幸せになることに、決めた。
■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です!
■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました!
■感想や御要望などお気軽にどうぞ!
■エールやいいねも励みになります!
■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。
※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。
大嫌いな従兄と結婚するぐらいなら…
みみぢあん
恋愛
子供の頃、両親を亡くしたベレニスは伯父のロンヴィル侯爵に引き取られた。 隣国の宣戦布告で戦争が始まり、伯父の頼みでベレニスは病弱な従妹のかわりに、側妃候補とは名ばかりの人質として、後宮へ入ることになった。 戦争が終わりベレニスが人質生活から解放されたら、伯父は後継者の従兄ジャコブと結婚させると約束する。 だがベレニスはジャコブが大嫌いなうえ、密かに思いを寄せる騎士フェルナンがいた。
婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします
たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。
荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。
「この猫に構うな。人間嫌いだから」
冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。
猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
お母様!その方はわたくしの婚約者です
バオバブの実
恋愛
マーガレット・フリーマン侯爵夫人は齢42歳にして初めて恋をした。それはなんと一人娘ダリアの婚約者ロベルト・グリーンウッド侯爵令息
その事で平和だったフリーマン侯爵家はたいへんな騒ぎとなるが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる