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面倒な日常 グレイス視点
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マーカスと別れて自分のクラスに向かったグレイスは、内心凄く安堵していた。あの令嬢の幼馴染だから、話が通じなかったらどうしよう、と悩んでいたのだ。
だが、彼は優しく話を聞いてくれた。おかげで余計なことまで話してしまった。婚約者の秘密の恋人のこととか。
でも、秘密とは言っても、皆が知っていることだから、話しても差し支えないだろう。
それに、当の本人が噂を戒めることは愚か、アリス・ロゼット公爵令嬢に至っては、態々グレイスに宣戦布告してくるぐらいなのだから、秘密も何もない。
グレイスは、先程会ったばかりのマーカス・ライデン男爵子息を思い出し、笑顔になる。
今まで周りにいなかった裏表のなさそうな素朴な彼にグレイスの心は踊った。
それでもまだ何も解決はしていない。周りを見渡せば、今日はまだミリーの特攻はない。今のうちに、と早足でクラスに駆け込むと、自分の席に着いた。
クラスに入ってしまえば、子爵令嬢が突撃してくることはない。このクラスには防犯上高位貴族しか入れない。ただ、彼女だけがグレイスの悩みの種かと言うと、そうでもない。
公然の秘密を知る者は多い。アリス・ロゼット公爵令嬢の親切なご友人達は、やはりいて、地味にグレイスを口撃してくる。
彼女達は、アリスの幸せと言いながら、ケヴィンの婚約者であるグレイスを責めてくる。本当にアリスの幸せを望むなら、第一王子ジュリアスに誤解されないように動いた方が良いのではないだろうか。
と、考えてはいても、それを口にするのは憚られて、グレイスは甘んじて彼女達の前に沈黙する。
見た目が儚げに見えるグレイスは同年代には侮られやすい。だが、あくまで侯爵令嬢な彼女は、アリスの友人達の顔と家名を覚えて、後で厳重に抗議をしようと冷静に考えていた。
こうなるのなら、婚約者を選ぶ際に第一王子ジュリアスではなく、ケヴィンの方を選んでおけばよかったのに。
アリス・ロゼット公爵令嬢は、第一王子ジュリアスに申し込まれて、婚約を断れなかった訳ではない。最初にどちらか一方を選べと言われて自ら選んだのだから。
実は第一王子ジュリアスは、生まれたばかりの頃、第一王子ではなかった。病弱な第一王子がその一年前に生まれていたのである。
グレイスの兄サリエルはその元第一王子の側近となる予定だった。それが数年前に流行病で第一王子が亡くなり、彼の婚約者も国外に出てから、ロゼット公爵家はジュリアスを支援することを決め、アリス嬢との婚約を整えた。意地の悪い見方をすると、ジュリアスが第二王子のままだったならアレコレ理由をつけて婚約をしなかったかもしれない。そうなれば、話が侯爵家にも来て、グレイスがその地位に就いていたかもしれない。
憶測でしかないが、ジュリアス様と年齢が近い高位貴族の令嬢で、婚約していない相手はそれほど多くはなかった。グレイス然り、アリス然り。元第一王子の婚約者に選ばれた公爵令嬢も、妹が確かいたが、すでに婚約者がいた。
グレイスならば、良いとでも思われているとしたら、厄介だ。彼女はグレイスとケヴィンが結婚しても尚ちょっかいをかけてくることは目に見えている。
何なら子爵令嬢にその地位を譲り、グレイスは別の人と結婚したいものである。別の人、と考えて先程会った男爵子息を思い浮かべ、グレイスは苦笑する。
こんな想像は彼に失礼だと頭を切り替える。
グレイスは何度目かのため息を吐くと、問題を頭から追い出した。
だが、彼は優しく話を聞いてくれた。おかげで余計なことまで話してしまった。婚約者の秘密の恋人のこととか。
でも、秘密とは言っても、皆が知っていることだから、話しても差し支えないだろう。
それに、当の本人が噂を戒めることは愚か、アリス・ロゼット公爵令嬢に至っては、態々グレイスに宣戦布告してくるぐらいなのだから、秘密も何もない。
グレイスは、先程会ったばかりのマーカス・ライデン男爵子息を思い出し、笑顔になる。
今まで周りにいなかった裏表のなさそうな素朴な彼にグレイスの心は踊った。
それでもまだ何も解決はしていない。周りを見渡せば、今日はまだミリーの特攻はない。今のうちに、と早足でクラスに駆け込むと、自分の席に着いた。
クラスに入ってしまえば、子爵令嬢が突撃してくることはない。このクラスには防犯上高位貴族しか入れない。ただ、彼女だけがグレイスの悩みの種かと言うと、そうでもない。
公然の秘密を知る者は多い。アリス・ロゼット公爵令嬢の親切なご友人達は、やはりいて、地味にグレイスを口撃してくる。
彼女達は、アリスの幸せと言いながら、ケヴィンの婚約者であるグレイスを責めてくる。本当にアリスの幸せを望むなら、第一王子ジュリアスに誤解されないように動いた方が良いのではないだろうか。
と、考えてはいても、それを口にするのは憚られて、グレイスは甘んじて彼女達の前に沈黙する。
見た目が儚げに見えるグレイスは同年代には侮られやすい。だが、あくまで侯爵令嬢な彼女は、アリスの友人達の顔と家名を覚えて、後で厳重に抗議をしようと冷静に考えていた。
こうなるのなら、婚約者を選ぶ際に第一王子ジュリアスではなく、ケヴィンの方を選んでおけばよかったのに。
アリス・ロゼット公爵令嬢は、第一王子ジュリアスに申し込まれて、婚約を断れなかった訳ではない。最初にどちらか一方を選べと言われて自ら選んだのだから。
実は第一王子ジュリアスは、生まれたばかりの頃、第一王子ではなかった。病弱な第一王子がその一年前に生まれていたのである。
グレイスの兄サリエルはその元第一王子の側近となる予定だった。それが数年前に流行病で第一王子が亡くなり、彼の婚約者も国外に出てから、ロゼット公爵家はジュリアスを支援することを決め、アリス嬢との婚約を整えた。意地の悪い見方をすると、ジュリアスが第二王子のままだったならアレコレ理由をつけて婚約をしなかったかもしれない。そうなれば、話が侯爵家にも来て、グレイスがその地位に就いていたかもしれない。
憶測でしかないが、ジュリアス様と年齢が近い高位貴族の令嬢で、婚約していない相手はそれほど多くはなかった。グレイス然り、アリス然り。元第一王子の婚約者に選ばれた公爵令嬢も、妹が確かいたが、すでに婚約者がいた。
グレイスならば、良いとでも思われているとしたら、厄介だ。彼女はグレイスとケヴィンが結婚しても尚ちょっかいをかけてくることは目に見えている。
何なら子爵令嬢にその地位を譲り、グレイスは別の人と結婚したいものである。別の人、と考えて先程会った男爵子息を思い浮かべ、グレイスは苦笑する。
こんな想像は彼に失礼だと頭を切り替える。
グレイスは何度目かのため息を吐くと、問題を頭から追い出した。
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