幼馴染が恋をしたら、もれなく巻き込まれました

mios

文字の大きさ
3 / 11

面倒な日常 グレイス視点

しおりを挟む
マーカスと別れて自分のクラスに向かったグレイスは、内心凄く安堵していた。あの令嬢の幼馴染だから、話が通じなかったらどうしよう、と悩んでいたのだ。

だが、彼は優しく話を聞いてくれた。おかげで余計なことまで話してしまった。婚約者の秘密の恋人のこととか。

でも、秘密とは言っても、皆が知っていることだから、話しても差し支えないだろう。

それに、当の本人が噂を戒めることは愚か、アリス・ロゼット公爵令嬢に至っては、態々グレイスに宣戦布告してくるぐらいなのだから、秘密も何もない。

グレイスは、先程会ったばかりのマーカス・ライデン男爵子息を思い出し、笑顔になる。

今まで周りにいなかった裏表のなさそうな素朴な彼にグレイスの心は踊った。

それでもまだ何も解決はしていない。周りを見渡せば、今日はまだミリーの特攻はない。今のうちに、と早足でクラスに駆け込むと、自分の席に着いた。

クラスに入ってしまえば、子爵令嬢が突撃してくることはない。このクラスには防犯上高位貴族しか入れない。ただ、彼女だけがグレイスの悩みの種かと言うと、そうでもない。

公然の秘密を知る者は多い。アリス・ロゼット公爵令嬢の親切なご友人達は、やはりいて、地味にグレイスを口撃してくる。

彼女達は、アリスの幸せと言いながら、ケヴィンの婚約者であるグレイスを責めてくる。本当にアリスの幸せを望むなら、第一王子ジュリアスに誤解されないように動いた方が良いのではないだろうか。

と、考えてはいても、それを口にするのは憚られて、グレイスは甘んじて彼女達の前に沈黙する。

見た目が儚げに見えるグレイスは同年代には侮られやすい。だが、あくまで侯爵令嬢な彼女は、アリスの友人達の顔と家名を覚えて、後で厳重に抗議をしようと冷静に考えていた。

こうなるのなら、婚約者を選ぶ際に第一王子ジュリアスではなく、ケヴィンの方を選んでおけばよかったのに。

アリス・ロゼット公爵令嬢は、第一王子ジュリアスに申し込まれて、婚約を断れなかった訳ではない。最初にどちらか一方を選べと言われて自ら選んだのだから。

実は第一王子ジュリアスは、生まれたばかりの頃、第一王子ではなかった。病弱な第一王子がその一年前に生まれていたのである。

グレイスの兄サリエルはその元第一王子の側近となる予定だった。それが数年前に流行病で第一王子が亡くなり、彼の婚約者も国外に出てから、ロゼット公爵家はジュリアスを支援することを決め、アリス嬢との婚約を整えた。意地の悪い見方をすると、ジュリアスが第二王子のままだったならアレコレ理由をつけて婚約をしなかったかもしれない。そうなれば、話が侯爵家にも来て、グレイスがその地位に就いていたかもしれない。


憶測でしかないが、ジュリアス様と年齢が近い高位貴族の令嬢で、婚約していない相手はそれほど多くはなかった。グレイス然り、アリス然り。元第一王子の婚約者に選ばれた公爵令嬢も、妹が確かいたが、すでに婚約者がいた。

グレイスならば、良いとでも思われているとしたら、厄介だ。彼女はグレイスとケヴィンが結婚しても尚ちょっかいをかけてくることは目に見えている。

何なら子爵令嬢にその地位を譲り、グレイスは別の人と結婚したいものである。別の人、と考えて先程会った男爵子息を思い浮かべ、グレイスは苦笑する。

こんな想像は彼に失礼だと頭を切り替える。

グレイスは何度目かのため息を吐くと、問題を頭から追い出した。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない

翠月るるな
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。 始めは夜会での振る舞いからだった。 それがさらに明らかになっていく。 機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。 おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。 そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?

婚約者に好きな人がいると言われました

みみぢあん
恋愛
子爵家令嬢のアンリエッタは、婚約者のエミールに『好きな人がいる』と告白された。 アンリエッタが婚約者エミールに抗議すると… アンリエッタの幼馴染みバラスター公爵家のイザークとの関係を疑われ、逆に責められる。 疑いをはらそうと説明しても、信じようとしない婚約者に怒りを感じ、『幼馴染みのイザークが婚約者なら良かったのに』と、口をすべらせてしまう。 そこからさらにこじれ… アンリエッタと婚約者の問題は、幼馴染みのイザークまで巻き込むさわぎとなり―――――― 🌸お話につごうの良い、ゆるゆる設定です。どうかご容赦を(・´з`・)

【完結】あなたのいない世界、うふふ。

やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。 しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。 とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。 =========== 感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。 4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。

公爵令嬢は運命の相手を間違える

あおくん
恋愛
エリーナ公爵令嬢は、幼い頃に決められた婚約者であるアルベルト王子殿下と仲睦まじく過ごしていた。 だが、学園へ通うようになるとアルベルト王子に一人の令嬢が近づくようになる。 アルベルト王子を誑し込もうとする令嬢と、そんな令嬢を許すアルベルト王子にエリーナは自分の心が離れていくのを感じた。 だがエリーナは既に次期王妃の座が確約している状態。 今更婚約を解消することなど出来るはずもなく、そんなエリーナは女に現を抜かすアルベルト王子の代わりに帝王学を学び始める。 そんなエリーナの前に一人の男性が現れた。 そんな感じのお話です。

婚約者と従妹に裏切られましたが、私の『呪われた耳』は全ての嘘をお見通しです

法華
恋愛
 『音色の魔女』と蔑まれる伯爵令嬢リディア。婚約者であるアラン王子は、可憐でか弱い従妹のセリーナばかりを寵愛し、リディアを心無い言葉で傷つける日々を送っていた。  そんなある夜、リディアは信じていた婚約者と従妹が、自分を貶めるために共謀している事実を知ってしまう。彼らにとって自分は、家の利益のための道具でしかなかったのだ。  全てを失い絶望の淵に立たされた彼女だったが、その裏切りこそが、彼女を新たな出会いと覚醒へと導く序曲となる。  忌み嫌われた呪いの力で、嘘で塗り固められた偽りの旋律に終止符を打つ時、自分を裏切った者たちが耳にするのは、破滅へのレクイエム。  これは、不遇の令嬢が真実の音色を見つけ、本当の幸せを掴むまでの逆転の物語。

後妻の条件を出したら……

しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。 格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。 だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。 しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。

望まない相手と一緒にいたくありませんので

毬禾
恋愛
どのような理由を付けられようとも私の心は変わらない。 一緒にいようが私の気持ちを変えることはできない。 私が一緒にいたいのはあなたではないのだから。

【完結】瑠璃色の薬草師

シマセイ
恋愛
瑠璃色の瞳を持つ公爵夫人アリアドネは、信じていた夫と親友の裏切りによって全てを奪われ、雨の夜に屋敷を追放される。 絶望の淵で彼女が見出したのは、忘れかけていた薬草への深い知識と、薬師としての秘めたる才能だった。 持ち前の気丈さと聡明さで困難を乗り越え、新たな街で薬草師として人々の信頼を得ていくアリアドネ。 しかし、胸に刻まれた裏切りの傷と復讐の誓いは消えない。 これは、偽りの愛に裁きを下し、真実の幸福と自らの手で築き上げる未来を掴むため、一人の女性が力強く再生していく物語。

処理中です...