4 / 11
秘密の恋人 ケヴィン視点
しおりを挟む
「アリス・ロゼット公爵令嬢と、ケヴィン・アクト公爵令息が秘密の恋人同士である」と言う噂は、実際のところ、事実ではない。その事情をはっきり知り得ているのは当の本人である、第一王子ジュリアスと、アリス・ロゼット、ケヴィン・アクトの三名だ。
皆それぞれに思うところがあって、噂を否定していないのだが、ケヴィン・アクト公爵令息はそろそろ否定して回りたい感情を抱えていた。
アリスを秘密の恋人とすることで、自身の婚約者であるグレイスに対する風当たりを弱くしようと思っていたのに、肝心のグレイスと全く会えない現状にケヴィンは不満を抱いていた。
アリスの言う通り、彼女の友人達がグレイスを気にして話しかけてくれているが、どこから見ても親しくなっているようには見えない。
アリスはアリスで、ジュリアスに全く相手にされていないから意識させたい、と言う話だったのに、ジュリアスはどこ吹く風で、アリスとの仲が改善されているようには見えない。
もしかして、ジュリアスにも秘密の恋人とやらがいて、こちらに関心すら持っていないのではないか、と考えたが、それだとアリスが可哀想だから、黙っていた。
ジュリアスは、ケヴィンとアリスの噂を聞いても、全く何の反応も見せなかった。婚約者として、アリスを蔑ろにすることはないが、幼馴染であっても昔から自分達の前ではあまり笑顔を見せることはなかった。
「ジュリアスは何を考えているのか分かりにくいのよ。」
アリスがよく言う愚痴だ。でもジュリアスは昔からそうだった。それでもよく見てみると、彼が好きなもの、嫌いなものぐらいは理解できた。彼は亡くなった兄上が大好きで読書を好む、物静かな子供だった。アリスとはまるで正反対な性格だが、アリスに誘われると必ず手を止めて付き合っていたし、わかりにくいながらも婚約者として尊重していると思っていた。
でも。
最近ちらほらとジュリアスに付き纏っている女がいる。彼女は確かどこかの子爵令嬢だったか。ジュリアスが彼女を見る目に特別な感情は見当たらなくても、表情が自分達といる時より数段柔らかいことに気づいていた。
アリスにそれとなく、子爵令嬢の件を伝えるも、特に興味を示すことはなく。アリスの興味はグレイスにあるらしい。
「だって、ケヴィンの愛してやまない婚約者なのでしょう。私だって愛でたいのよ。可愛らしい外見に、芯の強さがある彼女はとても興味深いもの。」
アリスの言葉に、別の意味が含まれているなんて思いもせず。アリスのことをいい奴だと思ってさえいた。
それが悪手だと、気づきもせず。
学年の異なるグレイスに会うには、偶然は装えない。昼休みを利用して、アリスと一緒にグレイスに会いに行くと、彼女は見たこともない男と笑いあっていた。
「あら、お友達ができたみたいね。いえ、秘密の恋人かしら。」
アリスの声は楽しそうで、何だかケヴィンは一方的に裏切られたかのように感じた。
「友人に決まってる。」
「そうね、貴方の婚約者である栄誉を失うような馬鹿な真似はしないわ。楽しそうだから、邪魔しちゃ失礼よ。……もし心配なら手配しましょうか。」
「いや、自分で何とかするよ。婚約者の友人ならば調べなくてはいけないだろう。」
「でも、もしグレイスが貴方が友人を調べていると気がついたら、辛くなるのではないかしら。調べたことはちゃんと貴方に教えてあげるから。安心なさい。」
アリスにそう言われると何だかそんな気もしてきた。グレイスにこれ以上嫌われるのは避けたい。
居ても立っても居られなくて、調べようとしたが、それによって本当に彼がグレイスの秘密の恋人なら、きっと立ち上がれないほどの衝撃を受けることも分かり切っていた。
「君が友人でよかった。」
アリスの微笑みはまるで女神のように見えた。
皆それぞれに思うところがあって、噂を否定していないのだが、ケヴィン・アクト公爵令息はそろそろ否定して回りたい感情を抱えていた。
アリスを秘密の恋人とすることで、自身の婚約者であるグレイスに対する風当たりを弱くしようと思っていたのに、肝心のグレイスと全く会えない現状にケヴィンは不満を抱いていた。
アリスの言う通り、彼女の友人達がグレイスを気にして話しかけてくれているが、どこから見ても親しくなっているようには見えない。
アリスはアリスで、ジュリアスに全く相手にされていないから意識させたい、と言う話だったのに、ジュリアスはどこ吹く風で、アリスとの仲が改善されているようには見えない。
もしかして、ジュリアスにも秘密の恋人とやらがいて、こちらに関心すら持っていないのではないか、と考えたが、それだとアリスが可哀想だから、黙っていた。
ジュリアスは、ケヴィンとアリスの噂を聞いても、全く何の反応も見せなかった。婚約者として、アリスを蔑ろにすることはないが、幼馴染であっても昔から自分達の前ではあまり笑顔を見せることはなかった。
「ジュリアスは何を考えているのか分かりにくいのよ。」
アリスがよく言う愚痴だ。でもジュリアスは昔からそうだった。それでもよく見てみると、彼が好きなもの、嫌いなものぐらいは理解できた。彼は亡くなった兄上が大好きで読書を好む、物静かな子供だった。アリスとはまるで正反対な性格だが、アリスに誘われると必ず手を止めて付き合っていたし、わかりにくいながらも婚約者として尊重していると思っていた。
でも。
最近ちらほらとジュリアスに付き纏っている女がいる。彼女は確かどこかの子爵令嬢だったか。ジュリアスが彼女を見る目に特別な感情は見当たらなくても、表情が自分達といる時より数段柔らかいことに気づいていた。
アリスにそれとなく、子爵令嬢の件を伝えるも、特に興味を示すことはなく。アリスの興味はグレイスにあるらしい。
「だって、ケヴィンの愛してやまない婚約者なのでしょう。私だって愛でたいのよ。可愛らしい外見に、芯の強さがある彼女はとても興味深いもの。」
アリスの言葉に、別の意味が含まれているなんて思いもせず。アリスのことをいい奴だと思ってさえいた。
それが悪手だと、気づきもせず。
学年の異なるグレイスに会うには、偶然は装えない。昼休みを利用して、アリスと一緒にグレイスに会いに行くと、彼女は見たこともない男と笑いあっていた。
「あら、お友達ができたみたいね。いえ、秘密の恋人かしら。」
アリスの声は楽しそうで、何だかケヴィンは一方的に裏切られたかのように感じた。
「友人に決まってる。」
「そうね、貴方の婚約者である栄誉を失うような馬鹿な真似はしないわ。楽しそうだから、邪魔しちゃ失礼よ。……もし心配なら手配しましょうか。」
「いや、自分で何とかするよ。婚約者の友人ならば調べなくてはいけないだろう。」
「でも、もしグレイスが貴方が友人を調べていると気がついたら、辛くなるのではないかしら。調べたことはちゃんと貴方に教えてあげるから。安心なさい。」
アリスにそう言われると何だかそんな気もしてきた。グレイスにこれ以上嫌われるのは避けたい。
居ても立っても居られなくて、調べようとしたが、それによって本当に彼がグレイスの秘密の恋人なら、きっと立ち上がれないほどの衝撃を受けることも分かり切っていた。
「君が友人でよかった。」
アリスの微笑みはまるで女神のように見えた。
17
あなたにおすすめの小説
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
殿下、そんなつもりではなかったんです!
橋本彩里(Ayari)
恋愛
常に金欠である侯爵家長女のリリエンに舞い込んできた仕事は、女性に興味を示さない第五皇子であるエルドレッドに興味を持たせること。
今まで送り込まれてきた女性もことごとく追い払ってきた難攻不落を相手にしたリリエンの秘策は思わぬ方向に転び……。
その気にさせた責任? そんなものは知りません!
イラストは友人絵師kouma.に描いてもらいました。
5話の短いお話です。
悪魔が泣いて逃げ出すほど不幸な私ですが、孤独な公爵様の花嫁になりました
ぜんだ 夕里
恋愛
「伴侶の記憶を食べる悪魔」に取り憑かれた公爵の元に嫁いできた男爵令嬢ビータ。婚約者は皆、記憶を奪われ逃げ出すという噂だが、彼女は平然としていた。なぜなら悪魔が彼女の記憶を食べようとした途端「まずい!ドブの味がする!」と逃げ出したから。
壮絶な過去を持つ令嬢と孤独な公爵の、少し変わった結婚生活が始まる。
【完結】無罪なのに断罪されたモブ令嬢ですが、神に物申したら上手くいった話
もわゆぬ
恋愛
この世は可笑しい。
本当にしたかも分からない罪で”悪役”が作り上げられ断罪される。
そんな世界にむしゃくしゃしながらも、何も出来ないで居たサラ。
しかし、平凡な自分も婚約者から突然婚約破棄をされる。
隣国へと逃亡したが、よく分からないこんな世界に怒りが収まらず神に一言物申してやろうと教会へと向かうのだった…
【短編です、物語7話+αで終わります】
退屈扱いされた私が、公爵様の教えで社交界を塗り替えるまで
有賀冬馬
恋愛
「お前は僕の隣に立つには足りない」――そう言い放たれた夜から、私の世界は壊れた。
辺境で侍女として働き始めた私は、公爵の教えで身だしなみも心も整えていく。
公爵は決して甘やかさない。だが、その公正さが私を変える力になった。
元婚約者の偽りは次々に暴かれ、私はもう泣かない。最後に私が選んだのは、自分を守ってくれた静かな人。
無能扱いされ、パーティーを追放されたOL、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
恋愛
かつて王都で働いていたOL・ミナ。
冒険者パーティーの後方支援として、管理と戦略を担当していた彼女は、仲間たちから「役立たず」「無能」と罵られ、あっけなく追放されてしまう。
居場所を失ったミナが辿り着いたのは、辺境の小さな村・フェルネ。
「もう、働かない」と決めた彼女は、静かな村で“何もしない暮らし”を始める。
けれど、彼女がほんの気まぐれに整理した倉庫が村の流通を変え、
適当に育てたハーブが市場で大人気になり、
「無能」だったはずのスキルが、いつの間にか村を豊かにしていく。
そんなある日、かつての仲間が訪ねてくる。
「戻ってきてくれ」――今さら何を言われても、もう遅い。
ミナは笑顔で答える。
「私はもう、ここで幸せなんです」
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件
水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」
結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。
出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。
愛を期待されないのなら、失望させることもない。
契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。
ただ「役に立ちたい」という一心だった。
――その瞬間。
冷酷騎士の情緒が崩壊した。
「君は、自分の価値を分かっていない」
開始一分で愛さない宣言は撤回。
無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。
以後、
寝室は強制統合
常時抱っこ移動
一秒ごとに更新される溺愛
妻を傷つける者には容赦なし宣言
甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。
さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――?
自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。
溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ
無表情な奴と結婚したくない?大丈夫ですよ、貴方の前だけですから
榎夜
恋愛
「スカーレット!貴様のような感情のない女となんて結婚できるか!婚約破棄だ!」
......そう言われましても、貴方が私をこうしたのでしょう?
まぁ、別に構いませんわ。
これからは好きにしてもいいですよね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる