笑わない妻を娶りました

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美しい令嬢は笑わない

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「キーキッキッキー、キッキー」

「あれは南国から取り寄せた珍しい鳥の声でして。いやはや、騒がしくて申し訳ない。」
汗を拭きながら苦笑いを浮かべるのはドゥーラ伯爵。

「ああ、それはミスティア嬢がお好きだという……是非見てみたいものですね。」
先日婚約したばかりの美しい令嬢を思い浮かべる。
「いやあ、結構大きな鳥でして、慣れるまで恐ろしいですよ。」

通された部屋でお茶を飲みながら彼女を待つ。今日は婚約して、二度目の顔合わせ。これから、我が伯爵家に彼女を招待する。

我がタイロン伯爵家は、所謂新興貴族で歴史などはほぼないに等しい。父から受け継いだ爵位があれど、幼少期からの他家との交流もあまりなく、この年まで婚約者もいなかった。

夜会でも特に目立つ容姿でもない自分は、ご令嬢方の注目を集めるでもなく、しかし、そろそろ結婚しなくてはなぁ、と思っていた。

爵位を継ぐ際には結婚したいと、学園時代の友人に溢していたことを彼は覚えてくれていたらしい。

クレンズ伯爵を継いだばかりの彼は、独り身で寂しい友人にとっておきの縁談を用意してくれた。

「俺の従姉妹達だが、二人とも見た目は美しい。中身も、多少残念な点はあるが、改善できないほどではない。俺はアリシアがいるから無理だが、その辺の馬の骨にやるよりお前が良い。一度どちらかでも会ってみてくれないか。」

友人のオリバーは、婚約者以外の女性には冷たいというのに、従姉妹は可愛いらしい。彼の婚約者のアリシア嬢も、可愛がっているという従姉妹達は、同じ伯爵位というのも烏滸がましいぐらいの名家ドゥーラ伯爵家の箱入り娘だった。

ドゥーラ伯爵令嬢は二人。笑わないために氷の女神と称される美しい令嬢、ミスティア嬢と、表情がコロコロ変わり、小動物のような愛らしさのリーゼ嬢。

笑わないミスティア嬢の横にニコニコしているリーゼ嬢。何とも対照的な二人のご令嬢。

私はそこで所謂一目惚れというものをしてしまった。氷の女神、ミスティア嬢に。

見た目は勿論だが、所作が段違いに美しい。私は年甲斐もなく、六歳も年下の女性に見惚れてしまった。後はもうなりふり構っていられない。こんな綺麗な人はこの機会を逃すと私の妻になどなって貰えないと、婚約をすぐさま申し込んだ。

ドゥーラ伯爵は、あまり欲のない人で、娘を使って出世しよう、などとは思わなかったらしい。名家だから必要ないのかもしれないが。

トントン拍子に、婚約は整い、私とミスティア嬢は晴れて婚約者となった。

婚約して一度目の顔合わせは、お茶を飲みながら互いの自己紹介をした。ミスティア嬢と二人で話をするのかと身構えていたが、リーゼ嬢も同席だった。

ほっとしたのも束の間、少し残念な気もした。

リーゼ嬢は表情が豊かで考えていることがすぐに顔に出る。対してミスティア嬢は何が彼女の心を動かすのかわからないほどに、無表情でいる。

対照的な二人だが、仲は良いらしく、二人でアイコンタクトで会話していたりすることもあって、それはそれは羨まし……微笑ましかった。

確かその時は話だけ聞いた南国の鳥は、ミスティア嬢の心を癒すものらしい。

彼女の心はその表情からは読み取れない。その鳥相手なら彼女の表情も何か変化したりするのだろうか。
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