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ヒロインガチャはまた外れ
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第一王子のサイモンは疲れていた。また今回のヒロインも外れだったからだ。正直、彼女に割く時間が勿体ない。影に頼んで、隣国に捨ててきてもらうことにした。
「大丈夫、大丈夫。隣国なら治安も良いし、王子はイケメンだし、またヒロインになれるよ。」
「いえ、隣国の第二王子は今、ヒロイン恐怖症のため、臥せっておいでです。」
「じゃあ、第一王子は……」
「幽閉されております。その前のヒロインを王子の婚約者が虐めたと、冤罪で国外追放致しまして、その罪で。」
そうだった。隣国から助けを求めて公爵家がそのまま引っ越してきて、サイモンの従兄弟と結婚したのだった。今では立派な公爵夫人である。
「まあ、王子だけじゃなく、高位貴族なら誰でも良いだろう。顔なんかより、贅沢できるかどうかが、彼女達の狙いどころだろう。」
「顔が良いなら、魔王とかも攻略対象になりますものね。自称聖女と言い出すヒロインもいますし。光魔法が使えたら聖女だとか。それなら私も、サイモン様も聖女になり得ますよ。」
「女ではないから、聖女は無理じゃないか?まあ、でもこの国では基本が光魔法だからな。闇と光と両方使えて初めて一人前だから、光だけの聖女なんて、呪いでもかけられてんのか、って話だよな。」
「そうですね。でもこれだけまともなヒロインが来ないとなると、流石にハードルは随分低くなるでしょうね。」
「だから、彼女も最初は、期待されたんだ。それが蓋を開けてみれば、勉強は出来ない、マナーも覚えない、注意すれば、酷いと泣き喚き、いじめだ、とまた喚く。うるさすぎて、何度永眠を勧めたか。
やれ、ドレスを買え、貢物をしろ、二人になりたい、作ったクッキーを食え、遊びにいこう、勉強なんてしなくていいんです、貴方は王子なんですから、誰よりも頑張ってますよ、って当たり前のことを言うんじゃねえ。王子だから、誰よりも頑張って、それでも足りないんだよ、正直お前に割く時間も惜しいんだ。本当に、こんなヒロインしかいないのか。ハズレしかない、ガチャとかあるのか?
あたり入ってる?」
「確か、女神様が仰るには、当たりは適度に入っているそうですよ?王子、ガチャ運ないんだー!と仰ってました。」
「何かバカにされている気がすんな。はあ、もういいや。引いてもまた外れるんだろ。じゃ、バカなこと考えずに婚約者との仲を暖めて行けば良い。」
「まあ、それはそうですね。殿下には、立派な婚約者がいらっしゃいますものね。」
侍従とバカな話をしながら、サイモンが伸びていると、扉をノックする音が響く。
「どうぞー。」
間延びした返事で答えると、婚約者が入ってきた。彼女は幼い頃から婚約者になっている、公爵令嬢のミリー。
「あら、休憩中でしたか?」
いつ見ても彼女は美しい。手を伸ばして、近くに座るように誘導する。侍従は雰囲気を察すると、さっさといなくなった。
「大丈夫、大丈夫。隣国なら治安も良いし、王子はイケメンだし、またヒロインになれるよ。」
「いえ、隣国の第二王子は今、ヒロイン恐怖症のため、臥せっておいでです。」
「じゃあ、第一王子は……」
「幽閉されております。その前のヒロインを王子の婚約者が虐めたと、冤罪で国外追放致しまして、その罪で。」
そうだった。隣国から助けを求めて公爵家がそのまま引っ越してきて、サイモンの従兄弟と結婚したのだった。今では立派な公爵夫人である。
「まあ、王子だけじゃなく、高位貴族なら誰でも良いだろう。顔なんかより、贅沢できるかどうかが、彼女達の狙いどころだろう。」
「顔が良いなら、魔王とかも攻略対象になりますものね。自称聖女と言い出すヒロインもいますし。光魔法が使えたら聖女だとか。それなら私も、サイモン様も聖女になり得ますよ。」
「女ではないから、聖女は無理じゃないか?まあ、でもこの国では基本が光魔法だからな。闇と光と両方使えて初めて一人前だから、光だけの聖女なんて、呪いでもかけられてんのか、って話だよな。」
「そうですね。でもこれだけまともなヒロインが来ないとなると、流石にハードルは随分低くなるでしょうね。」
「だから、彼女も最初は、期待されたんだ。それが蓋を開けてみれば、勉強は出来ない、マナーも覚えない、注意すれば、酷いと泣き喚き、いじめだ、とまた喚く。うるさすぎて、何度永眠を勧めたか。
やれ、ドレスを買え、貢物をしろ、二人になりたい、作ったクッキーを食え、遊びにいこう、勉強なんてしなくていいんです、貴方は王子なんですから、誰よりも頑張ってますよ、って当たり前のことを言うんじゃねえ。王子だから、誰よりも頑張って、それでも足りないんだよ、正直お前に割く時間も惜しいんだ。本当に、こんなヒロインしかいないのか。ハズレしかない、ガチャとかあるのか?
あたり入ってる?」
「確か、女神様が仰るには、当たりは適度に入っているそうですよ?王子、ガチャ運ないんだー!と仰ってました。」
「何かバカにされている気がすんな。はあ、もういいや。引いてもまた外れるんだろ。じゃ、バカなこと考えずに婚約者との仲を暖めて行けば良い。」
「まあ、それはそうですね。殿下には、立派な婚約者がいらっしゃいますものね。」
侍従とバカな話をしながら、サイモンが伸びていると、扉をノックする音が響く。
「どうぞー。」
間延びした返事で答えると、婚約者が入ってきた。彼女は幼い頃から婚約者になっている、公爵令嬢のミリー。
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