ヒロインガチャがまた外れました

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悪役ガチャは神引き

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この世界にもしも悪役令嬢ガチャなるものがあれば、間違いなくミリーはSSRであると言えよう。神引きと言うやつだ。

完璧な悪役令嬢がいると言うのに、どうしてヒロインだけ毎回あんな強烈な奴なんだ。

本当に、女神に騙されている訳ではあるまいな。

婚約者のミリーがSSRなら、そのまま結婚しても問題はない。だが、今のままでは、何となく自分がいつまでも成長できないような気がする。ミリーといると、自分は甘やかされて、何もできない男になってしまいそうなのだ。

それに、ミリーにどれだけ思われているのかも聞いてみたい、と言うのもある。淑女のミリーには、大切にされている、とは思えるものの、本当に愛されているかはよくわからない、と言うのが本音だ。

ミリーが悪役として、自分とヒロインの間に立ちはだかるなら、自分は、多少は愛されていることになるんじゃないだろうか。


ミリーに懸想しているのは自分だけではない。近衛騎士のマリウスも、多分そう。ただ彼は主君の婚約者を奪おうとは決して考えないから、今のところ害はないんだけど。

ヒロインガチャが当たったら、多分マリウスも一緒に魅了されるに違いない。そうしたら、彼に対するミリーの評価も下がり、自分と同じ立場に彼を突き落とすことができるだろう。

座ったミリーの膝の上に勝手に上がり込んで、膝枕をして貰う私を羨ましそうな目で見るマリウスに、心の中で舌を出しておく。


ミリーの表情は陰になって見えないが、いつもの聖母のような顔で微笑んでいるのだろう。

いや、きっとそうに違いない。ミリーの肉付きの良い膝に頭を預けていると、幸せでもうヒロインなんて、どうでも良くなるのだから、それで良いのかもしれない。

それにしても、ミリーとのイチャイチャを見せつけているというのに、奴は全く気を利かせずにただそこにいる。

それを咎めたところで「仕事ですので。」としか言わないのだろう。

いつもの侍従ですら空気を読んでいると言うのに。とはいえ、侍従はそればかりが理由ではなく、ミリーがいる時はあまり姿を現さない。

「公爵令嬢に会うなんて畏れ多いです。」と言うのがいつもの言い訳だが、それならサイモンは王子なのだから、おかしいだろう。

侍従はある日、女神様から授かったと、ヒロインガチャを持ってきた。

彼はヒロインを王子にあてがった手前、公爵令嬢に恐れを抱いているのだと納得した。

サイモンは女神に会ったことはない。なのに、侍従がヒロインガチャを持ってきて、それが女神様からだと言われたら、何故か無条件に信じてしまった。

実際王族なら何でも可能だと驕りがあったのだろう。それか好奇心に負けて、思考がおかしくなっていたのかもしれない。
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