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ジェレミア・ヒペリュアンの歪愛
しおりを挟む血の繋がらない、姉シエラはその存在こそが罪。
母上は彼女に特にそう言い聞かせてきた。
「貴女の存在意義は、ジェレミアの為にだけあります。」
「穢れた血を、きちんと役に立って償いなさい。」
「はい。お母様。」
必ず言葉少なに返事だけする姉の瞳の奥の反抗的な光に僕はいつもぞくりとした。
決められた道を歩む以外の選択肢のない人生。
期待された通りの僕でなくては誰にも愛されない。
だけど、姉だけは僕を、僕だけを愛してくれた。
母上の刷り込みの賜物でもあるのかもしれないが、姉にとっての家族は僕だけだった。
僕が望めばなんだってする姉は、可愛い。
僕だけのシエラでいる事だけが姉様の生き残る道だから勿論僕には逆らうことができないし、
純粋に、弟として愛してしまっているのでジェレミアを絶対に裏切らないし、逆らおうなんて考えないのだ。
僕にしか見せない安心したような笑顔、僕以外の者に時折みせる反抗的な視線。
たとえ姉が何を差し出しても、どこかに娶られようと、その心は僕しか愛さないはずだし長年刷り込んできた優先順位を突然変える事など不可能だろう。
けれど近頃…婚約者が出来たと言う。
父上や母上が適当にあてがったものでも、僕があてがったのでもなく初めて自ら望んで選んだと言うのだ。
何も知らない新人メイド達は「初恋」だと騒いでいたな…。
まぁ年頃の女なので恋愛に興味を持つ頃だろう、いっときの事だろうと思ったが何故か緩んだ表情の姉に腹が立った。
突き落としてやったのは僕だ。
まさか姉は僕だと思わないだろう。目撃者も勿論僕の騎士のみだ。
自分のこの皇宮での立場を思い出せば、頭が冷えるかと思ったのと、
リヒト・マッケンゼンにはあえて知らせずに、見舞いにも来ない婚約者に仕立て上げた。
まぁそれでなくてもリヒトは強引に婚約者になった皇女もとい姉を良く思っていないので心配はないだろうが、…一応だよ。
「ジェレミー、私よ。」
名乗らなくっても扉を叩く音、近づく足音で分かる。
「姉様。どうぞ入って。」
使用人達を全員下がらせると、皆は微笑ましげに僕に微笑んで快く下がる。
純粋に姉を慕う弟にでも見えているのだろう。
「失礼するわね…。」
「2日も寝ていたんだってね。もう大丈夫なの?」
「ええ、ありがとう…。大丈夫よ。」
「よかった!…姉様、おいで。」
僕はいつものようにベッドに腰掛けて隣に座るように指示する。
勿論、姉はまだ乙女である。
だが僕の為に存在する姉は僕の為になら何でも差し出すだろう。
初めて唇を奪ったのも僕だし、姉の事は隅々まで知っている。
僕にだめだと諭しながら、涙をボロボロと溢して僕の言う通りにする姉が愛おしくていつか止まらなくなりそうで怖い。
だが今日はいつもと違う、探るような、怯えたような瞳。
僕が全てのはずの姉からは確かに愛が感じるはずなのに、
いつもと何かが違う。
妙に不安感に駆られた。
「姉様…、そろそろ新しい事を覚えないとね。未来の旦那様の為にも…。」
僕がベルトに手をかけると、怯えたように僕の手を握りしめてくる。
「ジ、ジェレミーっ。こんな事をしなくても私は貴方が大切よ。」
「僕には姉様しかいないんだ。姉様もそうだろう?この皇宮でありのままを愛してくれるのはお互いだけ…」
「ええ…そうね。だからこんな確かめ方をしなくたってわかるでしょ?」
僕は苛立ったように、姉をベッドの下に突き落として跪かせる。
「ジェレミー、私は貴方を弟として愛してるわ。貴方だけが大切な私の家族よ。」
「…、」
「お願い、ジェレミーだめよ。」
「姉様、忘れたの?僕の為に生かされている事。」
頬に手を添えて、顎を掴んでこちらを向かせると姉は優しい表情で微笑んで膝をついたまま両手を精一杯のばして僕の頬を包み込んだ。
「ええ、貴方の姉として生きるわ。ずっと。」
僕はそのまま姉様の頭を抱えて、甘えるように抱きしめる。
姉様の胸元、首元、頸、頬に、鼻を埋めてくすぐったさに声を漏らす姉様にぞくりと身体が震えるのを感じながら、姉様の匂いに浸った。
「約束して、姉様は僕だけの姉様だ。」
「ええ。」
「どこにも行かないで。」
「……ええ。」
(ジェレミー、貴方が変わったのはどこからだった?貴方はなぜ私を殺しちゃったの?)
「姉様が僕から離れるなら、殺すから。」
「…っそう。」
小刻みに震える私を大切そうに抱えるジェレミーは満足そうでシエラは背筋に冷たいものが走った。
(いつから?私は馬鹿ね。ずっとおかしかったのよ。)
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