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婚約者でいる為には…
しおりを挟む「それって…グレンの事よね?」
「…。」
「見目が良いと言うなら貴方こそ、この国で一番セクシーな男性だと思うのだけれど…。」
「っ……なにを、」
「あっ…いえ、これに他意は無いの。ただその評判には共感したから….」
「ですが…、皇女殿下は俺に関心がない様に見えますが、」
「私はただ、余裕がないだけよ。多くの令嬢が貴方に想いを寄せているはずよ。」
シエラはふと思い出す、メリーと呼ばれたあの令嬢を。
前回の人生、最後にリヒトの隣に居たのは間違いなく彼女だ。
今はまだ時期が早いのか、去ろうとするシエラに興味を示しているがリヒトの大切な人は間違いなく彼女の筈なのだ。
「ならば、どうすれば…。」
「ただ、今の関係には満足しているわ。良い協力関係で居ましょう。」
「……。そうですか、」
(貴女の婚約者でいる為には、どうすればいいのだろう?)
リヒトにとってこのような感情も経験も初めてだった。
ただ、シエラに拒絶されるのが怖くて言葉を飲み込んだ。
自らにそのような感情があるのだと言う事に驚いたが、なにせ今はそんな事よりも少しでも彼女との関係を引き伸ばす方法を考えるのが先であった。
「…シエラ皇女。」
「なにかしら?」
「彼とはどういう関係で?」
「さっきも言った通り、友人よ。」
「…そうは見えませんでしたが。」
「貴方達もよ。気にしないでどの道解消する関係でしょう。」
「?」(貴方達も………メリーの事か?)
シエラにとっては、前回の人生からの想い人であったリヒトの言葉に心揺れるものの、シエラは命を脅かされた身。
身を滅ぼすかもしれないという時に、
婚約者であったシエラを簡単に見捨てたリヒトや、メリーに構っている時間は無いのだ。
シエラはジェレミーと円満なまま、皇后に打ち勝ち王宮を出る必要があった。
皇帝の病は軽く無い。今は無症状でも必ず数年の内に死ぬ筈なのだ。
(そうなれば事態は急変する。皇后の力を削ぎ取り駒では無くジェレミーの姉である必要がある….皇帝の庶子が見つかる前に立場を固めるのよ。)
険しい道を歩ませずに、ジェレミーを皇帝にすること。
皇后に手出しさせず、かつ彼女を弱らせる事。
それが唯一シエラの生き残る方法であるのだ。
(だから…こんな事に構っている暇はないの。)
「貴女の気の迷いに付き合えるほどの余裕はないのよ。貴方が嫉妬しようと、どう思おうと私は沢山の人の助けが必要なの。」
「なら、俺が…っ」
「不要よ。そう思うなら帰って可愛いお友達が余計なことをしないようにしっかりお相手して差し上げて下さい。私を煩わせないように。」
前世では気づかなかった。メリーの存在すら知らなかったのだから。
リヒトを無理矢理付き合わせている。や、
(まぁこれは前回では本当の事だけれど.。)
他の子息達を誑かしている癖に、リヒトを束縛している。
婚約者で居なければ、彼女の家門を潰すと脅している。
その他にも幼稚な噂は数え切れないほどであった。
シエラの評判が令嬢達に悪いのは彼女の所為であったのだ。
事実、権力にモノを言わせて得た婚約であったが前世でのシエラにリヒトを
束縛できる程の力は無かった。
それどころが、そっけなくあしらわれていた上に度重なる悪い噂や、ありもしない不義の噂にリヒトは段々とシエラへの嫌悪感を表していったのだ。
「どう言う意味でしょうか?」
「今のは悪かったわ。八つ当たりね、貴方には関係のない事です。」
「………なぜ俺を遠ざけるのですか?」
「では…貴方はなぜ私を遠ざけていたの?」
「!!」
「どう考えても私達は、何も知らなすぎるわ。…今日は帰るわ。お茶もお店もとても素敵だったわ。ありがとうございます。」
今のシエラには分かる。
リヒトを想うメリーの嫉妬と正義感からシエラは令嬢達の支持を失ったのだと。
そして、リヒトはそんなシエラへの噂やでっち上げを信じ、メリーや世間の言葉を信じた。
シエラの声も聞かず、シエラを信じなかったのだ。
(過去の話よ。今は良き友人。早くウェヌスへ戻らないと。仕事が山積みだわ。)
「シエラ皇女ッ…、」
「リンゼイ…馬車を。」
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