悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜

abang

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破棄の理由と動かぬ障害物

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「それは本当か?」


「はい……ひどく衰弱しているようで……リヒト様には言わないようにと言っていたようです」


「では何故……」



「メリー様の侍女殿が身を案じて訪ねて来られました」


「そうか」


「どうなさいますか?」



「今日はシエラ皇女と食事をする。明日訪ねよう」


「御意」



「シエラ皇女は?」


「準備の間、来賓室へとご案内しました」


「そうか、ありがとう」






食事の準備を確認しに行った侍従はふと思い出す。


「あれ?メリー様の侍女殿は何処へ行ったんだ?」




帰った筈のメリーの侍女はとある人物の来訪を聞いて探していた。


(メリー様の為よ。お二人は許嫁なのにこんなの悲しすぎるわ!)




「ここね」


メリーと一緒に通い慣れたこのマッケンゼン邸の一番豪華な来賓室。

悔しいがきっとシエラが居るならばここだろうと、扉の前の騎士達を隠れて確認する。




ここの使用人達は皆メリーに好意的だ。


(あの騎士なら顔見知りだし大丈夫ね)



「ソニーさん、リヒト様から頼まれてお手伝いに来ました」

「そんな話は聞いていませんが?」


「ここはリヒト様だけしか居ないので、女性の準備をお手伝いする侍女が居ないと仰られて、偶々訪ねた私に少しだけ手伝うようにと」


「…….そうでしたか。皇女殿下は中におられます。少しお待ち下さい」


騎士は中にいるメイドに説明すると、リヒトからの命令ならばとシエラに確認をとって中に通された。




「こんにちは、態々ごめんなさいね」


そう言って振り返ったシエラがあまりにも美しくて、その美貌だけで飲み込まれてしまいそうだった侍女は今しかない!と言わんばかりに声を上げた。




「し、シエラ皇女殿下。リヒト様からの命令だと言うのは嘘です。申し訳ありません……!どうしてもお伝えしたい事があって参りました!」



「「!!!」」

使用人達は驚いたような、怒ったような表情をしたが片手を上げて「大丈夫よ、続けて」と落ち着いた様子で言ったシエラによって制された。




「メリー様と、リヒトで様は許嫁です。これは、リヒト様のご両親の最期のお言葉でもありますっ!リヒト様もメリー様を大切にされてきました!どうかお二人を引き離さないで下さいっ!!!」


そう言って床に額をつけて言った侍女に少しだけ驚いたような表情をしてから「顔を上げて頂戴」と感情の読み取れない表情で微笑んだ。



「この事は誰も報告しないで。貴女ももう帰りなさい」



「シエラ皇女様!!お願いします!!!」



、さぁリヒトが来る前に帰って」


そう言って騎士に目配せをしたシエラの意を汲んだように騎士はメリーの侍女を送り出した。






「あの……皇女殿下、お気になさらないでください」


「いいのよ、準備を続けて」


(そういう事……だから前世では私が邪魔だったのね。じゃあどうして今は……)


黙り込んで何かを考えるシエラの様子に、使用人達は落ち込んだのだと勘違いし元気づけようとしたが「ありがとう、大丈夫だから」と申し訳なさそうに言ったシエラをすっかり好きになってしまったようだった。




「シエラ皇女、お迎えにあがりました」


「リヒトが来たようね。皆さっきの事は……」


「皆、承知しております」


「安心したわ。ここの使用人は皆素晴らしい人ばかりね、ありがとう」


美しく着飾ったシエラは、丁寧に準備をしてくれたマッケンゼン邸の使用人達に少しだけ嬉しそうに微笑んだ。


「「「「!!!!」」」」


「「「いってらっしゃいませ!!」」」


思わずそう言って声を揃えた同僚たちに驚きお互いに目を合わせた。


リヒトはそんな様子を少し意外そうに、けれども嬉しそうに見守ってからシエラをエスコートした。





「……」


「シエラ皇女……」



「ここの使用人たちは素晴らしい人ばかりね。大切にしてあげないとね」



裏切りの渦巻く皇宮とは違う、リヒトに一途に忠実に従事する彼らを羨ましくも素晴らしいと感じたのだった。


だから今回の件を伏せた事で自分のせいで責任を問われぬように、そう言ったのだ。


「……そうですか、光栄です」



「そういえば、何を話しかけたの?」



「そろそろ、正式な婚約発表と婚姻の時期を発表する頃です……」


「……あのね、」




「リヒト様!!!!大変です!!!」


駆け込んで来た執事と、血だらけのメイド。



「何があった!?」


「隣の領地の邸内で、メリー様が手首を切られてっ……一応応急処置は澄んだものの意識が………」




「ーっ!すまない!失礼する!!」



怒ったような、焦ったような表情でナイフとフォークを置いて部屋を出たリヒトはシエラを一度も見ないまま余裕のない様子で退出した。



「……御免なさい。沢山残してしまって、私も失礼するわ」



「皇女殿下……っ!どうかリヒト様がお戻りになるまでお待ち下さい」



「馬車を待たせているので、また改めて御礼のご連絡をするわ」



「かしこまりました……」



「美味しかったわ」




(仕事上の信頼関係が築けただけで死のリスクが下がるし良かったわ。やはりリヒトにとってあの子は守るべき存在なのこれが最善なのよ)





「シエラ皇女様!お帰りなさいませ」


「ええ、早速で申し訳ないけれどリンゼイ、帰ったらすぐに婚約解消の手続き書類を揃えてくれる?」



「!……はい!」


「それと、滞在中の貿易船テハードの主人を明日訪ねましょう」


「分かりました!グレン様にもお伝えしますか?」



「ええ、同行するように伝えて頂戴」











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