悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜

abang

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悲劇のヒロインメリー

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「リヒトは帰ってないの!?」


ヒステリックな声をあげて門の前で叫ぶメリー。



突然、門が開いてマッケンゼン邸に招き入れられるとメリーは満足そうに、「ほらね」と言わんばかりに偉そうに入って行く。



(やっぱり!リヒトも私と仲直りしたいのね!)


そんなメリーをさらにつけ上がらせるように、侍女達が部屋に入ってきてメリーの支度を始める。


「メリー様、お召し替えを。リヒト様がお待ちです」


メリーは疑う事なく支度を済ませると、ちょうど夕食の時間という事もあり食堂へと案内された。


(まぁ、こんな手の込んだ事してリヒトったら)


嬉々とした表情で席に着くと、思っていた雰囲気とは違うリヒトが後から来て席に着いた。

重々しい空気を変えようとメリーは口を開く。


「リヒト、今日は素敵なドレスをありがとう」


「ああ」


「ねぇ仲直り……したいのよね?」


「……話がある」


「ーっ!いやよ!別れないわ!!!」


「まだ何も言っていないだろう」


「だって、リヒト怒った顔をしているもの!」



「じゃあ、俺の両親まで持ち出して嘘ばかり吐いていた者に微笑んで愛を囁けというのか?愛してもいないのに」


「ーっシエラ皇女なの?」


「何がいいたい」


「シエラ皇女が消えてもまだ、愛しているのね!?」



「……俺にその資格はない」


リヒトはまるで、メリーなどその瞳に写っていないかのようだった。


癇癪を起こしたメリーは少し声を荒げて「リヒト!」と呼ぶが返ってきたのは冷ややかに細められたリヒトの視線だけだった。



「残念ながら、別れ話ではない」



「……なら、早く言ってよ」


「皇宮からの呼び出しに同行してほしい。……婚約者としてだ」


全くもって婚約者に向けるような視線ではないが、メリーはリヒトの口からという言葉が聞けるだけでも満足だった。




「ええ……分かったわ!」





皇宮へ登城する日まで、しっかりと準備した。

父や母に言って無理をして、未来のマッケンゼン公爵夫人に相応しいドレスや靴も用意したし全身ピカピカに磨き上げた。


淡い色味のシンプルかつ、キラキラと光るドレスは着る者を選ぶと反対されたが今日の自分ならば充分着こなせていると満足できた。


(シエラ皇女はいつもこのようなドレスを着ていたもの)


シエラに勝ろうと思えば思うほど、彼女を真似ている事に気付かないメリーはまるで似合って居ないドレスを自慢げに着て、いつもより薄い化粧を施した。


馬車が来ると、リヒトはメリーを見るなり眉を顰めて黙り込んだが、メリーはそれを「照れている」のだと受け取った。




「良く来てくれたね。リヒト、メリー嬢」




「皇帝陛下にご挨拶を申し上げます。光栄でございます陛下」


「あっ……皇帝陛下にご挨拶を申仕上げますっ」


メリーの家門の身分では余程の事がない限り直接謁見をすることなど無く、作法が分からずオロオロと辺りを見渡しながら慌てて礼をした。


その瞬間に、皇帝ジェレミアが鼻で笑ったのが分かって羞恥で顔が熱くなった。


「ほう……それはウェヌスのドレスだねメリー嬢」


「はい。近頃令嬢の間での流行でございます」


よく着ていると聞いて、僕も嬉しく思っていたんだけどまさか君も……光栄だなぁ」


クスクスと笑う侍女達もまた貴族令嬢であり、メリーがシエラの真似事をしてまでリヒトの隣にしがみついていると晒したようなものだった。


「ーっ別に憧れてる訳じゃ….」

「陛下」



「あぁ、すまないね。今日はリヒトと大切な約束があってね。良ければ一緖にどうだろうか?」


「え……いいんですか!?」


「あぁ、姉様はよくそうしていたよ」


けれどもメリーの思っているよりもそのスケジュールは過酷で小難しい話ばかりで疲れる上に、全くもって意味も分からない。


「それで、防衛についてだが兼ねてより問題視していた……」


(な、何言ってるの?意味わからないわ……)


リヒトだけでなく大臣や他の官僚達が揃って真剣な眼差しで悩む。


「メリー嬢はどう思う?」


「え"っ!?あ……えっと、その……」


「すみません、彼女には難しいようです」


「そうだったねいつも姉様は素晴らしい案を出してくれたから……リヒトの婚約者ならばと、つい


「そうですね、シエラ皇女はとてもご聡明でした!」

口々にそう称え始める皆と、呆れた様にメリーを流し見るリヒト。



「今日まで何を準備していたんだ?」

基礎的な政治の知識や、皇宮でリヒトと共に働く者達の名前、誰もが習ったはずの教養すらもままならないメリーが想像よりも遥かに出来が悪い事に驚いていた。


(これは陛下が、考えたちょっとした遊び。何も、普通の令嬢がシエラ皇女のように陛下の頭脳として振る舞える訳がないが……あまりに……)




「だって!手入れやドレス選びと準備に大変だったの…….」


「まぁまぁリヒト。会議が終わったらこの間の約束通り、面白いものを見せてあげる、メリー嬢も気を落とさずにおいで?」



ジェレミアはシエラの件でメリーに怒っていないのか?


メリーは一番恐れていたジェレミアが一番優しく見える事に驚きながらも、どこか狂気的な雰囲気を持つ、愛らしくも美しい皇帝の笑顔に思わず見惚れた。

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