元カレの今カノは聖女様

abang

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一度くらい望んだって

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「セオドア、今年の武闘大会に出席するそうだな」


「はい、陛下」


「そうか」


「陛下っ……セオドア卿も今年は参加されるのですか?」




「そうだな?セオドア」



「ええ、国王陛下、王妃殿下。今年は参加の意思を表明致しました」



「けれど、セオドア卿……貴方はルシアンのように剣や魔法の稽古をしていないじゃない、怪我でもしたらお母上に顔向けできないわ」



「大丈夫です、殿下。母も父も賛同してくれています」



「ほう、セオドア。珍しいな……何か欲しいものでもあるのか?」



「そうですね、


「せ、セオドア卿!貴方の立ち位置は常に危うい場所に居るという事を忘れないように。。国の為にです」




「王妃殿下、心得ております。俺も、父も……母もです」



「リリーシャは元気か?」


「はい。母も陛下を気にしておりました」



「陛下、やっぱりセオドア卿には今回は……」



「リリーシャは我が妹だ、無謀な野心などは持たぬ。何を案じているんだ王妃は」


「……いえ、何もありませんわ。少しセオドア卿が心配になっただけです」



「そうか。セオドア……本当にそれだけか?」



セオドアの母は王妹であるリリーシャであった。

その為に、ルシアンを追い越さないように程々の成績を保つこと王家の血を引くものとして目立ちすぎない事を心がけざるを得なかった。


リリーシャと国王は、腹違いの兄妹だった。

妾腹である母はその生い立ちから、王宮での権力争いに疲弊し心優しい父と出会うまでは心を閉ざしていたのだ。

それに無欲なリリーシャと国王の関係は良好だった。

けれども、皆が同じ目線とは限らない。

王妃がセオドアを警戒するように、いつ誰がセオドアを担ぎ上げても可笑しくはない。

そうならぬように、より良い教育をし、より良い妻を娶れるようにルシアンを必死で育てた王妃はセオドアが活躍して権力を持つことを恐れていた。


(ルシアンは少し頼りない所がある。けれどいい王になる筈よ)


セオドアはあえて、ルシアンの比較対象にならぬようにいい加減に振る舞っているが消して無能ではないし、頭がキレる方だった。



なので王妃は国王の目を盗んではセオドアを牽制したが、本人はのらりくらりとかわすだけで特に今まで反抗もした事がなかった。


(なのに、今になって武闘大会に出るなんて!)


今までは、ソードマスターを公務を作って遠ざけたりとあの手この手を使ってルシアンより強い者を排除してきたが今回、セオドアが出るとなるとその力は未知数、不安要素が多すぎるのだ。


(万が一、セオドアがルシアンに勝ってしまったら?)


「欲しくなったんです、ただそれだけです他意はありません」


「そうか、もう行って良い」


「セオドア卿!」


「王妃殿下、わかっています。ただチャンスをくれるだけで良いのです。それに……俺よりも警戒すべき者が居ると思いますが?」


「ーっ!」



「カミル卿はソードマスターであり、バロウズ公爵家の嫡男です。妹君の名誉挽回の為に尽力するでしょう。……それでは、失礼致します」




「今年は面白くなりそうだな」


「へ、陛下!ルシアンが負けるかもしれないのですよ!」


「それも経験だ。些か甘く育てすぎた……」



「あなたっ!」




扉の中から聞こえてくる王妃の上擦った声に、セオドアは少しだけ口元を緩めた。


(一度くらい、願ったっていいだろ)


「もう、ルシアンの婚約者じゃないしね……」






「あれ?ティアードじゃないか。それにセリエも」


「まぁ!セオドア!近ごろ見ないから寂しかったのよ……っ」


「ティアードが献身的に尽くしているように見えるが?」


「セオドア!またふざけるんじゃない。セリエは本気で……」


セリエはティアードに密着させていた身を離して、セオドアの手を握って自らの頬に当てた。


「セリエっ」


「どうしたんだ、セリエ?」


「私、貴方が心配なのセオドア……何かよからぬものに惑わされて変わってしまった気がして……聖女の勘かしら……」


「へぇ、相変わらずセリエは可愛いね……嫉妬かな?」


儚げな表情だが、その瞳の奥はまるでセオドアを誘惑するように燃えているセリエの様子と遊び人であるセオドアの余裕のある危なっかしい様子を見て頬を染めてオロオロするティアードはその場では全くおいてけぼりだった。


純粋で対応しきれないれだろうティアードを見越しての行動だと言うことも、今のセオドアには分かる。


揶揄うように、けしかけるように言ったセオドアの言葉に少しだけムッとしたような表情でセリエはチラリとティアードの反応を確認した後に、ぽっと顔を赤くして反論しながら両手で顔を覆ってセオドアに背を向けた。



「そんな!聖女ともあろう者がそのようなこと……っ」


「そうだぞセオドア、セリエは純粋なんだあまり揶揄うな」


「そ、そうよ……っけれどちょっとだけ、貴方を取られてしまったような気がして寂しいわセオドア」


(どういう意味だ?セリエはセオドアが好きなのか?)


(へぇ、上手いもんだね)



「これは、告白かな?ティアード……」

「え、あ……いや……何故私に」


セリエはハッとしたように「違うわ……」としおらしく反論したがセオドアにはそれが「しまった、やり過ぎた」と感じているようにも見えた。


「聖女は行動が制限されてるでしょ……貴方達だけが私の友人なの。だから悪い人に騙されたり、誘惑されていたらと思うと不安だったのよ……私には祈ることしかできないから……」


「セリエ……っセオドアは大丈夫だ、こう見えてちゃんとしてる」


感動したようにセリエに寄り添い、涙目のセリエにそう言い聞かせるティアードにセリエが口元を緩めた気がした。



「そうだなぁ、俺は悪い女も好きだよ」


じゃあね、と手をひらひらと振って去るセオドアの言葉の真意が分からずにセリエはただ不安だった。



(悪い女とは、誰のこと?)










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