元カレの今カノは聖女様

abang

文字の大きさ
31 / 56

王太子妃になるのは……

しおりを挟む


「父上、納得できません!」


ルシアンは酷く狼狽した様子で国王に食ってかかる。

不安げにルシアンを見守っていた王妃はとうとう耐えきれずに口を挟んだ。


「ルシアン、貴方にはセリエが居るでしょう。イブリアの事は忘れなさい。そもそも貴方はセリエを愛しているのではないの?」


「それは……分かりません、セリエは清らかで癒してくれる上に放っておけない女性ですが……離れてみて、私はイブリアを愛していると気付きました。どうか、私に彼女を取り戻すチャンスを下さい」



「ルシアン……」

王妃は当惑した。

ルシアンの本音を聞いた以上、蔑ろには出来ないがイブリアは国にとってたった一人の聖女を虐げた性悪なのだから。

自分は、貴族の家に生まれた女として頂点に立つ為に茨の道を選んできた。

汚い手も使ったし、持てる権力は全て手に入れて活用した。

けれども、だからこそ息子であるルシアンには自分みたいな鬼のような花嫁を娶らせたくはないのだ。

(王になる事、幸せになること。自分の子には茨の道を歩ませない為に私が手を汚してきた。だからイブリアは駄目よ)


ルシアンがそれを望むかどうかは関係なかった。

子を愛する母の行き過ぎた想いだった。



そして、国王もまた父として、国王としてルシアンに対する想いを持っていた。


王であるが故に、息子として構ってやれる暇は少なかった。

けれどもちゃんと愛していた。

王妃が過保護になる気持ちもある程度理解はしていた。

(だが少し、甘やかし過ぎているようだな)


国王はルシアンに次期国王として、厳しい言葉をかけてきたつもりだった。

けれど、その都度ルシアンが選ぶのは王妃の言葉だったのだろう。


(たまにしか話さん父親の言葉などそんなものか。だが……)


「チャンスならもう充分にやった筈だ、ルシアン」


「そうよ、陛下……イブリアはルシアンを愛していたわ。きっと話せば喜んで側妃に……」


「まだ分からんのか!!!」

「「!!」」


「バロウズは馬鹿な王家の為にかなりの譲歩をしている。お前達の我儘にこれ以上イブリアの人生を巻き込むべきではない!!」



「父上っ……」

「陛下、ルシアンは息子じゃないですか……」


「だからこそ、多くの者に迷惑をかけてしまった……イブリアとルシアンのはこちらの有責で早急に公表し、シュテルン侯爵とイブリアとの婚約を認める。……これは決定事項だ」



ルシアンは虚脱感のまま、その場に崩れ落ちた。


「執務に戻るんだルシアン、イブリア無しでも王位に相応しいと皆に認められる王太子になれ」


「それは……どういう意味ですか?」


まるで、イブリア無しでは自分は未熟だと言われているような気分だった。


「まだ気づいていなかったのか?」

「え……」


「お前を補う為に、彼女を選んだ。切磋琢磨しお互いを高めていけるようにとも願っていた。だが、お前はどうだ?」


「私は、必死で王太子として努力してきました!」


「剣をふり、友と遊び、他の女にうつつを抜かし、いつも尻拭いはイブリアがしていただろう?お前を支持する貴族達の殆どはイブリアの存在に後押しされた者達だ」


ルシアンは絶望的な気分だった。

何より辛かったのは父の言葉にどれも反論できない事だった。

自分が王太子である為に努力をしていたのは、自分ではなかった。


悔しくて、情けなくて涙が出た。


「ああ、それと……聖女とは交際しているのか?」


「……はい」


「近頃は良からぬ噂も多い。交際しているのなら腹をきめろ」


「……」


「王妃……聖女を支持しているのは王妃らしいな?」


「そんな大それた事じゃありませんわ」


「ルシアンの自由恋愛についての方針は認めるが……もしもの時はちゃんと責任を取る覚悟はあるのだろう」



「へっ……」


「王太子妃候補の教育は王妃の仕事でもあるんだ、しっかり頼むぞ」


「……はい、陛下」

王妃の肩に重い何かと、不安が乗りかかっている気がした。



あの子セリエは大丈夫かしら……)


ルシアンとイブリアの婚約の解消が公式に発表されたのはほんの数日の間でだった。

そしてうまく滑り込む形でルシアンの隣に並んだセリエだったが、まだ正式な婚約者としては認められず……


相変わらずの王太子妃教育に疲弊していた。


「セリエ、貴方はルシアンの隣に相応しい女性になって頂戴。イブリアに負けてはダメですよ」


「イブリア様……はい、王妃様」


王太子妃教育が始まってみると、どうみてもセリエがイブリアに劣るのは一目瞭然だった。

それでも王妃はを選んだ自分を失敗だったとは思いたくなかった。


「優しいだけではダメよ、ちゃんと学びなさいセリエ」


「はい……」


セリエもまた、もうセオドア達に希望は持てない為により良い男と結婚するにはルシアンと離れるわけにはいかなかった。




(他の雑魚じゃ満足できない……王太子妃にならないと!)











しおりを挟む
感想 209

あなたにおすすめの小説

「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?

綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。 相手はとある貴族のご令嬢。 確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。 別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。 何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる

冬野月子
恋愛
「私は確かに19歳で死んだの」 謎の声に導かれ馬車の事故から兄弟を守った10歳のヴェロニカは、その時に負った傷痕を理由に王太子から婚約破棄される。 けれど彼女には嫉妬から破滅し短い生涯を終えた前世の記憶があった。 なぜか死に戻ったヴェロニカは前世での過ちを繰り返さないことを望むが、婚約破棄したはずの王太子が積極的に親しくなろうとしてくる。 そして学校で再会した、馬車の事故で助けた少年は、前世で不幸な死に方をした青年だった。 恋や友情すら知らなかったヴェロニカが、前世では関わることのなかった人々との出会いや関わりの中で新たな道を進んでいく中、前世に嫉妬で殺そうとまでしたアリサが入学してきた。

私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。 ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。 しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。 もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが… そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。 “側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ” 死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。 向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。 深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは… ※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。 他サイトでも同時投稿しています。 どうぞよろしくお願いしますm(__)m

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

もう何も奪わせない。私が悪役令嬢になったとしても。

パリパリかぷちーの
恋愛
侯爵令嬢エレノアは、長年の婚約者であった第一王子エドワードから、公衆の面前で突然婚約破棄を言い渡される。エドワードが選んだのは、エレノアが妹のように可愛がっていた隣国の王女リリアンだった。 全てを失い絶望したエレノアは、この婚約破棄によって実家であるヴァルガス侯爵家までもが王家から冷遇され、窮地に立たされたことを知る。

私はあなたの正妻にはなりません。どうぞ愛する人とお幸せに。

火野村志紀
恋愛
王家の血を引くラクール公爵家。両家の取り決めにより、男爵令嬢のアリシアは、ラクール公爵子息のダミアンと婚約した。 しかし、この国では一夫多妻制が認められている。ある伯爵令嬢に一目惚れしたダミアンは、彼女とも結婚すると言い出した。公爵の忠告に聞く耳を持たず、ダミアンは伯爵令嬢を正妻として迎える。そしてアリシアは、側室という扱いを受けることになった。 数年後、公爵が病で亡くなり、生前書き残していた遺言書が開封された。そこに書かれていたのは、ダミアンにとって信じられない内容だった。

逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?

魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。 彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。 国外追放の系に処された。 そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。 新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。 しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。 夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。 ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。 そして学校を卒業したら大陸中を巡る! そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、 鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……? 「君を愛している」 一体なにがどうなってるの!?

処理中です...