離婚が決まった日に惚れ薬を飲んでしまった旦那様

しあ

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8、この状況は予想外です。

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「ギ、ギルベルタさ…」
「体調が悪いのに何故夜に出歩いているんだ」
「え…?」


どうして私が体調を崩している事が分かったのかしら…。


「暖かくなってきたとはいえ、夜はまだ冷えるんだ。そんな薄着で出歩いて不調が悪化したらどうするんだ」
「すぐ戻るつもりでしたので、問題ないかと思いまして…」


どうして私は責められているのかしら…。
そして私も何故か言い訳のように言ってしまうし、この状況は一体どういうことなのかしら…。


どうしてヒューバート様がここにいらっしゃるのかも分からないし、私を気にかけて下さる理由も分からないわ。
私の言葉に機嫌を損ねたように眉を寄せられるけど、私の方こそ困惑で眉を寄せたくなるわ。


それよりも、意図しなかったとしても、この抱きしめられるような格好から早く解放されたいわ。


満月を見て少しだけヒューバート様への気持ちが薄れそうになったのに、こんな至近距離でヒューバート様を見てしまえば、治まっていた胸の高鳴りが再発してしまいそうになるわ。


「あの、そろそろお離し下さい」
「……して」


体制を整えてヒューバート様の胸を押し返そうとすると、ヒューバート様が何かを呟かれた。
押し殺したように言われた言葉は小さくて聞き取れず、ヒューバート様の顔をもう一度しっかりと見る。
そうすれば、ヒューバート様の表情が1層険しくなる。


「どうしてすぐに家に帰らなかった!探しただろうが!」


探す…?
どうしてヒューバート様が離婚した私の事を探す必要があったのかしら?


「もしかして、私が処理した書類になにか不備でもあったのでしょうか?」


ヒューバート様が私の事をわざわざ探したというのなら、おそらく私が仕事で処理した書類に不備があったのだわ。
手紙ではなく直接会いに来て下さったのなら、きっと緊急性の高いものでしょうね。


ヒューバート様の負担を減らすことが出来ればと書類仕事をお手伝いさせて頂いていたのに、最後の最後でミスをするなんて、本当に情けないわ。
こんなんだから、ヒューバート様は私の事を見てくださろうとはしなかったのかも知れないわ。


「一体どちらの書類でしょうか」
「書類だと?俺が書類ごときのためにここまで君を探しに来るわけがないだろ。それに何かあれば俺が処理すれば済むことだ」


それは本当にその通りですわ…。


「でしたら、なんの御用でしょうか?」
「わからないのか?」


そう言われましても、思い付く理由が他にないもの。
ヒューバート様なら、離婚した後は私の存在すら忘れて普段の生活を送っていそうですのに、何故わざわざ探されていたのか…皆目検討がつかないわ。


でも、余程の事があったからこうして探しに来られたのでしょうし。
一体理由はなんなのでしょうか…?


「わからないのならそれでいい」
「…申し訳ありません」


それでいいと言う割に、端正な顔を顰めて不機嫌そうな表情をされているので萎縮してしまう。
離婚してまで私はヒューバート様の険しい表情しか見ることが出来ないのね…。
惚れ薬を飲んだヒューバート様と過ごせたのは、本当に奇跡のような日々だったのね。


「とりあえず、暖かい場所に移動するぞ。身体も随分冷えているようだしな」
「ひゃっ!」


突然横抱きにされて変な声が出る。
惚れ薬が効いていた時はよくされていたけど、今は正気なはずなので困惑してしまう。


「あの!歩けますから下ろしてください!」
「前より軽くなったか…?ちゃんと食べているのか?」
「はい」


本当は食べられていないけど、ヒューバート様もそのうち帰られるだろうし、余計な事は知られなくていい。


「そうか。なら、何か食べさせないとな」
「いえ、十分に摂っているので必要ありませんわ」


私の嘘は簡単にバレてしまったようだけど、食事なんて用意して頂く必要なんてないわ。
むしろ、最近では物によって匂いだけで吐き気を催すから、余計に食事なんて用意してほしくない。


諦めるつもりではあるけど、好きな人の前で醜態を晒すなんて耐えられないもの。


「どこかに宿を取っているんだろ。案内してくれ」


案内しなければ横抱きのまま離してくれなかったので、仕方なく借りている宿へと案内した。
その間、私の事を1度も降ろすことなく。
それどころか、部屋に入るまで1度も降ろされることはなかった。


そして今、私達は自室とは比べ物にならないほど狭い部屋で並んで立っている。


何故かと言うと、ヒューバート様もこの宿で部屋を借りようとしたところ、満室で空きがなく、仕方なく別の宿を取ろうとしたけど、どれも満室で泊まることが出来なかったから。


部屋を借りることが出来なければ、ヒューバート様は野宿をするしかなくなる。
自分の好きな人がそんな状況になるのなら、もう一人分払って私の部屋を一緒に使わせて欲しいと店主にお願いして、なんとかヒューバート様も同じ部屋を使わせてもらえるようになった。


まではいいのだけど。
この部屋にはベッドが1つ。
それも、キングサイズなんて物ではもちろんなく、シングルサイズの。



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