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14、もう辛いのです。
しおりを挟む「何処の馬の骨ともわからないやつを、俺の子供の父親になんてさせられるわけが無いだろ!」
「………では、お腹の子が産まれましたら、ギルベルタ様にお渡しします」
「なんだと…?」
今までの言動から見て、きっとヒューバート様は子供をずっと望まれていたのでしょう。
だから、惚れ薬が切れたのに私に優しく接してくれているのね。
私が、ヒューバート様の子供を妊娠しているから。
私に優しく接するほど子供のことを大切にして下さるのなら、どんな人がこの子の父親になろうと絶対に納得出来ないはず。
それなら…とても悲しいけど、この子をヒューバート様に渡すしかないわ。
「ギルベルタ様なら、きっとこの子のいい父親になってくださるはずです。なので、この子をギルベルタ様の子にしてあげてください」
「子供を俺の所へ置いていくなら、この子の母親はどうするんだ」
「ギルベルタ様の新しい奥様をこの子の母親にして下さい」
産まれてくる子を他の人に育てられるなんて想像するだけでも涙が出そうになる。
だけど、私とヒューバート様はもう一緒にはいられない。だから、こうするしかないわ。
せめて、新しい奥様がこの子を愛してくれることを祈るしかないわ。
「俺に子供の母親を探させ、君は好きな奴と結婚する気か」
そんなこと、するはずがない。
出来ることなら、子供を近くで見ていたいし、愛を沢山注ぎたい。
それに、私の中でヒューバート様の存在が大き過ぎて、どんな人だろうと結婚なんて出来るわけがない。
例え、本心から愛された事がなかったとしても、私はヒューバート様のことが好きで好きで仕方ないのだから。
どれだけヒューバート様への気持ちを捨てようとしても、全く捨てられなかったこの気持ちのせいで、今もこんなにも辛くて仕方がない。
子供が出来たからって、どうして今更優しくするの。
そんな事をされれば、ヒューバート様へのこの気持ちを捨てる事が出来ないじゃない。
どうして出ていこうとすれば、引き止めるような事を言うの。
今まで、私がどこへ行こうと行先すら聞いてこなかったのに。
子供に両親が必要なのはわかっているわよ。
だけど、私達はもう離婚していて、私はもう、ヒューバート様にどう想われているのかを期待するのが怖くて、辛くて、もう一緒になんて居たくない…。
もう、勝手に期待して傷つきたくなんてないの。
だから、もう何も言わずに私を実家に帰らせてほしい。
なんだかヒューバート様や子供のことを考えると、感情がぐちゃぐちゃになって、涙も出てきそうになる。
「子供が産まれましたら、すぐに連絡致しますので…。それでは失礼致します」
これ以上声を出せば本当に涙が出てきそうなので、ヒューバート様に背を向け、ここへ来た時に持っていた小さな鞄を持って急いで外へ出ていく。
早く、家に帰りたい。
家に帰って、もう何も考えたくない。
ヒューバート様が惚れ薬を飲んで私に惚れていた期間がなければ、きっとここまでヒューバート様と距離を取りたいとは思わなかったはず。
どうして、離婚すると決まってからあんな事が起きたの。
ヒューバート様に少しでも愛された記憶があれば、また愛してもらえるかもしれないと変に期待してしまうじゃない。
惚れ薬が切れてから私と会おうともしなかったのに、どうしてあの時私を探しに来たの。
もう一度会わなければ、子供の存在を知られなければ、またこうやって一緒に過ごす必要もなかったのに。
一緒にいてヒューバート様の言動に心が揺れることもなかったのに。
もっと一緒に居たいなんて、望むこともなかったのに!
下唇を噛みながら、必死に涙を堪えながら足を動かしていると、突然手首が掴まれる。
「っ、」
「医者から走るなと言われただろ!どうしてそんなにもすぐに俺から逃げようとするんだ!」
涙を堪えるのに必死で、ヒューバート様に言葉を返す事が出来ない。
「そんなにも…俺の事が嫌いなのか」
そんなこと、あるはずがないわ。
愛しているからこそ、貴方から離れたいの。
少し気落ちした声のヒューバート様に、心の中で返事をする。
だけど、そんな言葉は届くわけもなく、ヒューバート様は辛そうに言葉を紡ぐ。
「俺は酷い伴侶だったと自覚している…」
そんなことはありません。
ヒューバート様は女性嫌いなのに、公の場ではしっかりとエスコートして下さいましたし、絡まれている私を何度もさりげなく助けてくださったではないですか。
それに子作りの際も、私に負担がないように細心の注意を払って優しくして下さったことは知っています。
そんなヒューバート様が、ひどい伴侶な訳がありません。
酷いのは、自分が傷つきたくないからと言って、自分勝手に離婚して欲しいと言った私です。
なので、懺悔するようにそんな事を言わないでください。ヒューバート様は何も悪くないのですから。
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