離婚が決まった日に惚れ薬を飲んでしまった旦那様

しあ

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23、満月の日

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「んん…」
「目が覚めたのか。眠いならまだ寝ていてもいいんだぞ」


目を覚ませば、少し動けば鼻先が触れてしまいそうなほど近くで私の寝顔を見ていたヒューバート様が優しく笑いかけてくれる。


「いえ、もうそろそろ満月が出る頃ですし、早く湖へ向かいましょう」


ヒューバート様と再び夫婦になってから時が流れ、臨月を迎えた私はヒューバート様にわがままを言って、私達が再会した湖へと満月を見に来ていた。


「そんなに慌てなくても月は逃げない。だからゆっくり歩いてくれ。それと、夜は少し冷えるから上着を着てくれ」
「少し見に行くだけですのに…」
「ダメだ。医者からも冷やすなと言われただろ。上着を着るのが嫌なら、俺が君を布団で巻いて抱えていこうか?」
「いえ、上着を着ます」


冗談っぽく言っているけど、私が上着を着なければ本当に抱えていかれそうなので大人しく言葉に従う。


再婚してからのヒューバート様は本当に過保護だ。
私が病弱なお姫様か何かかと思っているのか、少し外を歩こうとしただけで上着を着ろと言ったり、転ぶと危ないから手を繋げと手を握ってきたりする様になった。


そうされるのが嫌ということでは決してないけれど、過保護過ぎて困ってしまう。
そこまで心配されなくても1人で動けるのに…。


「さぁ、行くか」


過保護過ぎるのは困ってしまうけれど、こうやって手を伸ばされると自然に繋ぎ返してしまうのだから、ヒューバート様の過保護が治ることがない。


「今日は晴れているからよく見えるはずだ」
「そうだといいですね」


繋いだ手に引かれて湖の近くへ行けば、反射した満月によって周囲が幻想的な風景になっている。


見るのは2度目だけど、本当に綺麗な光景だわ。


「ロズと見ているからか、いつもより輝いて見えるな」
「なにを仰って………っ、!」
「どうしたロズ!?」


突然腹部に痛みが走る。
痛みで前方に倒れそうになると、ヒューバ様の凛々しい腕に受け止められる。


「くっ、うぅ…」
「痛むのか!今すぐ医者に見てもらうぞ」


痛みに耐える私をヒューバート様は横抱きにして宿へと走り出す。
走り出す前に護衛に医者を呼ぶように指示していたので、宿に着いた頃には既にお医者様が部屋で待たれていた。


お腹を抱える私を見て、お医者が慌ただしく動き出す。


「産気づかれています!今すぐ出産の準備を致しますので、奥様以外は一旦外に出て下さい!」


お医者様がそう言ってヒューバート様達を部屋から追い出した。
次にヒューバート様の顔を見たのは、疲弊しきった私が産まれたての我が子を抱きしめた時だった。


部屋に入ってきた時のヒューバート様は、私と赤ちゃんを見て感極まって泣きそうになっていた。
ゆっくりと私達に近付き、労うように私の額にキスをしてくれる。


「俺達の子を産んでくれてありがとう。生きていてくれて、ありがとう」


出産で命を落とすことは珍しことでは無いので、きっとヒューバート様はその事も心配されていたのでしょう。
よかった、と言いながら頭を撫でてくれる。


「君に似て可愛い子だ。こんなにも可愛い子の親になれるなんて、俺は幸せ者だな」
「この子の名前はどうしましょうか?」
「そうだな…」


ヒューバート様は少し考えた後、口を開くーーー。



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