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24、恋のキューピット。
しおりを挟む「ハンス!エリーンとルナを探してくれる?もうすぐ昼食なのに見つからないの」
「わかりました。ライオットとブルームにも声をかけて一緒に探してみますね」
「ありがとう、ハンス」
満月の日に産まれた子は10歳になり、その後に生まれた子が5人。
今ハンスに探してもらっているエリーンとルナ、その2人の兄であるライオットとブルーム。
そして、今私が腕に抱いている生後5ヶ月のガレス。
結婚した当初は、まさかこんなにも子宝に恵まれるなんて思ってもみなかった。
1度は離婚をしたというのに、人生って何が起こるか本当に分からないものね。
「お母様ー!エリーンとルナが見つかりました!」
「僕が見つけたんだよ!」
「違うよ、僕が見つけたの!」
「ライオット、ブルーム、喧嘩しないで。3人とも2人を見つけてきてくれてありがとう。とても助かったわ」
そう言って笑いかければ、3人は満足そうにニカッと笑う。
「なんだ、全員ここにいたのか」
「あ、お父様だ!」
「お父様おしごとおわったー?」
「さっき庭でお花みつけたよ!みてー!」
昼食を摂るために執務室から出てきたヒューバート様に向かって子供達が嬉しそうに駆け寄っていく。
その子供達を受け止め、幼いエリーンとルナを抱き上げて私の方へと歩いてくる。
「お仕事お疲れ様です」
「ああ、ありがとう。そういえば、今日珍しく父上が来てプレゼントだとか言ってこれを渡されたんだ」
「なんでしょうか?」
ヒューバート様の片手で持てる程の箱を見て首を傾げる。
お義父様は現在ヒューバート様に仕事を全て任せて隠居されているのに、突然どうしたのかしら?
今日は特にお祝いごとの日でもないので余計に何故来られたのかが分からない。
「とりあえず、昼食後にでも開けてみるか」
「そうですね」
昼食が終わった後に、子供達を乳母任せてお義父様から頂いた箱を開けてみる。
そこには、ピンクの液体が入った小瓶がメモと共に入れられていた。
「これは一体なんでしょうか?」
「これは…」
「どうされたのですか?」
旦那様は何故だか小瓶を見て眉を顰める。
「メモにはなんと書いているのでしょうか」
『私のお陰で夫婦仲が良くなっただろ。感謝しろよこのバカ息子。良い奥さんをもらっておいて悲しませるようなことはもう二度とするな。あの日からちょうど10年たったのだから、もう一度あの時のことを忘れないようにこれでも飲んでおけ。そしてもっと孫を見せに来い』
「犯人は父上だったのか…」
メモを見てヒューバート様が片手で顔を覆いながら天を仰ぐ。
「あの、この小瓶に心当たりがあるのですか?」
「心当たりがあるもなにも、それは俺が10年前に飲んだ惚れ薬だ」
「はい?」
惚れ薬って、離婚が決まった日の夜に飲まれたあれのこと?
「あの夜、父上にロズと話をしろと言われた時
それと同じものを渡されたんだ。紅茶が上手くなるから、必ずどちらのカップにも入れろと念押しされてな」
「それでヒューバート様は、その惚れ薬が入った紅茶を飲まれてああなったのですね」
もう過去のことでどこから惚れ薬を飲まされたのなんて考えていなかったけど、まさかお義父様がヒューバート様に飲ませていたなんて驚きだわ。
そういえば、あの時私はカップに口を付けなかったのよね。
だけどもし飲んでいたら…。
どうなっていたかなんて怖くて想像も出来ないわ。
余計なことを考えないように軽く頭を振ってからヒューバート様を見れば、とても複雑そうな顔をして悩まれていた。
「あの、大丈夫ですか?」
「いや、大丈夫とは言い難い。惚れ薬を飲んでロズを愛せたことは僥倖だと思っている。だが、それが父上によって引き起こされたものだと思うと複雑な気持ちになる」
実の父親から惚れ薬を盛られたとなれば、理由がどうあれショックよね。
「ロズと子供達とこうして幸せな日々を送れているのはこの薬があったからだ。それは否定しようがない。だが、常識的に考えて実の息子に惚れ薬を盛るか?結果的に上手くいったから怒るに怒れないのがさらに腹立たしい!」
だいたい父上は!とお義父様に対しての不満を言い始める。
怒るヒューバート様に苦笑して、私は心の中でお義父様に感謝する。
お義父様がヒューバート様に惚れ薬を渡されたおかげで、長年の片想いが実り、可愛い子供達をこの手に抱くことが出来ました。本当にありがとうございます。
近いうちに子供達と一緒に訪問させていただきますね。
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また、2025年1月17日にはグッドノベル初の日本語Web小説コンテストが開催されます。
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詳細については、公式Twitterアカウント「GoodNove_JP」または開催後のコンテストページにてご確認いただけます。
もしご興味がありましたら、ぜひご連絡いただけますと幸いです。
ご返事を心よりお待ちしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
村上ナクル
GoodNovel 編集部
メール:nakuru@goodnovel.com
Instagram: nakuru5282
X:@nakuru7440
なぞは、解けましたね。
お父様に薬を盛られていたんですね。
納得です。登場しなかったのですが、やっぱりって感じですよね。お母様の可能性もあったと思いました。
完結なんですかね。
次回作を楽しみにしております。
ではでは
コメントありがとうございます!
犯人はお父さんでした!
これにて完結になります。
今作も読んでいただきありがとうございました!
また次回作でお会い出来れば幸いです。
ヒューバート様、頑張れ!!!!
前は、ダメダメだったけど、今は変わられたのだから、王女に負けるな。
と応援しています。
コメントありがとうございます。
ヒューバートのことを応援して下さりありがとうございます!きっと頑張れます!