平和への使者

Daisaku

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進学と出会い

20話 部活動と使命

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この学校は入学式当日でも、すぐに授業が始まる、学校に来た生徒は少なからず、
家から時間をかけて来た生徒ばかりだ。せっかく学校まで来たのだから、
しっかりと授業を行うようになっている。
そして、もう授業が始まろうとしていた。
マリはぎりぎり、授業開始までには間に合ったが、ユウキが戻ってこないので、
心配でたまらなかった。そして先生が教室に入ってきた。

「みなさん、おはようございます。この1年A組の担任の板橋 丈八です。これから、よろしくお願いします」

そう言って、教室を板橋先生が見渡したところ、席がひとつ空いていることに気づき、

「お~い、そこは誰の席だ」

そういって座席表を見て、

「あ~、橘ユウキか。いないのは、あれ、確か入試で首席だったやつだよな、だけど入学式の前は全員いたよな、誰か、橘を知らないか?」

先生がそう言ったが、今日から高校生になった初日で、外進(外部受験で入学した生徒)の生徒のことなど知るはずもない。
そこで内進(小・中学からこの学校にいた生徒)の松田祥子が

「先生、無断で来ない生徒に時間をかけないで、授業を始めていただけませんか」

「そうだな、いくら勉強ができても無断で欠席するようじゃ、ダメだな」

祥子はどうせ、勉強ができるだけのダサい男なんだろうと思った。
教室の生徒も言葉にはださなかったが、冷めた顔をして、軽蔑するような表情をしていた。

「よし、それでは授業を始めよう」

マリはユウキは何をやっているのだろうと考えたが、ここは知らないフリをした方が良いと思った。
英語の授業が始まり15分ぐらいしてユウキが教室に入ってきた。

「すみませ~ん。遅れました。お腹の調子が悪くてトイレに行ってました」

マリはこんなバレバレのウソ言って、板橋先生が怒るぞと思った。

「そうかあ、お腹の調子が悪いんじゃ、しょうがないな、大丈夫か?」

「はい、もう大丈夫です」

「それなら、早く席につけ」

「はい、わかりました。え~と席はと、あ~あそこの空いているところですね」

「そうだ、それじゃあ、授業再開するぞ」

そう言って先生は何事もなかったように授業を始めた。マリは

『あれ、これで終わり?なんか走って戻ってきた私はなんなの』

と思った。
戻ってきたユウキをクラス中の生徒が見たが、特に女生徒は口には出さなかったが、ユウキがあまりにも色白で甘いマスクだったため、見とれている生徒も数多くいた、その中に松田祥子もいた。

「お~そうだ、首席の橘、ちょっと教科書を読んで、お前の英語力を披露してくれ、
みんなにもいい刺激になるだろう。じゃあ、P10~15まで読んでくれ」

「はい、わかりました」

「goodmorning・・・・」

ユウキはスラスラと外国人のようにしゃべりだした。見た目もかっこいいが、頭も良いことで、もう完全にクラスの女生徒はユウキに釘付けになった。そんなユウキを見て
マリは

『また、ユウキくんが目立つといつも一緒にいる私がみんなから変な目で見られるんだよね。もう少し、その辺を考えてほしんだよね』

と悩んだ。
授業もひと段落して、お昼休みになった。

「マリちゃん、せっかくだから、食堂へ行って、一緒に昼ご飯を食べようよ」

「そうだね、中学までは、お弁当だったけど、ここには、食堂があるからね」

二人が教室で話しているのを聞いていた、後ろの席の飯沢隆が

「あんたら、外進だろ、おれもそうなんだよね、昼ごはん一緒に行ってもいいかな」

マリは入学初日から、声をかけてくれた飯沢に笑顔で

「いいよ。一緒にいこう」

と答えた。
クラスの生徒はマリや飯沢がユウキと仲良く話している姿を見ていた。祥子も本当はユウキと
話がしたくてしょうがなかったが、女性から声をかけるのははしたないと思い、三人を黙って見ていた。
食堂はとても広く高校生の校舎用の食堂でたくさんの生徒が集まってきていたが、
それに対応できるように作られており、あまり、待つこともなく注文でき、席に着くことができた。

「はじめまして、俺は飯沢隆、東京から、単身で来ていて、この学校の学生寮に住んでいる、
特に部活などは入る予定はないけど、将来は外交官になるのが夢かな」

「僕は橘ユウキ、士留場中学出身、この学校から約1時間ぐらいかけて自宅から通ってます。
部活はそうだな美術部に入る予定かな」

隣でマリが

「美術部?」

と驚いた顔でユウキをみつめた。そこで飯沢が

「ねー、きみの名前は」

「あーごめんなさい。ぼーとしちゃった。わたしは飛島マリ、同じく士留場中学出身でこの学校から約1時間ぐらいかけて自宅から通ってます。部活は美術部に入る予定です」

「あれ、同じ中学で同じ部活、もしかして、お二人はできているのかな?」

「は?できてる?私とユウキくんが?フフフ・・・、そんなの絶対にありえないんだけど」
「だって二人は同じ学校でどうやら家も近いみたいじゃない。そうか違うのか、もしかして
橘の片思いかな?」

「僕が?そんなの絶対にありえないよ」

「そうかあ、でも二人はなんかずっと一緒にいるよね、なんで?」

「友達だからだよ。なんか中学の時から気が合ってね」

マリは隣で気が合ったことは1回もないけどね、と思った。

「そうかあ、じゃあ、俺にもチャンスがあるかな」

「チャンス?そう、はじめてマリちゃんを見た時から、不思議と吸い込まれるような魅力を感じたんだよね。マリちゃんは好きな人とか、いるのかな?」

「そんな人いないよ、私はユウキくんと違って人気ないからね」

「そっかあ、じゃ、これから、気に入られように頑張るかな」

ユウキはこの飯沢という人間が何を考えているのか、よくわからなかったが、
なぜか、この男には本能的な嗅覚の様なものがあるのを感じた。
放課後になり、校舎を出ると、たくさんの部活動に所属している先輩達が入学したばかりの
1年生を勧誘しようと一生懸命だった。マリはそんな中、美術部を探した。
ぐるぐると見て回ったが、ほとんどが運動系の勧誘ばかりだった。

「困ったな、美術部がないな。どうしよう」

「美術部なら、美術室にいけば、部活動をしていると思うよ」

後ろから声を掛けられて、マリが振り向いたら、そこに女生徒が立っていた。

「わたしもこれから、いくから一緒に行く?同じクラスだよね。私は崎元しづこ、内進だよ。
この学校には小学校からいるから、わからないことがあったらなんでも聞いて」

「ありがとう、私は、飛島マリ、外進だよ、よろしくね」

「よろしく、ねえ、その隣にいる人は、たしか橘ユウキくんだよね」

ユウキは全く興味がない美術部に付いていくのがたまらなく嫌だった。

「ねえ、ユウキくん大丈夫?」

「あ~大丈夫、マリちゃん本当に美術部入るの?さっきも言ったけど来月から塾のようなところに通ってもらうんだよ。だから、あまり時間は取れないんだよ」

「わかってます、でもね、私、中学でも美術部がなくて、ず~と前から美術部に入ることが夢だったの。だから、絶対に行きます」

「わかったよ。あ、ごめん、ごめん、え~と、しづこさんだよね。よろしく、しづこさんも絵が好きなんだね」

「う~ん、物心つく頃から描いているから、好きとかあまり考えたことないかな。もう描くことが生活の一部になっちゃってるから」

「なるほど」

しばらく3人で校舎を歩いて2階の一番奥に美術室があった。その前にテーブルがあり、
新入生募集中と書いた、垂れ幕があり、そこに美術部の先輩達が2人座っていた。

「お~、入部希望か新入生」

「はい、希望しています。でも入部する前に先輩たちの描いた絵とか見ることできますか?」
「もちろん、大丈夫だぞ。まあ、完成した絵を見るのもいいが、今、中で10人ぐらいかな、みんな自分にあった美術活動をしているから、見ていきなよ、みんなすごいよ、」

「はい、ぜひ見学させてください」

「よ~し、じゃあ私が案内してあげるよ」

そう言って、三人は先輩について教室に入った。

「ここが、美術部だ。手前で2人が描いているのが石膏デッサン、どうだ、うまいだろ、
そこにいる木下はコンクールでも賞を取ったことがあるくらいだからな」

マリは鉛筆で描いた絵がこんなにうまく描いていることにびっくりした。
それと先輩たちは私とは鉛筆の持ち方が違うし、芯の長さも違う、ステッドラーを使っているみたいだけど、鉛筆を保管する筆箱も
オリジナルでケース内に自分でスポンジを入れて、芯が絶対に折れないようになっている。
マリは真剣に観察しているため、細かいことが気になってしょうがない。

「よ~し、次は着彩だ。美大受験で日本画を専攻する佐藤が描いてる。どうだ、写真と変わらないぐらいうまいだろ」

マリはまた、驚いた、水彩絵の具でこんな繊細なところまで描けるなんて、
花瓶に花とフルーツとテーブル、どこにでもありそうな物だけど、とてもうまい、
絵具はウィンザーニュートンを使用しているんだ。筆は清晨堂のを使ってる。
やっぱり美術部の人は道具も技術もとても高い。

「あの~先輩、皆さんのように私もうまくなれますか。小さい時から絵を描くのは好きなんですけど」

「そうだな、芸術的センスは別として、ただ、うまく絵を描けるようになるということなら、
ここで、毎日、描いていれば半年もしないうちにすごくうまくなれるよ」

「そうだ、どうだ、せっかく来たんだから、木下達と一緒に石膏デッサンをしていかないか?」

「新入生の実力をこちらとしても、見てみたいからな」

「ユウキくん、しづこさんどうする?今、描いていく」

「ぼくはマリちゃんに任せるよ」

「私は、もちろん描きたいわ」

「じゃあ、私も一緒に描くわ」

「よ~し、道具は全部、貸してやるから、自分の描きたいように思いっきり描いてみろ」

そう言って、先輩は道具を用意しはじめた。準備をしながら、

「そうだな、自己紹介がまだだったな、私はこの美術部で部長をしている立川まりこ。よろしくな」

三人とも同時に

「よろしくお願いします」

「一応、言っておくが、この美術部は絶対に毎日、来なければいけないとか。そういう細かい、しばりはない、各個人を尊重している、自分のレベルアップやコンクールに向けての活動や、美大受験に向けての練習でもいいんだ。
ただ、美術部としてのきまりは1年に2回ほどあるコンクールには必ず作品を出展することは守ってもらう」

立川はしゃべりながら、あっという間に3人分の道具を準備した。

「よし、部活は18時までしかできないが、あと4時間ほどあるから、頑張って描いてみてくれ」

そう言って、立川は新人募集対応のため廊下に出ていった。
ユウキが

「よ~し、一生懸命、がんばって描きますか」

それを聞いたマリが

「ユウキくん、一生懸命やらなくていいのよ。あなたが本気で描いたら、とんでもないことになるから、適当に手を抜いてよ、本当に勉強やスポーツもそうだけど、いい加減というものを
もっと勉強してよ」

「マリちゃん、なかなか加減することは僕には難しんだよ」

「いいから、加減する努力をして」

しづこは隣で二人の話を聞いて、

「マリちゃんなんで加減するの?先輩が思いっきり描けと言ってたのに」

「あら、聞こえちゃった。ユウキくんは絵をあまり描いたことがないから、いい加減でリラックスして絵を描いたらという意味で言ったんだよ。決して変な意味じゃないから、気にしないで」

しづこは不思議そうな顔でマリを見ていたが、時間もないので、石膏デッサンをするために
鉛筆を動かし始めた。マリはその様子を隣で見ていたが、ものすごく慣れた手つきでスラスラ描きはじめたのでびっくりしていた。
マリはこんなに本格的に絵を描いたことがないので多少戸惑っていたが、近くで描いている木下先輩の描き方を参考に自分なりに描き始めた。
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