ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神

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からくり奇譚 編

075. 久能城へ

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「わぁ、凄い。傷が治ってく……」

 ユーゴに施したネルの【祈癒】を見て、春が感嘆の声をあげた。

「こちらからお願いしておいてなんですが、本当に良かったんですか?」

 信衛はユーゴに確認した。

「ああ。構わねぇよ」

 ユーゴはユーゴで打算があった。信衛が顔のきく人物であるならば、ユーゴの探す人物の情報も集めやすいと思ったからだ。

「琴吹殿にはこちらから事情を伝えるとして、飛田屋はどうしましょうか?」

 頭を悩ます信衛にユーゴは伝える。

「大丈夫だ。さっき発見した。しばらく泳がせておこう」

「……? いったいどういう意味です?」

「信衛。このお方が大丈夫というならば大丈夫なのでしょう。私は信じます。貴方も信じなさい」

「は、はい。姉上……?」

 雪の様子が少しおかしいことに信衛は気付いた。
 普段は何かにつけ信衛を甘やかしたり甘えてきたりするのだが、それを自制するように厳しい態度になっている。
 信衛は姉にベタベタされるのが苦手だったので、弟離れが出来たのだろうと嬉しくなった。唐突ではあったが。

「で、お前はいつまで隠れてるんだよ?」

 ユーゴは山門の影に隠れてプルプル震えている人物に声をかけた。

「だ、だって……何かバトル始まってるし、怖いじゃない」

「なにが怖いだよ。お前、条件次第じゃこの中でも最強だろうが」

「逆に水がないと何も出来ないから怖いのよ。ていうか海の中でもアンタには勝てる気がしないんだけど」

 それはいつものセーラー服に着替えたパレアだった。

「人魚の子供たちはどうした?」

「海でアタシの配下を呼び寄せて預けてきたわ。で、これはどういう状況?」

 ユーゴはそろそろ説明が面倒になってきたので、フィールエルが代わりに説明した。

「ふーん。九能城にねぇ。それじゃあアタシもついていく」

「そうか……いや、だめだろ。お前、魔王の仕事はどうするんだ? もともと人魚の子供を取り戻したところで、お前との取引は完了したはずだが」

「いいのよ、別に。仮に一年二年ほっといても問題ないわ。海は今平和だし。それにアンタ達、今回の元凶をとっちめに行くんでしょ? ならアタシがいかないと駄目じゃない。もともとアタシたち海人の問題なんだから」

「あの、この娘もあなた方の仲間ですか? 魔王とは?」

 信衛が突然現れたパレアを訝って、ユーゴに訊いた。

「ん? ああ、こいつは海に入ると、ちょっとはしゃいで元気になっちゃう子なんだ。いるだろ、そういう子。魔王ごっこが最近のマイブームらしくてな。それより、どうやって俺たちは九能城に行けばいいんだ?」

「春ちゃん。悪いけど、この方たちを案内してもらえるかい? 松風空港からなら飛行船が出てるだろうし、拙者と姉上は【スサノオ】と【リッカ】で先に戻って準備しているから」

「いいわよ」

 春が快諾すると、信衛はユーゴに向き直って言う。

「そういえば、お名前はゆうごさんと仰るんですね」

「ん? なんで俺の名前を知ってるんだよ」

「あ」

 と、フィールエルが声を漏らし、口元を手で隠した。
 そういえば先刻、信衛の前でユーゴの名前を口に出した気がする。
 ユーゴはそんなフィールエルの態度で理由を察した。

「まぁいいや。俺はユーゴ・タカトーだ」

「タカトウ? タカトウ・ユウゴさんですか?」

「ヨウゲン式に呼ぶとそうなるな」

「陽元の方ではないのですか?」

「いや、文化は似ているが別の国だ。遠い国だから、名前を言ってもわからないだろうよ」

「そうなんですね。ではこの子の案内で九能までお越しください。お待ちしております」

 信衛と雪の姉弟は、一足先に寺を出ていった。
 別れの際、雪にチラ見されたのが少し気になったユーゴだが、すぐに視線が外れたので、それ以上は気にしないことにした。

「じゃああたしが案内するね。あたしは乙賀春。さっきは戦ってたけど、それはそれってことで一つよろしくね」

 焦げ茶色のくノ一がにっこり笑って挨拶した。
 ユーゴ達もそれぞれ名乗り、ひとまず門前宿へ戻って宿を引き払うことにした。

「それにしてもお兄さん、凄いね。あのユキ姉に勝つ人なんて初めて見たよ。ユキ姉より強いってことは、もう陽元国に敵なしだよね。フィールエルさんは進之助と互角の強さなのにそんなに綺麗なんて羨ましいなぁ。あ、進之助ってのは信衛のちっちゃいころの名前ね。この国じゃ武家の男は十五歳になったら大人と認められて名前が変わるんだ。ネルちゃんはさっきの力は何なの? え、美羅有ミラール教の聖女!? それって聞いたことあるよ。偉い人なんじゃないの? それにしても聖女って大変だね、あんな暗殺者みたいな動きも覚えなきゃいけないなんて。え、ネルちゃんだけ? そうなんだ。パレアちゃんは……」

 道中、春はのべつ幕なしに喋った。とにかくお喋りな性分らしい。くノ一らしいが、これで務まるのかと他人事ながらユーゴ達は心配した。
 宿を引き払ったあと、春が空港へ向かう前にどこかで車を借りる必要があると言った。

「やっぱり自動車があるのか」

 ユーゴが言った。

「あるよ。まだ高価だからお金持ちか役人だけしか所有してないけど。空港まで結構あるし、公用車を借りたいよね」

「さっきから気になってたけど、空港とか飛行船とか、航空技術も随分と発達してるんだな」

 今度はフィールエルが質問した。

「そうだね。他の国の人が来たらいつもびっくりしてるよ」

「なぜ陽元国だけここまで発達しているのでしょうか? 数年前まで鎖国していたとは聞いていましたが……」

「他国と差がつけられたのは、ネルちゃんが言うように鎖国が原因なんだろうけど、ここ数年で急速に発展した一番の要因は、進之助だろうなぁ」

「信衛さんが? どうしてですか?」

「だって、自動車も映写機も航空機も、全部進之助の発明だもの」

「な、なにぃっ!? それは本当か!?」

「え? う、うん。そうだけど。ほら、ちょうどあの姉弟の機巧きこう武人が飛び立つとこだよ。あれも進之助の発明だよ」

 春が指差す先には、いままさに空に向かって上昇する二体の巨大ロボットがあった。

「あの赤い機巧武人が進之助の【スサノオ】で、白いのがユキ姉の【リッカ】だよ」

「マジかよ……」

「凄いでしょ? もう本当、進之助って頭がよくて、栄山のお殿様の覚えもめでたくて───」

 乙女の顔で想い人の功績を称えまくる春の声は、
ほとんどユーゴの耳に入っていなかった。
 ユーゴが探していた人物は、この陽元国の文明を急速に発達させた人物である。
 その人物は異世界人の可能性が高い。
 九能信衛はこの国の文明を発達させた人物である。
 ということは、九能信衛は異世界人の可能性が高い。
 三段論法的にこのような結論に至った。
 くそ……さっきもう少し突っ込んで話をしておくんだった。
 しかし今となっては仕方のないこと。それにどうせ今から会いに行くのだ。焦る必要はないと、ユーゴは自分を落ち着かせる。

「なぁお春ちゃんや」

「なんだい、ゆうごのあんちゃん」

「自動車があればいいんだな?」

「うん。だからいまから松風のお城に───」

「いや、その必要はない」

 港から少し離れた場所である。ここなら良いかとユーゴは異空間からアドヴェンチャー・ガンマを出庫した。

「!?」

 春は両眼が飛び出すほど目を見張った。
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