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第30話
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「〝アブソープション〟」
最後の魔獣のLPを吸い上げて、すべてのドロップアイテムを拾い終えると、一度ステータスを確認してみることに。
-----------------
[ナード]
LP427
HP12/150
MP58/130
攻110(+50)
防110(+25)
魔攻110
魔防110
素早さ110
幸運110
ユニークスキル:
<アブソープション【スロットβ】>
<バフトリガー【ON】>
属性魔法:
《ファイヤーボウル》
《サンダーストライク》《プラズマオーディン》
無属性魔法:
《ヒール》《ヒールプラス》《瞬間移動》
攻撃系スキル:
<片手剣術>-《ソードブレイク》
<斧術>-《終焉の大斧》
補助系スキル:
《分析》《投紋》
《アルファウォール》《風のカーテン》
武器:ウロボロスアクス
防具:革の鎧、バックラー、シルバーグラブ
アイテム:
ポーション×53、ダブルポーション×7
マジックポーション×34、マジックポッド×3
水晶ジェム×58、鋭い牙×36
翠緑の鱗×5、ウルフダガー×1
貴重品:ビーナスのしずく×1
所持金:26,500アロー
所属パーティー:叛逆の渡り鳥
討伐数:
E級魔獣80体、E級大魔獣1体、C 級魔獣45体
状態:ランダム状態上昇<全魔法・被ダメージ半減>
-----------------
「トータルでLP+426か。結果的には一気に殲滅できたわけだし、悪いことばかりじゃなかったかな」
ていうか《終焉の大斧》が強すぎた。
一撃であれだけの魔獣を瞬殺したことに、自分でもびっくりしている。余韻で手なんかまだ痺れているし……。
けど、これもウロボロスアクスあってこその結果なわけで。
「おっと……そっか。これ返さないと」
そこでようやくデュカとケルヴィンの存在を思い出す。
フロアの中央で呆然と座り込む2人のもとまで駆け寄ると声をかけた。
「ありがとうデュカ。この武器のおかげで助かったよ」
「え? あ、ああ……」
「それとケルヴィンにもお礼を言わないとね。《ソリッドシェルター》をかけてもらわなかったら、多分詰んでたと思うし」
「いえ……。ボクは何も……」
取り乱していたのが嘘みたいに、2人ともちゃんと落ち着きを取り戻していたけど。
なかなかその場から立ち上がろうとしない。
まあ、当然といえば当然だよね。あれだけの魔獣に囲まれて死にかけたんだ。
トラウマになっても仕方ない。
でも、デュカもケルヴィンも、もっと別のことに意識を持っていかれているようだった。
「次からは、冒険者ギルドでクエスト受注してから来てね? 今回のことは何も言わないけど、本来不届きな盗賊なんてバレたら、牢獄行きなんだからさ。それじゃ、僕はこれで」
それが別れの挨拶のつもりだった。
けど。
「……ちょっと待ってくれ」
デュカにそう呼び止められてしまう。
「? なに?」
「お前、いつからそんな強くなったんだ? オレたちとパーティー組んでる時は、アイテムを出し入れすることしかできなかったじゃないか」
ようやく立ち上がりながら、真剣な表情で訊ねてくる。
加勢するようにケルヴィンも腰を上げて続けた。
「それと、さっきからあなたがやっていたアレはなんです? ただ魔獣を消し去っていたようには見えませんでしたけど」
「……」
さすがにこれだけ<アブソープション>を使えば、不審に思うのも無理ないか。
べつに隠すようなことじゃない。僕は2人に本当のことを話すことにした。
◇
「――LPを増やすことができるなんて、あり得ないですよ」
「でも、事実なんだよ」
「いや、そんなユニークスキルがあるなんて、聞いたことありませんし。そもそも、こんなことを認めてしまえば、世界の掟が覆ってしまうじゃないですか。悪いですけど、冗談にしか聞こえないですし、ボクは断じて認められないです」
やっぱり、こういう反応になるかぁ……。
さっきから本当のことを話しているんだけど、ケルヴィンに突っぱねられてしまっている。
分かっていたことだとはいえ、なかなか理解してもらえなくて困る。
まあでも、僕だって知らないうちにこんな話を聞かされたら、真っ先に否定していたと思うし。
これまで僕たちは、LPは下がり続けるものだって教えられてきた。
LPは1ヶ月に1ポイントずつ減って、みんな最終的にはLP1になる。
それは、誰も逆らえないこの世界の掟のはず。
これまで形成してきた価値観をぶち壊されてしまうかもしれないってことに、ケルヴィンは恐れているんだよね。
対してデュカはというと。
「……」
最初、僕の話を聞いた時は驚いた顔をしていたんだけど、今は押し黙って口元に手を当てていた。
何か考えているのかもしれない。
そして、ふと思い出したようにこう呟く。
「……勇者フェイトの生まれ変わり……」
「え?」
「いや、あり得ない。あり得ないんだが、そうとしか考えられない……」
「勇者フェイト? 勇者フェイトって、伝承に出てくるあの勇者様のこと?」
「……」
そう訊ねても、デュカは再び黙り込んでしまう。
なんだろう。生まれ変わりとか言っていたけど。
ケルヴィンの方を覗けば、僕と同じように首をかしげていた。
しばらくすると、デュカは小さく息を吸いながらこう続ける。
「……お前、勇者伝承の内容は知ってるんだな?」
「そりゃ、学校の授業でもイヤってほど聞かされたし。そっちの学校でも習ったでしょ?」
知らないっていう人は、ほとんどいないんじゃないかな。
それくらいポピュラーで、僕らの生活に浸透しているものだったりする。
勇者伝承は、勇者フェイトの活躍を口頭で伝えたもので、内容はざっくりこんな感じだ。
今から数万年前。
創造神エデンを長とした人族と、邪神レヴィアタンを長とした魔族による全面戦争があった。
長きに渡る戦いの末、戦争は人族の勝利によって終結し、魔族は世界最北端の地ティーリア島嶼まで追いやられることになった。
邪神レヴィアタンは、創造神エデンの御業によって、そこに永遠に封印されることになる。
それから世界には平和が訪れ、人々は魔族とは無縁の豊かな生活を送ることとなった。
だが、そんな平和に陰りが見え始めたのが、今から約1,000年前。
邪神レヴィアタンの復活を目論む魔王アビスがひそかに力をつけ、大勢の魔族を従えて世界各地を襲い始めたのだ。
四大陸にあるそれぞれの盟主国には、創造神エデンが邪神レヴィアタンを封印するために使用した大魔導器が厳重に保管されていて、邪神レヴィアタンの復活には、これら4つの大魔導器をすべて破壊する必要があると言われている。
魔王アビスは、これを壊すことを目的として、世界各地への侵攻を開始した。
世界は混沌と化し、多くの人々が魔族によって殺されるそんな状況において現れた英雄――それが勇者フェイトだった。
勇者フェイトは仲間を集めると、果敢にも魔王アビス率いる魔王軍との戦いに挑んだ。
完全劣勢の中、勇者パーティーは四大陸の大魔導器を守ることに成功し、ついに魔王アビスと対峙する。
結果、勇者パーティーは魔王アビスを倒し、ティーリア島嶼へと封じ込める。
それにより世界には再び平和が訪れた。
勇者フェイトの偉業は、魔王アビスを封印したこと以外にも、魔獣を世界各地のダンジョンに封じ込めたことだって言われているけど、大昔の話だし、正直僕らにとってはあまり実感がなかったりする。
ダンジョンは、魔光石の採取を行う場所っていう認識くらいしかないんじゃないかな。
そんなことを考えていると……。
「フッ、やっぱりな」
デュカの笑い声が聞こえてくる。
僕の回答を予測していたのか、少しだけ鼻で笑いながらこう続けた。
「その程度の認識だろうと思った」
それに対して真っ先に疑問の声を上げたのはケルヴィンだった。
「その程度の認識、ですか?」
「ケルヴィン。お前が知らなかったとは意外だな」
「知らなかったって、なにをです?」
「そっくりなんだよ。こいつのやってることは」
デュカは僕を指さしながら、びしっと核心に迫る言葉を口にする。
「勇者フェイトもな。LPを増やすことができるユニークスキルを持っていたって言われてるんだよ」
「え……」
今度は僕が驚きの声を上げる番だった。
「ゆ、勇者フェイトもこんなスキルを持ってたの!?」
「よく考えれば分かることだろ? 勇者フェイトは創造神エデンと違って普通の人間だったんだ。生身の人間が、当時、大勢力を誇っていた魔王軍相手に勝利できたと思うか? 何かとんでもない力に目覚めていなければ、そんなことはできなかったはずだ」
「デュカさん。そもそもそんな話、どこで聞いたんですか?」
「親父からだよ。お前も知ってるだろ? 俺の親父が世界中を渡り歩いた冒険者だって。旅を続けるうちにこの話を聞いたらしいんだ」
「そんな……。にわかに信じられません……」
「でも、親父が嘘をつくわけがないってことは、ケルヴィン、お前も分かってるはずだ」
「ですが、LPを増やすことができるユニークスキルがこの世にあったなんて……。それに、ちょっと待ってください。伝説の勇者様を彼に重ねるのはどうなんです? さすがに突拍子もないかと」
その言葉には僕も賛成だった。
いきなり、勇者フェイトとそっくりなんて言われて信じられるはずがない。
でも……。
デュカにはまだ、このこと以外にも確信がある様子だった。
続くデュカの言葉に、僕はさらに衝撃を受けることになる。
「勇者フェイトは、『1,000年の時を経て生まれ変わる』って言い残して消えたっていう話だ。勇者パーティーと魔王軍の戦いが終わってからすでに1,000年以上が経過しているからな。その内容ともちょうど一致する」
「!」
「俺も、お前が勇者フェイトの生まれ変わりだなんてまったく信じられないが、魔獣を一気に殲滅した姿を見た後だと……なんていうか、それも信じざるを得ないっていうのが正直な感想だ」
これまで否定的だったケルヴィンも、デュカのその言葉には同意みたいだ。
顎に手を当てながら静かに頷く。
たしかに、以前の僕を知っている2人からすれば、急成長した今の姿は異様に映ったのかもしれない。
(けど、それで勇者様の生まれ変わりなんて……)
なんて答えればいいか分からなくて、その場で立ち尽くしていると、なぜかデュカがウロボロスアクスを戻してくる。
「これはお前に渡しておく」
「は?」
「オレが持ってるよりも、お前の方がこれを使いこなせそうだからな」
「いや、受け取れないって。だって、これ親父さんに貰った大切な物でしょ?」
「そうだが……。新たな勇者様に使ってもらえるんなら、こいつも本望だろうよ」
「ちょ、ちょっと待ってよ……! なんで急にそんな話に……」
僕が狼狽えていると、ケルヴィンが横から話に加わってくる。
「……いえ。あながちデュカさんの言ってることは間違いではないのかもしれません。勇者フェイトが『1,000年の時を経て生まれ変わる』と言い残した理由は、魔王アビスを封印できる期間が1,000年間だからという話です。ひょっとすると、魔王アビスはすでに復活していて、再び世界を征服しようとたくらんでいるのかもしれません。だから、勇者様は生まれ変わって現代に現れた……なんてことも十分にあり得る話です」
「な、なにを言って……」
突然、話のスケールが壮大になりすぎて2人についていけない。
けど、デュカもケルヴィンも、表情は真剣なままだ。
新たな勇者?
すでに魔王は復活している?
おとぎ話の登場人物が急に現実に飛び出してきたみたいで、まるでリアリティーがない。
僕はただ、ノエルのためにこれまで必死になってきたってだけで、突然、勇者様の生まれ変わりなんて言われても、正直まったく実感が持てなかった。
「とにかく、これはお前に渡しておくぞ」
「ボクもあなたにこの上帝の盾をお渡ししておきます。今後の役に立ててください」
ケルヴィンからもヒスイで彩られた大きな盾を渡されて、僕は返すこともできず、ただ茫然とするしかなかった。
「C級ダンジョンがすべて埋まってたから、軽い気持ちで不届きな盗賊みたいな真似をしてしまったが……。結果的には、教訓が学べていい経験になった。それにお前は命の恩人だ。あの時、皆でパーティーから追い出してしまって悪かったな。本当にすまなかった」
モヒカンの頭をさすりながら、デュカが深々と頭を下げる。
ケルヴィンもバンダナを外しながら続いた。
「これまで悪魔の子なんて呼んでしまってごめんなさい。今のあなたなら、セシリアさんやダコタさんを越えられるはずです。A級ダンジョン踏破も夢じゃないって、ボクは思います。まだLPが増えるなんてことは信じられないですけど……。でも、先程の強さを見てしまったら、やっぱり信じざるを得ませんね。これから頑張ってください! ボクたちはこれで失礼します」
それから2人は、あっという間に僕の前から消えてしまった。
だだっ広い空間に1人残されると、これまでの出来事はすべて幻だったんじゃないかって思えてくる。
でも、手に握られたウロボロスアクスが、これまでのことは全部現実だったんだって、僕に教えてくれていた。
最後の魔獣のLPを吸い上げて、すべてのドロップアイテムを拾い終えると、一度ステータスを確認してみることに。
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[ナード]
LP427
HP12/150
MP58/130
攻110(+50)
防110(+25)
魔攻110
魔防110
素早さ110
幸運110
ユニークスキル:
<アブソープション【スロットβ】>
<バフトリガー【ON】>
属性魔法:
《ファイヤーボウル》
《サンダーストライク》《プラズマオーディン》
無属性魔法:
《ヒール》《ヒールプラス》《瞬間移動》
攻撃系スキル:
<片手剣術>-《ソードブレイク》
<斧術>-《終焉の大斧》
補助系スキル:
《分析》《投紋》
《アルファウォール》《風のカーテン》
武器:ウロボロスアクス
防具:革の鎧、バックラー、シルバーグラブ
アイテム:
ポーション×53、ダブルポーション×7
マジックポーション×34、マジックポッド×3
水晶ジェム×58、鋭い牙×36
翠緑の鱗×5、ウルフダガー×1
貴重品:ビーナスのしずく×1
所持金:26,500アロー
所属パーティー:叛逆の渡り鳥
討伐数:
E級魔獣80体、E級大魔獣1体、C 級魔獣45体
状態:ランダム状態上昇<全魔法・被ダメージ半減>
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「トータルでLP+426か。結果的には一気に殲滅できたわけだし、悪いことばかりじゃなかったかな」
ていうか《終焉の大斧》が強すぎた。
一撃であれだけの魔獣を瞬殺したことに、自分でもびっくりしている。余韻で手なんかまだ痺れているし……。
けど、これもウロボロスアクスあってこその結果なわけで。
「おっと……そっか。これ返さないと」
そこでようやくデュカとケルヴィンの存在を思い出す。
フロアの中央で呆然と座り込む2人のもとまで駆け寄ると声をかけた。
「ありがとうデュカ。この武器のおかげで助かったよ」
「え? あ、ああ……」
「それとケルヴィンにもお礼を言わないとね。《ソリッドシェルター》をかけてもらわなかったら、多分詰んでたと思うし」
「いえ……。ボクは何も……」
取り乱していたのが嘘みたいに、2人ともちゃんと落ち着きを取り戻していたけど。
なかなかその場から立ち上がろうとしない。
まあ、当然といえば当然だよね。あれだけの魔獣に囲まれて死にかけたんだ。
トラウマになっても仕方ない。
でも、デュカもケルヴィンも、もっと別のことに意識を持っていかれているようだった。
「次からは、冒険者ギルドでクエスト受注してから来てね? 今回のことは何も言わないけど、本来不届きな盗賊なんてバレたら、牢獄行きなんだからさ。それじゃ、僕はこれで」
それが別れの挨拶のつもりだった。
けど。
「……ちょっと待ってくれ」
デュカにそう呼び止められてしまう。
「? なに?」
「お前、いつからそんな強くなったんだ? オレたちとパーティー組んでる時は、アイテムを出し入れすることしかできなかったじゃないか」
ようやく立ち上がりながら、真剣な表情で訊ねてくる。
加勢するようにケルヴィンも腰を上げて続けた。
「それと、さっきからあなたがやっていたアレはなんです? ただ魔獣を消し去っていたようには見えませんでしたけど」
「……」
さすがにこれだけ<アブソープション>を使えば、不審に思うのも無理ないか。
べつに隠すようなことじゃない。僕は2人に本当のことを話すことにした。
◇
「――LPを増やすことができるなんて、あり得ないですよ」
「でも、事実なんだよ」
「いや、そんなユニークスキルがあるなんて、聞いたことありませんし。そもそも、こんなことを認めてしまえば、世界の掟が覆ってしまうじゃないですか。悪いですけど、冗談にしか聞こえないですし、ボクは断じて認められないです」
やっぱり、こういう反応になるかぁ……。
さっきから本当のことを話しているんだけど、ケルヴィンに突っぱねられてしまっている。
分かっていたことだとはいえ、なかなか理解してもらえなくて困る。
まあでも、僕だって知らないうちにこんな話を聞かされたら、真っ先に否定していたと思うし。
これまで僕たちは、LPは下がり続けるものだって教えられてきた。
LPは1ヶ月に1ポイントずつ減って、みんな最終的にはLP1になる。
それは、誰も逆らえないこの世界の掟のはず。
これまで形成してきた価値観をぶち壊されてしまうかもしれないってことに、ケルヴィンは恐れているんだよね。
対してデュカはというと。
「……」
最初、僕の話を聞いた時は驚いた顔をしていたんだけど、今は押し黙って口元に手を当てていた。
何か考えているのかもしれない。
そして、ふと思い出したようにこう呟く。
「……勇者フェイトの生まれ変わり……」
「え?」
「いや、あり得ない。あり得ないんだが、そうとしか考えられない……」
「勇者フェイト? 勇者フェイトって、伝承に出てくるあの勇者様のこと?」
「……」
そう訊ねても、デュカは再び黙り込んでしまう。
なんだろう。生まれ変わりとか言っていたけど。
ケルヴィンの方を覗けば、僕と同じように首をかしげていた。
しばらくすると、デュカは小さく息を吸いながらこう続ける。
「……お前、勇者伝承の内容は知ってるんだな?」
「そりゃ、学校の授業でもイヤってほど聞かされたし。そっちの学校でも習ったでしょ?」
知らないっていう人は、ほとんどいないんじゃないかな。
それくらいポピュラーで、僕らの生活に浸透しているものだったりする。
勇者伝承は、勇者フェイトの活躍を口頭で伝えたもので、内容はざっくりこんな感じだ。
今から数万年前。
創造神エデンを長とした人族と、邪神レヴィアタンを長とした魔族による全面戦争があった。
長きに渡る戦いの末、戦争は人族の勝利によって終結し、魔族は世界最北端の地ティーリア島嶼まで追いやられることになった。
邪神レヴィアタンは、創造神エデンの御業によって、そこに永遠に封印されることになる。
それから世界には平和が訪れ、人々は魔族とは無縁の豊かな生活を送ることとなった。
だが、そんな平和に陰りが見え始めたのが、今から約1,000年前。
邪神レヴィアタンの復活を目論む魔王アビスがひそかに力をつけ、大勢の魔族を従えて世界各地を襲い始めたのだ。
四大陸にあるそれぞれの盟主国には、創造神エデンが邪神レヴィアタンを封印するために使用した大魔導器が厳重に保管されていて、邪神レヴィアタンの復活には、これら4つの大魔導器をすべて破壊する必要があると言われている。
魔王アビスは、これを壊すことを目的として、世界各地への侵攻を開始した。
世界は混沌と化し、多くの人々が魔族によって殺されるそんな状況において現れた英雄――それが勇者フェイトだった。
勇者フェイトは仲間を集めると、果敢にも魔王アビス率いる魔王軍との戦いに挑んだ。
完全劣勢の中、勇者パーティーは四大陸の大魔導器を守ることに成功し、ついに魔王アビスと対峙する。
結果、勇者パーティーは魔王アビスを倒し、ティーリア島嶼へと封じ込める。
それにより世界には再び平和が訪れた。
勇者フェイトの偉業は、魔王アビスを封印したこと以外にも、魔獣を世界各地のダンジョンに封じ込めたことだって言われているけど、大昔の話だし、正直僕らにとってはあまり実感がなかったりする。
ダンジョンは、魔光石の採取を行う場所っていう認識くらいしかないんじゃないかな。
そんなことを考えていると……。
「フッ、やっぱりな」
デュカの笑い声が聞こえてくる。
僕の回答を予測していたのか、少しだけ鼻で笑いながらこう続けた。
「その程度の認識だろうと思った」
それに対して真っ先に疑問の声を上げたのはケルヴィンだった。
「その程度の認識、ですか?」
「ケルヴィン。お前が知らなかったとは意外だな」
「知らなかったって、なにをです?」
「そっくりなんだよ。こいつのやってることは」
デュカは僕を指さしながら、びしっと核心に迫る言葉を口にする。
「勇者フェイトもな。LPを増やすことができるユニークスキルを持っていたって言われてるんだよ」
「え……」
今度は僕が驚きの声を上げる番だった。
「ゆ、勇者フェイトもこんなスキルを持ってたの!?」
「よく考えれば分かることだろ? 勇者フェイトは創造神エデンと違って普通の人間だったんだ。生身の人間が、当時、大勢力を誇っていた魔王軍相手に勝利できたと思うか? 何かとんでもない力に目覚めていなければ、そんなことはできなかったはずだ」
「デュカさん。そもそもそんな話、どこで聞いたんですか?」
「親父からだよ。お前も知ってるだろ? 俺の親父が世界中を渡り歩いた冒険者だって。旅を続けるうちにこの話を聞いたらしいんだ」
「そんな……。にわかに信じられません……」
「でも、親父が嘘をつくわけがないってことは、ケルヴィン、お前も分かってるはずだ」
「ですが、LPを増やすことができるユニークスキルがこの世にあったなんて……。それに、ちょっと待ってください。伝説の勇者様を彼に重ねるのはどうなんです? さすがに突拍子もないかと」
その言葉には僕も賛成だった。
いきなり、勇者フェイトとそっくりなんて言われて信じられるはずがない。
でも……。
デュカにはまだ、このこと以外にも確信がある様子だった。
続くデュカの言葉に、僕はさらに衝撃を受けることになる。
「勇者フェイトは、『1,000年の時を経て生まれ変わる』って言い残して消えたっていう話だ。勇者パーティーと魔王軍の戦いが終わってからすでに1,000年以上が経過しているからな。その内容ともちょうど一致する」
「!」
「俺も、お前が勇者フェイトの生まれ変わりだなんてまったく信じられないが、魔獣を一気に殲滅した姿を見た後だと……なんていうか、それも信じざるを得ないっていうのが正直な感想だ」
これまで否定的だったケルヴィンも、デュカのその言葉には同意みたいだ。
顎に手を当てながら静かに頷く。
たしかに、以前の僕を知っている2人からすれば、急成長した今の姿は異様に映ったのかもしれない。
(けど、それで勇者様の生まれ変わりなんて……)
なんて答えればいいか分からなくて、その場で立ち尽くしていると、なぜかデュカがウロボロスアクスを戻してくる。
「これはお前に渡しておく」
「は?」
「オレが持ってるよりも、お前の方がこれを使いこなせそうだからな」
「いや、受け取れないって。だって、これ親父さんに貰った大切な物でしょ?」
「そうだが……。新たな勇者様に使ってもらえるんなら、こいつも本望だろうよ」
「ちょ、ちょっと待ってよ……! なんで急にそんな話に……」
僕が狼狽えていると、ケルヴィンが横から話に加わってくる。
「……いえ。あながちデュカさんの言ってることは間違いではないのかもしれません。勇者フェイトが『1,000年の時を経て生まれ変わる』と言い残した理由は、魔王アビスを封印できる期間が1,000年間だからという話です。ひょっとすると、魔王アビスはすでに復活していて、再び世界を征服しようとたくらんでいるのかもしれません。だから、勇者様は生まれ変わって現代に現れた……なんてことも十分にあり得る話です」
「な、なにを言って……」
突然、話のスケールが壮大になりすぎて2人についていけない。
けど、デュカもケルヴィンも、表情は真剣なままだ。
新たな勇者?
すでに魔王は復活している?
おとぎ話の登場人物が急に現実に飛び出してきたみたいで、まるでリアリティーがない。
僕はただ、ノエルのためにこれまで必死になってきたってだけで、突然、勇者様の生まれ変わりなんて言われても、正直まったく実感が持てなかった。
「とにかく、これはお前に渡しておくぞ」
「ボクもあなたにこの上帝の盾をお渡ししておきます。今後の役に立ててください」
ケルヴィンからもヒスイで彩られた大きな盾を渡されて、僕は返すこともできず、ただ茫然とするしかなかった。
「C級ダンジョンがすべて埋まってたから、軽い気持ちで不届きな盗賊みたいな真似をしてしまったが……。結果的には、教訓が学べていい経験になった。それにお前は命の恩人だ。あの時、皆でパーティーから追い出してしまって悪かったな。本当にすまなかった」
モヒカンの頭をさすりながら、デュカが深々と頭を下げる。
ケルヴィンもバンダナを外しながら続いた。
「これまで悪魔の子なんて呼んでしまってごめんなさい。今のあなたなら、セシリアさんやダコタさんを越えられるはずです。A級ダンジョン踏破も夢じゃないって、ボクは思います。まだLPが増えるなんてことは信じられないですけど……。でも、先程の強さを見てしまったら、やっぱり信じざるを得ませんね。これから頑張ってください! ボクたちはこれで失礼します」
それから2人は、あっという間に僕の前から消えてしまった。
だだっ広い空間に1人残されると、これまでの出来事はすべて幻だったんじゃないかって思えてくる。
でも、手に握られたウロボロスアクスが、これまでのことは全部現実だったんだって、僕に教えてくれていた。
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元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?
名無し
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「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」
「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」
「それは貴様が無能だからだ!」
「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」
「黙れ、とっととここから消えるがいい!」
それは突然の出来事だった。
SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。
そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。
「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」
「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」
「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」
ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。
その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。
「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」
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