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2章
第4話
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「……え!? フォーゲラングの聖女様!?」
「どうも……」
モニカは少しだけバツが悪そうに小さく頭を下げる。
「うわぁ~! こんな所で奇遇だなっ! 元気だったか?」
「まぁまぁ、ですね……」
「というか、どうしてここにいるんだ? フォーゲラングの村で仕事があったんじゃ……」
あれだけ熱心に、村から出て行ってくれと主張していた彼女がマスクスにいることに、ゼノは疑問を抱く。
「……それは……」
「それは?」
「……」
モニカは一度俯くも、すぐに顔を上げて人差し指を突き立てながらゼノに迫った。
「……貴方のせいで! わたしは村にいられなくなったんですぅ!」
「!」
「どう責任を取ってくれるんですかぁ~!? 全部、貴方のせいなんですよっー!」
そこでゼノは思い出す。
(そっか……。俺があんな風に、大々的に魔法を使って治療してしまったから。ヘンな噂が広まって、村に居づらくなってしまったんだ)
事情を理解したゼノは、すぐに頭を下げて謝罪した。
「ごめんっ! あの節は、本当に申し訳ないことをしたよ……」
「むぅ~! 今さら謝られたって遅いんですから! この、このぉ……キザったらしの変態ロクでなしやろぉーーぅ!!」
「へっ?」
そう言い放つと、モニカはそのままバタバタと音を立てながらギルドから出て行ってしまう。
(なんだぁ……?)
混乱するゼノに対してティナが声をかける。
「ゼノさん。やっぱり、あの子と知り合いだったんですね」
「あ、はい。マスクスへ来る前に一度会ったことがありまして」
「彼女……この一週間、うちのギルドに入り浸ってます。気付きませんでしたか? ずっとゼノさんの姿を目で追ってたんですよ」
「ハ……? 一週間!?」
「あの子、隠れてるつもりだったんだろうけど。僕らにはバレバレだったねぇ」
(なんだよそれ、ちょっと怖いっ……)
「僕は、ゼノくんのファンなのかなって思ってたんだけどねぇ。でも、今の態度を見ると、かなり危ない感じ? ストーカー気質なところがあるんじゃないかな?」
「ストーカー!?」
そこまで恨みを買っていたのかと、本格的に落ち込むゼノであったが。
「……私が、ゼノさんにワイド山のクエストを依頼した日。実は、ゼノさんがギルドから出て行った後、あの子が受付までやって来たんです。『ゼノさんを甘く見ないでください!』『あの人は、ものすっ~ごく強い魔導師なんですから!』って言って」
「え……」
「そりゃもうすごかったねぇ。君へ対するとてつもない愛情を僕は感じたよん。かなり重そうな感じだったけどねぇ~くくっ」
「ちょっと、リチャードさんは黙って!」
「……ハイ、ごめんなさい」
ティナはリチャードを隣りの席へ追い返すと、おほんと咳払いをしてからゼノに向き直る。
「これまでずっとゼノさんの姿を目で追っていたのは、あんな風に怒りたかったからじゃないと思うんです」
「……」
「きっと、彼女はゼノさんに何か話したいことがあるんだと思いますよ。だから、追いかけてあげてください」
「……っ、分かりました。ありがとうございます!」
ゼノは一度お辞儀をすると、急いで受付カウンターを後にした。
◆
冒険者ギルドの扉を開けると、すぐにモニカの姿は見つかった。
彼女は出入口の柱にもたれて、うな垂れていたのだ。
「っ!?」
ゼノの姿を見つけると、モニカは途端に驚いた表情を覗かせる。
「な、なんで……」
その瞳には薄っすらと涙が浮かんでいた。
ドスン!
すぐさまモニカの前で跪くと、ゼノは館の玄関ポーチに思いっきり額をぶつける。
「えぇっ!?」
そして、誠心込めて謝罪するのだった。
「聖女様、本当にすまなかった。心からお詫びするよ」
「ちょっと……こんな所でやめてください。他の方が見てますって……」
モニカは恥ずかしそうに周りを気にする素振りを見せる。
出入口ということもあり、ギルドを行き交う冒険者たちは、不思議そうな顔で2人の姿を横目に眺めていた。
けれど、ゼノは構うことなく土下座を続ける。
「こんなことで許されるとは思ってないけど……。俺にできることがあれば何でも言ってくれ」
「っ」
「力になれることはないか? 聖女様の役に立ちたいんだ」
モニカは、玄関ポーチに額を押し当て続けるゼノの姿を見下ろしながら、静かに唇を噛む。
見上げずとも、ゼノには分かった。
彼女が何か口にしようと迷っている、と。
――やがて。
「ふぅ……」
モニカは小さく息を吐き出すと、観念したようにこう呟く。
「……1つだけ、あります……」
「なんだ? 俺にできることなら、なんでも言ってくれ」
そこでようやく顔を上げると、ゼノはモニカに目を向けた。
「明日の朝一番……」
「明日?」
「ここに集合です! あとは、その時に話しますからっ……!」
捨て台詞のようにそう吐きつけると、モニカは走ってその場から立ち去ってしまう。
ゼノは、狐につままれたように、彼女の後ろ姿を見送るのだった。
「どうも……」
モニカは少しだけバツが悪そうに小さく頭を下げる。
「うわぁ~! こんな所で奇遇だなっ! 元気だったか?」
「まぁまぁ、ですね……」
「というか、どうしてここにいるんだ? フォーゲラングの村で仕事があったんじゃ……」
あれだけ熱心に、村から出て行ってくれと主張していた彼女がマスクスにいることに、ゼノは疑問を抱く。
「……それは……」
「それは?」
「……」
モニカは一度俯くも、すぐに顔を上げて人差し指を突き立てながらゼノに迫った。
「……貴方のせいで! わたしは村にいられなくなったんですぅ!」
「!」
「どう責任を取ってくれるんですかぁ~!? 全部、貴方のせいなんですよっー!」
そこでゼノは思い出す。
(そっか……。俺があんな風に、大々的に魔法を使って治療してしまったから。ヘンな噂が広まって、村に居づらくなってしまったんだ)
事情を理解したゼノは、すぐに頭を下げて謝罪した。
「ごめんっ! あの節は、本当に申し訳ないことをしたよ……」
「むぅ~! 今さら謝られたって遅いんですから! この、このぉ……キザったらしの変態ロクでなしやろぉーーぅ!!」
「へっ?」
そう言い放つと、モニカはそのままバタバタと音を立てながらギルドから出て行ってしまう。
(なんだぁ……?)
混乱するゼノに対してティナが声をかける。
「ゼノさん。やっぱり、あの子と知り合いだったんですね」
「あ、はい。マスクスへ来る前に一度会ったことがありまして」
「彼女……この一週間、うちのギルドに入り浸ってます。気付きませんでしたか? ずっとゼノさんの姿を目で追ってたんですよ」
「ハ……? 一週間!?」
「あの子、隠れてるつもりだったんだろうけど。僕らにはバレバレだったねぇ」
(なんだよそれ、ちょっと怖いっ……)
「僕は、ゼノくんのファンなのかなって思ってたんだけどねぇ。でも、今の態度を見ると、かなり危ない感じ? ストーカー気質なところがあるんじゃないかな?」
「ストーカー!?」
そこまで恨みを買っていたのかと、本格的に落ち込むゼノであったが。
「……私が、ゼノさんにワイド山のクエストを依頼した日。実は、ゼノさんがギルドから出て行った後、あの子が受付までやって来たんです。『ゼノさんを甘く見ないでください!』『あの人は、ものすっ~ごく強い魔導師なんですから!』って言って」
「え……」
「そりゃもうすごかったねぇ。君へ対するとてつもない愛情を僕は感じたよん。かなり重そうな感じだったけどねぇ~くくっ」
「ちょっと、リチャードさんは黙って!」
「……ハイ、ごめんなさい」
ティナはリチャードを隣りの席へ追い返すと、おほんと咳払いをしてからゼノに向き直る。
「これまでずっとゼノさんの姿を目で追っていたのは、あんな風に怒りたかったからじゃないと思うんです」
「……」
「きっと、彼女はゼノさんに何か話したいことがあるんだと思いますよ。だから、追いかけてあげてください」
「……っ、分かりました。ありがとうございます!」
ゼノは一度お辞儀をすると、急いで受付カウンターを後にした。
◆
冒険者ギルドの扉を開けると、すぐにモニカの姿は見つかった。
彼女は出入口の柱にもたれて、うな垂れていたのだ。
「っ!?」
ゼノの姿を見つけると、モニカは途端に驚いた表情を覗かせる。
「な、なんで……」
その瞳には薄っすらと涙が浮かんでいた。
ドスン!
すぐさまモニカの前で跪くと、ゼノは館の玄関ポーチに思いっきり額をぶつける。
「えぇっ!?」
そして、誠心込めて謝罪するのだった。
「聖女様、本当にすまなかった。心からお詫びするよ」
「ちょっと……こんな所でやめてください。他の方が見てますって……」
モニカは恥ずかしそうに周りを気にする素振りを見せる。
出入口ということもあり、ギルドを行き交う冒険者たちは、不思議そうな顔で2人の姿を横目に眺めていた。
けれど、ゼノは構うことなく土下座を続ける。
「こんなことで許されるとは思ってないけど……。俺にできることがあれば何でも言ってくれ」
「っ」
「力になれることはないか? 聖女様の役に立ちたいんだ」
モニカは、玄関ポーチに額を押し当て続けるゼノの姿を見下ろしながら、静かに唇を噛む。
見上げずとも、ゼノには分かった。
彼女が何か口にしようと迷っている、と。
――やがて。
「ふぅ……」
モニカは小さく息を吐き出すと、観念したようにこう呟く。
「……1つだけ、あります……」
「なんだ? 俺にできることなら、なんでも言ってくれ」
そこでようやく顔を上げると、ゼノはモニカに目を向けた。
「明日の朝一番……」
「明日?」
「ここに集合です! あとは、その時に話しますからっ……!」
捨て台詞のようにそう吐きつけると、モニカは走ってその場から立ち去ってしまう。
ゼノは、狐につままれたように、彼女の後ろ姿を見送るのだった。
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