迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ

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4章

第4話

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「〔魔導ガチャ〕――発動」

 お決まりのかけ声を口にすると、ゼノの周りに緑色のサークルが出現し、10個の魔石が浮かび上がった。

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〇ガチャ結果

①☆2《アナライズ》
②☆2《竜巻》
③☆2《ミスト》
④☆2《拘束》
⑤☆2《ヒットハック》
⑥☆2《氷焉の斬鉄アイスジャベリン
⑦☆2《水月の崩叉撃ハイドロアッパー
⑧New! ☆2《クレアボヤンス》
⑨New! ☆2《追跡》
⑩New! ☆4《禁域帝の神罰モノリスクエイク

----------

「何度見てもすげぇーぜ! ゼノの〔魔導ガチャ〕は!」

「ですよね~。ゼノ様の周りに魔石が浮かび上がるたびに、綺麗で思わず見とれちゃいます♪」

 そんな話をする彼女たちを横目に見ながら、ゼノは内心興奮していた。
 
(やった! 《時渡り》の魔石以来の☆4が出たぞっ……!)

 しかも、今回は攻撃魔法だ。

 ゼノは10個の魔石を魔導袋の中にしまうと、そのまま光のディスプレイを立ち上げて、《禁域帝の神罰モノリスクエイク》の項目をタップする。

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☆4《禁域帝の神罰モノリスクエイク
内容:対象相手に土魔法によるダメージ大/1回

----------
 
(土魔法か……。これまであまり出たことがなかったな) 

 さすがに☆4の攻撃魔法ということもあって、その威力にも期待が持てた。

 慎重に使う場面を選ぼうと思いながら、ゼノはモニカとアーシャに声をかける。

「ごめん。待たせちゃって」

「いえ、わたしたちは大丈夫ですよ。ゼノ様の大切な日課を見守れて幸せです♪」

「ギルド職員を村の中で待たせたままじゃねーのか? 早く合流しようぜ」

「ああ。そうだな」

 今、3人はラチャオの村の入口に立っていた。
 早朝、ギルド職員の男と共に馬車でイニストラードを出発して、昼前には現地へと到着していたのだった。

 『少しだけ用がある』と言って、ギルド職員には先に村の中へと入ってもらっていたのだ。
 
 ゼノたちはお互いに頷き合うと、焦土と化したラチャオの村に一緒に足を踏み入れる。
 しばらく歩いたところに、ギルド職員の姿はあった。

 頭を下げると、ゼノは彼と合流する。

「お待たせしました」

「用件はもうお済ですか?」

「はい、ありがとうございます。それで……あの、本当にこの場所に村があったんでしょうか?」

「ええ。カロリング領でも比較的規模の大きい村が、数日前までここには存在していました」

 そう言われて見渡してみても、人の営みを確認できるような痕跡はほとんど残っていない。
 建物はすべて灰と化し、焼け焦げた土地がそこに広がっているだけだ。

 今もいたるところで煙が上がっており、それが悲劇の大きさを物語っているようであった。

「……いや、でもこれは正直すげぇーって……。よくこんな酷いことができたもんだぜ……」

 アーシャはそんな光景を目の当たりにして、暫しの間、唖然としていた。
 
「……」
 
 隣りに立ち並ぶモニカには、別の感情が去来しているのかもしれない。
 かつて目にした村の残像を追うように、ただ静かに目の前の景色を眺めていた。

「村は、レヴェナント旅団によって、一晩のうちにすべて焼き尽くされてしまったようです」

 ギルド職員の男はそう言うと、ある方向を指さす。

(あれが……旗?)

 地面に突き立てられたレヴェナント旅団の旗が、風になびいて禍々しく揺れていた。

「うぅっ……」

 思わずといった様子で、モニカが口元に手を当てる。
 この村で起こった惨劇を、実際に想像してしまったのかもしれない。

 幸いにも犠牲者は出なかったという話だが、村は完膚なきまでに破壊されてしまっていた。

「……血が通った人間の仕業とは、どうしても思えねー……」

 旗に目を向けながら、アーシャは拳にギュッと力を込める。
 ゼノは、彼女の言葉に頷きながら、少し気がかりだったことをギルド職員の男に訊ねた。

「今回の反逆行為で、指揮をとっていた鬼士は誰か分かりますか?」

「救出された村人たちの話では、紅のマントを羽織った集団の中心では、二本の刀を所持した男が指示を出していたようです」

「二本の刀……!? まさかっ……」

「なんだ? アーシャ、知ってるのか?」

「あぁ……。その話が本当なら、相手はかなりヤバいぜ。ゼノ……」

「わたしも聞いたことがあります。レヴェナント旅団の二刀流――序列一位のルーファウス……」

「……っ? 序列一位……?」

「はい。ルーファウスは、レヴェナント旅団の中で一番の実力者と言われています」

 モニカのその言葉に、アーシャは補足するように続ける。

「ルーファウスには、他国の領都を1人で壊滅させたっていう噂があんだよ。まさか……んな化け物が、アスターに潜伏してたなんてな……」

「なら、その男がこの村を?」

 そうゼノが訊ねると、ギルド職員はそれを否定する。

「いえ。中央で指揮をとっていたのはその者で間違いないようですが、実際に手を下していたのは、赤色の光の盾を持った少女だったという話です」

「赤色の光の盾……ですか?」

「彼女は、その盾から業火を放って、村を焼き尽くしていったそうです」

 その話を聞いてアーシャは首をひねる。

「盾から業火を放った? んなヤツが、レヴェナント旅団にいるなんて話聞いたことがないぜ」

「わたしも初耳です」

「だとしたら、鬼士のうちの1人ってことか?」

 ゼノの問いかけに、モニカは首を横に振る。

「その可能性は低いと思います。鬼士は、それぞれが構成員を率いて別々に行動を取っているので。合同で動くことはほとんどないって言われてます」

「なるほど……」

 結局、その赤色の光の盾を持った少女とは誰のことなのか。
 それは分からずじまいであった。



「……とにかくだ。相手にする連中が、最強にヤバいってことだけは間違いねーぜ」

「ですね。やっぱり、これまでの比じゃないくらい危険なクエストです……」

「そうだな。そんな者たちをこのまま野放しにしておくわけにはいかない。早く捕まえないと」

「おい、マジかよ……」

「?」

「うふふ、さすがゼノ様です♡ こんな話を聞いても、全然引き下がろうとしませんね♪」

「いや……。俺はただ、このまま放っておけないって思っただけだよ」

「くぅぅ~! やっぱゼノだな! アタシが惚れた男だけあるぜっ!」

 嬉しそうにはしゃぐ2人に目を向けながら、ゼノは真剣な表情で訊ねた。

「……でも2人とも。本当にクエストを続行してもいいのか? これから先は、何が起こるか分からないんだ。このままイニストラードへ戻ってもいいんだぞ?」

「ゼノ様に万が一があった時、真っ先に傷を癒して差し上げるのは、このわたしって言いましたよね? ですから、もちろんここで帰ることはできません」

「アタシもモニカと同じ気持ちだぜ! ゼノが魔法を発動するまでの時間稼ぎくらいはアタシにだってできるはずだ!」

「モニカ……アーシャ……」

 ゼノが何を言っても、モニカとアーシャの意志は固かった。

「ありがとう……2人とも。少しの間だけ、俺に力を貸してくれ」

 結局、ゼノたちは誰1人欠けることなく、今回のクエストに臨むこととなった。



 ◆



 ギルド職員の男が馬車でイニストラードに戻ってしまうと、ゼノは改めて焦土と化した村を見渡した。

「それで……これからどうしましょう、ゼノ様? この村は、カロリング侯爵騎士団が調査済みで、レヴェナント旅団の足取りは発見できなかったっていう話ですけど」

「連中は身を隠すのが上手いことで有名だからな。多分、普通に探してもアジトは見つからないと思うぜ?」

「うん、分かってる。一つ試したいことがあるんだ」

「試したいこと……ですか?」

「実はさっき、こういう魔石を手に入れて……」

 そう言いながら、ゼノは魔導袋の中から1つの魔石を取り出す。

「んだよ、それ」

「《追跡》っていう魔石なんだが、調べたら、対象相手の足取りを必ず辿ることができるっていう魔法が使えるみたいなんだ」

「《時渡り》の魔法みたいな感じなんでしょうか? 過去に戻って、対象相手の足取りを調べるみたいな?」

「どうかな……。あれよりはレアリティが低い魔石なんだけど、多分、これも十分に使えると思うから」

「おっし! なら、ゼノのその魔法でレヴェナント旅団の足取りを辿ろうぜっ!」

 アーシャの言葉に頷くと、ゼノは聖剣クレイモアをホルスターから抜き出して《追跡》の魔石をセットする。

 そして、すぐに詠唱するのだった。
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