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臆病者は夢を見る
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SED:キリト(誠)
(わー……ほんとに公孝さんとご飯食べてる……)
緊張のせいで変なテンションになり、つい公孝さんの「可愛さ」を熱弁してしまった。公孝さんは「なるほど?」と不思議そうにしながらも、ちゃんと最後まで聞いてくれた。
(これが大人の余裕ってやつか……)
少し悔しく思いつつも、料理とお酒が運ばれてくる。二人で「乾杯!」とグラスを合わせ、食事が始まった。
「なんか……夢みたいだなぁ、こうして誠君とご飯食べてるなんて。数ヶ月前は想像もできなかったよ」「そうですね……俺もです」
夢のようだ。本当に、好きな人とご飯を食べられるなんて。
「誠君、俺のことすぐ見つけられた? この帽子、あんまり目立たないから心配してたんだ」
紺色のアーミーハットを持ち上げて見せる公孝さん。確かによくある色味だし、似たような帽子をかぶっている人はちらほらいた。だが俺は駅を出た瞬間、迷わず彼を見つけられた。理由はわからない。ただ、確信があった。この人が俺の公孝さんだ、と。
「すぐわかりましたよ! 俺の愛を舐めないでもらいたいですね」
と、冗談めかしてサワーをひと口。
「愛か。すごいな。でも正直、声かけられてびっくりしたよ。なんとなくイケメンな気がするとは思ってたんだけど……ほんとにイケメンが来るとはって。俺、隣歩いて大丈夫かなって心配しちゃった」
「え! 俺、イケメンですか!?」
「うん。モテたでしょ?」
その質問に、少し返答をためらう。学生時代、異性から告白されたことはあった。でも俺が好きになるのは男だけ。同性を好きになったことはあっても、好きになってもらったことは一度もない。
「ん~モテたことはないですねぇ~」
「え!? ウッソ……誠君の周り、おかしいんじゃない?」
「ひどい言いよう(笑)」
待っているだけじゃダメだと、自分から動いたこともあった。でも結局「人懐っこい奴」止まり。気持ち悪いと思われて離れられるのが怖かった。
「(結局、意気地なしなんだよな……)公孝さんは?」
「それ俺に聞く? モテてるように見える?」
「俺にはモテモテですよ」
「初めてのモテ期が来たな。これで察してくれ」
ならばと彼女はいたのかと聞くと、「昔ね」と遠い目。ちょっと胸がざわつく。
「別れてからどれくらい経つんですか?」
「えー……大学三年で付き合って、就職して少しして別れたんだよね。それが最初で最後かな」
「新しい彼女とか作らなかったんですか?」
「うん。誠君は? 彼女作らないの?」
グサリと来た。
「……俺は、“彼女”は作らないですね……」
視線を逸らし、サワーを口に運ぶ。危うい言い回しをしてしまった。気づかれるかもと心臓が跳ねる。もう一口、誤魔化すように飲んだ。
「ふーん。まぁ無理に作るもんでもないしね。こういうのって一期一会? ……合ってるかな、まぁそんな感じだよね」
「そうっすね……」
公孝さんは特に気づいた様子もなく、牛タンを頬張って「うまぁ」と笑った。ほっとしつつも、また喉が渇き、お酒を口にする。
「公孝さんのタイプってどんな人なんですか?」
「タイプかぁ……誠実な人かな」
「俺じゃないですか!」
「あはは! 確かにそうだ!」
目尻を下げて笑う。その笑顔が嬉しくて、俺もつい笑う。
「顔は? 俺、タイプに入ります?」
「顔ぉ……そうだね、タイプかも」
「やったー」
ふざけた調子の裏で、自分の本気が冗談扱いされる痛みを感じる。いつもそうだ。届かない。
「俺も公孝さんタイプです。ドストライクです」
「お、ほんと? 嬉しいな。どの辺がドストライク?」
ああ、気づいてほしい。でも気づかないでほしい。また一口お酒を飲み、ちょけたふりで答える。
――きっと俺は、ずっとこうやってビクビクしながら生きていくんだろうな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
SED:トナリ(公孝)
「ま、誠くん……大丈夫? ちょっと酔っ払ってるかな?」
「ん~、よってないですっ!」
ニコニコ顔の誠くんは、すでに真っ赤だ。そんなに飲んだか……と記憶をたどっても、サワーを二杯飲んだだけだ。
(……お酒、弱かったのか)
新たな一面を発見したなと思いながら、お水を注文する。気分が悪くなる前に切り上げるか――そう考えていたとき、誠くんがじっとこちらを見ていることに気づいた。
「ん? どうしたの?」
「んふふふ……公孝さんとご飯食べてるなぁって」
今日、何度も聞いたセリフだ。どうしてこんなに好かれているのかは分からないが、嫌われるよりずっといい。むしろ嬉しいので、俺も笑って「ご飯食べてるね~」と返す。
「あぁっ!!!!」
「え、なに?!」
突然、誠くんは大声を上げ、両手で顔を覆って天を仰いだ。
「そんな急に動いたら、お酒回るって……あ、お水きた。ほら、飲みな?」
心配になって隣に移動し、グラスを差し出す。誠くんは指の隙間から俺をちらりと見て、おずおずと受け取り――ちびちびと飲み始めた。
「で、なんで急に叫んだの」
「……公孝さんが可愛いことするから」
「したっけ?」
「しました。ねーって、ね~って言いました。俺を見ながら、ね~って。罪です、反則です。なので、家まで送ってください」
……何を言ってんだこの子。
ちょっと拗ねたみたいに口を尖らせて言えば何でも許されると思ってるな?俺は知ってるぞ。これを“あざとい”と言うんだろう。
しかし、残念ながら効果は抜群だ。
「はいはい。明日俺休みだし、送ってあげよう」
「ほんとですか!」
パァッと花が咲くような笑顔。つい苦笑していると、誠くんは両手を広げて抱きついてきた。
「嬉しい! 優しい! 好きぃ~!」
「はいはい……もう一人で帰すの心配だからね」
背中をぽんぽんと叩きながら、次はお酒を控えさせようと心に決める。
なかなか離れない彼をなんとか宥め、お会計を済ませたが、その後も大変だった。フラフラ歩く誠くんを見かねて、「ごめんね」と一言断りを入れてから腕を組み、少し引っ張るように駅へ向かう。彼は終始ご機嫌だ。
「着いたらゲームしましょ! あ、映画もいいな! お泊まりだー!」
「え、俺泊まるの? 送るだけのつもりだったけど」
「……泊まってくれないんですか?」
――初めて見た。犬の耳。
なるほど、これは断れない。
心の中で理性が削られていくのを感じながら、「わかった、泊まるからそんな顔すんな」と折れると、今度は尻尾が見えた。ぶんぶん振っている。
最寄り駅に着くころには、誠くんはウトウトし始めていて俺は大焦り。
「まだ寝ないで。マンションの場所知らないからね?」
「うー……」
時間との戦いだ。なんとか案内させ、到着。エレベーターではしゃがみ込んでしまった彼を必死で立たせ、肩を貸して歩く。
「着いた! 鍵は?」
「ん……」
「これ? 開けるよ」
反応が鈍い彼のポケットから鍵を取り出し、部屋に入る。靴を脱がせ、廊下を進むと、ドアの隙間からベッドが見えた。しめた、とそのまま寝かせる。
「誠くん? 寝る前に水飲める?」
うっすら開いた目。届いているか微妙だが、再度聞くと、少し体を横にしてくれたので、ペットボトルを口元にあてがって飲ませる。飲み終えた彼は、そのまま夢の中へ。
「ふー……一仕事終えた……」
玄関を施錠し、廊下を眺める。
「人ん家をうろつくのもな……でも俺も休む場所はほしい。一緒に寝るわけにもいかんし」
とりあえず進んだ先の扉を開けると、ソファーがあった。助かった、と腰を下ろす。
それにしても立派なマンションだ。これがゲーム実況の稼ぎ……俺の倍はあるだろう。
「……虚しくなるからやめよ」
誠くんに飲ませた水の残りを飲み干し、ソファーに横になり、ぼんやりしているうちに俺も夢の世界へ落ちていった。
ーーーーーーーーーーーーーー
お気に入り登録、いいね、ありがとうございます。
やる気が出ます。
もうキリト君お酒弱かったですねぇ。これでよく飲めますなんて言ったもんだな。
(わー……ほんとに公孝さんとご飯食べてる……)
緊張のせいで変なテンションになり、つい公孝さんの「可愛さ」を熱弁してしまった。公孝さんは「なるほど?」と不思議そうにしながらも、ちゃんと最後まで聞いてくれた。
(これが大人の余裕ってやつか……)
少し悔しく思いつつも、料理とお酒が運ばれてくる。二人で「乾杯!」とグラスを合わせ、食事が始まった。
「なんか……夢みたいだなぁ、こうして誠君とご飯食べてるなんて。数ヶ月前は想像もできなかったよ」「そうですね……俺もです」
夢のようだ。本当に、好きな人とご飯を食べられるなんて。
「誠君、俺のことすぐ見つけられた? この帽子、あんまり目立たないから心配してたんだ」
紺色のアーミーハットを持ち上げて見せる公孝さん。確かによくある色味だし、似たような帽子をかぶっている人はちらほらいた。だが俺は駅を出た瞬間、迷わず彼を見つけられた。理由はわからない。ただ、確信があった。この人が俺の公孝さんだ、と。
「すぐわかりましたよ! 俺の愛を舐めないでもらいたいですね」
と、冗談めかしてサワーをひと口。
「愛か。すごいな。でも正直、声かけられてびっくりしたよ。なんとなくイケメンな気がするとは思ってたんだけど……ほんとにイケメンが来るとはって。俺、隣歩いて大丈夫かなって心配しちゃった」
「え! 俺、イケメンですか!?」
「うん。モテたでしょ?」
その質問に、少し返答をためらう。学生時代、異性から告白されたことはあった。でも俺が好きになるのは男だけ。同性を好きになったことはあっても、好きになってもらったことは一度もない。
「ん~モテたことはないですねぇ~」
「え!? ウッソ……誠君の周り、おかしいんじゃない?」
「ひどい言いよう(笑)」
待っているだけじゃダメだと、自分から動いたこともあった。でも結局「人懐っこい奴」止まり。気持ち悪いと思われて離れられるのが怖かった。
「(結局、意気地なしなんだよな……)公孝さんは?」
「それ俺に聞く? モテてるように見える?」
「俺にはモテモテですよ」
「初めてのモテ期が来たな。これで察してくれ」
ならばと彼女はいたのかと聞くと、「昔ね」と遠い目。ちょっと胸がざわつく。
「別れてからどれくらい経つんですか?」
「えー……大学三年で付き合って、就職して少しして別れたんだよね。それが最初で最後かな」
「新しい彼女とか作らなかったんですか?」
「うん。誠君は? 彼女作らないの?」
グサリと来た。
「……俺は、“彼女”は作らないですね……」
視線を逸らし、サワーを口に運ぶ。危うい言い回しをしてしまった。気づかれるかもと心臓が跳ねる。もう一口、誤魔化すように飲んだ。
「ふーん。まぁ無理に作るもんでもないしね。こういうのって一期一会? ……合ってるかな、まぁそんな感じだよね」
「そうっすね……」
公孝さんは特に気づいた様子もなく、牛タンを頬張って「うまぁ」と笑った。ほっとしつつも、また喉が渇き、お酒を口にする。
「公孝さんのタイプってどんな人なんですか?」
「タイプかぁ……誠実な人かな」
「俺じゃないですか!」
「あはは! 確かにそうだ!」
目尻を下げて笑う。その笑顔が嬉しくて、俺もつい笑う。
「顔は? 俺、タイプに入ります?」
「顔ぉ……そうだね、タイプかも」
「やったー」
ふざけた調子の裏で、自分の本気が冗談扱いされる痛みを感じる。いつもそうだ。届かない。
「俺も公孝さんタイプです。ドストライクです」
「お、ほんと? 嬉しいな。どの辺がドストライク?」
ああ、気づいてほしい。でも気づかないでほしい。また一口お酒を飲み、ちょけたふりで答える。
――きっと俺は、ずっとこうやってビクビクしながら生きていくんだろうな。
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「ま、誠くん……大丈夫? ちょっと酔っ払ってるかな?」
「ん~、よってないですっ!」
ニコニコ顔の誠くんは、すでに真っ赤だ。そんなに飲んだか……と記憶をたどっても、サワーを二杯飲んだだけだ。
(……お酒、弱かったのか)
新たな一面を発見したなと思いながら、お水を注文する。気分が悪くなる前に切り上げるか――そう考えていたとき、誠くんがじっとこちらを見ていることに気づいた。
「ん? どうしたの?」
「んふふふ……公孝さんとご飯食べてるなぁって」
今日、何度も聞いたセリフだ。どうしてこんなに好かれているのかは分からないが、嫌われるよりずっといい。むしろ嬉しいので、俺も笑って「ご飯食べてるね~」と返す。
「あぁっ!!!!」
「え、なに?!」
突然、誠くんは大声を上げ、両手で顔を覆って天を仰いだ。
「そんな急に動いたら、お酒回るって……あ、お水きた。ほら、飲みな?」
心配になって隣に移動し、グラスを差し出す。誠くんは指の隙間から俺をちらりと見て、おずおずと受け取り――ちびちびと飲み始めた。
「で、なんで急に叫んだの」
「……公孝さんが可愛いことするから」
「したっけ?」
「しました。ねーって、ね~って言いました。俺を見ながら、ね~って。罪です、反則です。なので、家まで送ってください」
……何を言ってんだこの子。
ちょっと拗ねたみたいに口を尖らせて言えば何でも許されると思ってるな?俺は知ってるぞ。これを“あざとい”と言うんだろう。
しかし、残念ながら効果は抜群だ。
「はいはい。明日俺休みだし、送ってあげよう」
「ほんとですか!」
パァッと花が咲くような笑顔。つい苦笑していると、誠くんは両手を広げて抱きついてきた。
「嬉しい! 優しい! 好きぃ~!」
「はいはい……もう一人で帰すの心配だからね」
背中をぽんぽんと叩きながら、次はお酒を控えさせようと心に決める。
なかなか離れない彼をなんとか宥め、お会計を済ませたが、その後も大変だった。フラフラ歩く誠くんを見かねて、「ごめんね」と一言断りを入れてから腕を組み、少し引っ張るように駅へ向かう。彼は終始ご機嫌だ。
「着いたらゲームしましょ! あ、映画もいいな! お泊まりだー!」
「え、俺泊まるの? 送るだけのつもりだったけど」
「……泊まってくれないんですか?」
――初めて見た。犬の耳。
なるほど、これは断れない。
心の中で理性が削られていくのを感じながら、「わかった、泊まるからそんな顔すんな」と折れると、今度は尻尾が見えた。ぶんぶん振っている。
最寄り駅に着くころには、誠くんはウトウトし始めていて俺は大焦り。
「まだ寝ないで。マンションの場所知らないからね?」
「うー……」
時間との戦いだ。なんとか案内させ、到着。エレベーターではしゃがみ込んでしまった彼を必死で立たせ、肩を貸して歩く。
「着いた! 鍵は?」
「ん……」
「これ? 開けるよ」
反応が鈍い彼のポケットから鍵を取り出し、部屋に入る。靴を脱がせ、廊下を進むと、ドアの隙間からベッドが見えた。しめた、とそのまま寝かせる。
「誠くん? 寝る前に水飲める?」
うっすら開いた目。届いているか微妙だが、再度聞くと、少し体を横にしてくれたので、ペットボトルを口元にあてがって飲ませる。飲み終えた彼は、そのまま夢の中へ。
「ふー……一仕事終えた……」
玄関を施錠し、廊下を眺める。
「人ん家をうろつくのもな……でも俺も休む場所はほしい。一緒に寝るわけにもいかんし」
とりあえず進んだ先の扉を開けると、ソファーがあった。助かった、と腰を下ろす。
それにしても立派なマンションだ。これがゲーム実況の稼ぎ……俺の倍はあるだろう。
「……虚しくなるからやめよ」
誠くんに飲ませた水の残りを飲み干し、ソファーに横になり、ぼんやりしているうちに俺も夢の世界へ落ちていった。
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もうキリト君お酒弱かったですねぇ。これでよく飲めますなんて言ったもんだな。
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