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埋まっていた番号1
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突然、一通のメールが届いた。
【急募】明後日、出勤できる人
大規模作戦につき、100人募集
勤務時間:3時間
日当:1万円
------
ディヴァイアンに登録しているメンバー全員に、一斉送信されたものだろう。
最近はクロウ様やボスからの呼び出しが続いていたけれど、こういう単発の仕事も悪くない。
なにより、たった3時間で1万円。
正直、かなり条件のいいバイトだ。
これまで引き受けてきた雑多な仕事でも、現場に集まるのは多くて30人ほどだった。
それが今回は「100人募集」。
相当な規模だな――そんなことをぼんやり考えているうちに、気づけば申し込みボタンを押していた。
「コード入力、必要なのか……」
365と打ち込み、そのまま送信。
最近はカフェのシフトもあまり入れていなかったせいで、少し懐が心もとない。
だからこそ、この話は渡りに船だった。
バーのバイトも休みだし、タイミングとしては申し分ない。
1万円あれば、少し贅沢して、評判のいいホテルのスイーツビュッフェにも行ける。
そう思うと、自然と頬が緩んだ。
申し込みを終えた直後、誰かから連絡が来たのか、スマホが通知音を鳴らした。
差出人は「緑谷」。
『怪我だけはしないように、お気をつけて』
――いや、早すぎないか。
今しがた申し込みを完了したばかりなのに、どこから情報を掴んでるんだ、こいつは。
とはいえ、今さら驚くことでもない。
「まぁ、いつものことか」と深く考えず、スマホを伏せた。
明後日はどうせグリーンも現場にいるだろうし、きっと大事にはならないはずだ。
何事もなく終わってくれればいいな、とぼんやり考えながら、そのまま時間をやり過ごした。
******************
当日、集合時間の30分前に指定された場所へ到着した。さすが「大規模作戦」を謳うだけあって、受付にはすでに長い列ができている。俺は列の最後尾へと並んだ。
大規模とはいえ、雑魚バイトに求められる役割はいつも同じだ。早々にヒーローにやられて、適当に地面に転がっていればいい。それ以上でも以下でもない。
しばらく待っていると、ようやく自分の番が回ってきた。
「はじめてですか?」
「いえ」
「では、コード番号をお願いします」
「365番です」
そう答えた瞬間、受付の人の表情があからさまに変わった。面倒くさそうに目を細め、わざとらしいほど深いため息までつく。
「……あなたもですか」
その一言が妙に引っかかった。
いや、“も”ってなんだよ。
「365番は、あなたで四人目ですよ」
「……はい?」
つまり、俺の前にすでに三人も“365番”が受付を済ませているということか。
あれ、番号を間違えたか? まあ正直、何番でも構わないんだけど。
とはいえ、あそこまで露骨に嫌そうな顔をされると、さすがに癪に障る。
もっとも、この人が悪いわけでもないのは分かっているので、文句は胸の内に飲み込んだ。
「……なにか、証明できるものは?」
証明?
番号は個人情報と紐づいて管理されているはずだ。なら身分証でも見せれば済む話なんだろう。
だが俺としては、そこまでして365番にこだわる理由もない。
「別に、新しい番号でいいですよ」
「……その場合、再度新規手続きが必要になりますが、よろしいですか」
「はい」
「わかりました。では、あちらで再度お手続きをお願いします」
受付の隣に置かれた長机へ案内され、俺は書類に視線を落とした。淡々と必要事項を埋め、すべての手続きが終わると、ダサい真っ黒のスーツと一緒に、ナンバープレートが手渡される。
「今回は、着用したスーツの左胸に、このプレートを取り付けてください」
「わかりました」
そう答えながら、プレートに刻まれた番号を確認する。
――532番。
(ちゃんと反応できるかな……532)
365番という番号には、いつの間にかずいぶん馴染んでいた気がする。
そもそも、この番号は団体行動を円滑にするために割り振られた、ただの番号にすぎない。
全員が真っ黒な全身スーツに身を包み、個人を識別できない状況で、頼りになるのは胸元に掲げられた番号だけだろう。
一人くらいなら、単なる手違いとして片づけられただろう。だが、同じ番号を名乗る者が三人も存在するとなると、話は別だ。
考えたところで答えが出るはずもない。
俺は思考を打ち切り、支給されたスーツに着替えるため、更衣室へと足を向けた。
その途中、胸に「365」と記された名札をつけた誰かと、すれ違ったような気がした。
【急募】明後日、出勤できる人
大規模作戦につき、100人募集
勤務時間:3時間
日当:1万円
------
ディヴァイアンに登録しているメンバー全員に、一斉送信されたものだろう。
最近はクロウ様やボスからの呼び出しが続いていたけれど、こういう単発の仕事も悪くない。
なにより、たった3時間で1万円。
正直、かなり条件のいいバイトだ。
これまで引き受けてきた雑多な仕事でも、現場に集まるのは多くて30人ほどだった。
それが今回は「100人募集」。
相当な規模だな――そんなことをぼんやり考えているうちに、気づけば申し込みボタンを押していた。
「コード入力、必要なのか……」
365と打ち込み、そのまま送信。
最近はカフェのシフトもあまり入れていなかったせいで、少し懐が心もとない。
だからこそ、この話は渡りに船だった。
バーのバイトも休みだし、タイミングとしては申し分ない。
1万円あれば、少し贅沢して、評判のいいホテルのスイーツビュッフェにも行ける。
そう思うと、自然と頬が緩んだ。
申し込みを終えた直後、誰かから連絡が来たのか、スマホが通知音を鳴らした。
差出人は「緑谷」。
『怪我だけはしないように、お気をつけて』
――いや、早すぎないか。
今しがた申し込みを完了したばかりなのに、どこから情報を掴んでるんだ、こいつは。
とはいえ、今さら驚くことでもない。
「まぁ、いつものことか」と深く考えず、スマホを伏せた。
明後日はどうせグリーンも現場にいるだろうし、きっと大事にはならないはずだ。
何事もなく終わってくれればいいな、とぼんやり考えながら、そのまま時間をやり過ごした。
******************
当日、集合時間の30分前に指定された場所へ到着した。さすが「大規模作戦」を謳うだけあって、受付にはすでに長い列ができている。俺は列の最後尾へと並んだ。
大規模とはいえ、雑魚バイトに求められる役割はいつも同じだ。早々にヒーローにやられて、適当に地面に転がっていればいい。それ以上でも以下でもない。
しばらく待っていると、ようやく自分の番が回ってきた。
「はじめてですか?」
「いえ」
「では、コード番号をお願いします」
「365番です」
そう答えた瞬間、受付の人の表情があからさまに変わった。面倒くさそうに目を細め、わざとらしいほど深いため息までつく。
「……あなたもですか」
その一言が妙に引っかかった。
いや、“も”ってなんだよ。
「365番は、あなたで四人目ですよ」
「……はい?」
つまり、俺の前にすでに三人も“365番”が受付を済ませているということか。
あれ、番号を間違えたか? まあ正直、何番でも構わないんだけど。
とはいえ、あそこまで露骨に嫌そうな顔をされると、さすがに癪に障る。
もっとも、この人が悪いわけでもないのは分かっているので、文句は胸の内に飲み込んだ。
「……なにか、証明できるものは?」
証明?
番号は個人情報と紐づいて管理されているはずだ。なら身分証でも見せれば済む話なんだろう。
だが俺としては、そこまでして365番にこだわる理由もない。
「別に、新しい番号でいいですよ」
「……その場合、再度新規手続きが必要になりますが、よろしいですか」
「はい」
「わかりました。では、あちらで再度お手続きをお願いします」
受付の隣に置かれた長机へ案内され、俺は書類に視線を落とした。淡々と必要事項を埋め、すべての手続きが終わると、ダサい真っ黒のスーツと一緒に、ナンバープレートが手渡される。
「今回は、着用したスーツの左胸に、このプレートを取り付けてください」
「わかりました」
そう答えながら、プレートに刻まれた番号を確認する。
――532番。
(ちゃんと反応できるかな……532)
365番という番号には、いつの間にかずいぶん馴染んでいた気がする。
そもそも、この番号は団体行動を円滑にするために割り振られた、ただの番号にすぎない。
全員が真っ黒な全身スーツに身を包み、個人を識別できない状況で、頼りになるのは胸元に掲げられた番号だけだろう。
一人くらいなら、単なる手違いとして片づけられただろう。だが、同じ番号を名乗る者が三人も存在するとなると、話は別だ。
考えたところで答えが出るはずもない。
俺は思考を打ち切り、支給されたスーツに着替えるため、更衣室へと足を向けた。
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