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埋まっていた番号2
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全身を真っ黒なスーツで覆い、胸元には「532」と刻まれたプレートを付け、俺は現場へ向かった。
すでに戦場には、同じ装いの雑魚たちがずらりと並んでいる。
番号は関係なく、到着した者から順に、適当に配置されているようだ。俺も指示された場所へと立つ。しばらくすると…
「……全員、揃ったか」
低く響いたその声に、場の空気が一瞬で引き締まる。
声の主は、ディヴァイアンの幹部――クロウ。今日の作戦の指揮官は、どうやら彼らしい。
クロウは腕を組んだまま、何かを探すようにゆっくりと視線を巡らせていた。
人数を数えているにしては、ひとりひとりを見据える時間が、明らかに長すぎる。まるで、特定の誰かを探しているようだ。
「……どういうことだ」
何かに気づいたのか、クロウは険しい表情のまま、低く静かな声を漏らす。
その言葉の続きを口にする前だった。
「ヒーロー!見参!!」
やけに通りのいい自己紹介とともに、正義の戦隊――ゼットレンジャーが姿を現した。
その瞬間、張り詰めていた空気は一気に臨戦態勢へと切り替わり、戦場は否応なく、いつもの“開幕”へと突き落とされる。
レッド、ブルー、イエロー、ピンク……そして当然、グリーンの姿もあった。
いつもとは番号も違うし、これだけの人数だ。
さすがのグリーンも、俺の存在には気づかないんじゃないか――そう思った、その時だった。
グリーンが、こちらを見ている……ような気がした。
すぐに視線は逸らされたが、確かに目が合った――そんな感触だけが残る。気のせいか…?
「お前たち、奴らを倒すんだ!」
クロウの号令と同時に、戦闘が始まった。
始まったとはいえ、こちらは所詮バイトの寄せ集めだ。
ヒーローたちに敵うはずもなく、雑魚たちは次々と薙ぎ倒され、いつもの光景が淡々と積み上がっていく。
俺も早々にやられて、さっさと離脱させてもらおう。
そう思いながら、混戦の中へと足を踏み出した。
味方が次々と倒れていく喧騒の中ーー
「あ、365番み~っけ!現場で会うの、久しぶりじゃない?」
やけに明るいイエローの声が響き、はっきりと俺の――旧番号を呼んだ。
一瞬、反射的に体が反応しかける。だが、すぐに思い直す。今の俺の番号は532番だ。365じゃない。つまり、俺じゃない。
――そういうことにしておこう。
「……って、あれ? なんか身長縮んだ? 頭の位置が……」
首をかしげながら、イエローが距離を詰める。そして、365番のナンバープレートを掲げた雑魚の頭に、ぽん、と軽く手を置いた。
その瞬間、イエローは「しまった」という顔で、慌ててグリーンの方を振り返る。
だが、当のグリーンは――何の反応も示さなかった。
止める気配も、驚く様子もない。ただ静かに、その光景を眺めているだけだ。それが逆におかしくて、今度はイエローの方が首をひねる。
「あっれ? いつもなら絶対怒られるのに……」
明らかに異常な状況に、イエローの声にはわずかな焦りが滲んだ。
「イエロー!ねぇ、こっちにも365番いた!」
少し離れた場所で戦っていたレッドが、場の空気も読まずに声を張り上げる。
「あれ、でもなんかちょっと……太った?」
そう言ってレッドの前に立つ365番は、どう見ても俺の倍はある体格だ。ちょっと、じゃねぇだろ。
そしてあんまり365番を連呼しないでほしいんですけど。
旧番号とはいえ、別に目立ちたいわけじゃない。
というか雑魚バイトの番号を呼ぶな。関係ないだろ。
そんな俺の願いをあざ笑うかのように、背後からクロウの声が静かに響いた。
「……なぜ3人も、“365番”がいるんだ……」
そう言いながら頭を抱えるクロウ。
三人も、ってことは…俺の前に受付を済ませた連中、全員365番を名乗ってるってことか?
……え、意味がわからん。番号の意味とは。
さっきレッドとイエローが「365番を見つけた」と言っていた。ということは少なくともあと一人、どこかにいるってことか。
「まさか、敵の戦略……?グリーンが365番に執着してるのを知っての、罠とか……?」
少し楽しそうに、ピンクがそんな考察を口にする。
だが、その言葉はあっさりと遮られた。
「違いますよ」
即答だった。
グリーンは一切迷うことなく、淡々と言い切る。
「クロウも動揺していますしね。少なくとも、敵の仕込みではありません」
断言するその口調には、妙な確信が滲んでいて――
理由も分からないまま、背筋がひやりとした。
……これは、めんどくさくなるやつだ。そうなる前に、さっさとやられてしまおう。
気づけば、目の前にはブルーが迫っている。力加減をしてくれそうなタイプではなさそうだが、構わない。
やられてしまえば、こっちのものだ。
そう思った、その瞬間だった。
――視界の端で、緑色が“消えた”。
「……あ」
瞬きをした次の瞬間には、もうそこにいない。
さっきまでピンクの隣に立っていたはずのグリーンの姿が、忽然と消えていた。
そして次の刹那。
ブルーが踏み込むよりも早く、俺とブルーの間に、影が滑り込む。
「そこは、私の担当です」
気配も、予兆もなかった。まるで最初からそこにいたかのように――
グリーンは、俺の目の前に立っていた。
すでに戦場には、同じ装いの雑魚たちがずらりと並んでいる。
番号は関係なく、到着した者から順に、適当に配置されているようだ。俺も指示された場所へと立つ。しばらくすると…
「……全員、揃ったか」
低く響いたその声に、場の空気が一瞬で引き締まる。
声の主は、ディヴァイアンの幹部――クロウ。今日の作戦の指揮官は、どうやら彼らしい。
クロウは腕を組んだまま、何かを探すようにゆっくりと視線を巡らせていた。
人数を数えているにしては、ひとりひとりを見据える時間が、明らかに長すぎる。まるで、特定の誰かを探しているようだ。
「……どういうことだ」
何かに気づいたのか、クロウは険しい表情のまま、低く静かな声を漏らす。
その言葉の続きを口にする前だった。
「ヒーロー!見参!!」
やけに通りのいい自己紹介とともに、正義の戦隊――ゼットレンジャーが姿を現した。
その瞬間、張り詰めていた空気は一気に臨戦態勢へと切り替わり、戦場は否応なく、いつもの“開幕”へと突き落とされる。
レッド、ブルー、イエロー、ピンク……そして当然、グリーンの姿もあった。
いつもとは番号も違うし、これだけの人数だ。
さすがのグリーンも、俺の存在には気づかないんじゃないか――そう思った、その時だった。
グリーンが、こちらを見ている……ような気がした。
すぐに視線は逸らされたが、確かに目が合った――そんな感触だけが残る。気のせいか…?
「お前たち、奴らを倒すんだ!」
クロウの号令と同時に、戦闘が始まった。
始まったとはいえ、こちらは所詮バイトの寄せ集めだ。
ヒーローたちに敵うはずもなく、雑魚たちは次々と薙ぎ倒され、いつもの光景が淡々と積み上がっていく。
俺も早々にやられて、さっさと離脱させてもらおう。
そう思いながら、混戦の中へと足を踏み出した。
味方が次々と倒れていく喧騒の中ーー
「あ、365番み~っけ!現場で会うの、久しぶりじゃない?」
やけに明るいイエローの声が響き、はっきりと俺の――旧番号を呼んだ。
一瞬、反射的に体が反応しかける。だが、すぐに思い直す。今の俺の番号は532番だ。365じゃない。つまり、俺じゃない。
――そういうことにしておこう。
「……って、あれ? なんか身長縮んだ? 頭の位置が……」
首をかしげながら、イエローが距離を詰める。そして、365番のナンバープレートを掲げた雑魚の頭に、ぽん、と軽く手を置いた。
その瞬間、イエローは「しまった」という顔で、慌ててグリーンの方を振り返る。
だが、当のグリーンは――何の反応も示さなかった。
止める気配も、驚く様子もない。ただ静かに、その光景を眺めているだけだ。それが逆におかしくて、今度はイエローの方が首をひねる。
「あっれ? いつもなら絶対怒られるのに……」
明らかに異常な状況に、イエローの声にはわずかな焦りが滲んだ。
「イエロー!ねぇ、こっちにも365番いた!」
少し離れた場所で戦っていたレッドが、場の空気も読まずに声を張り上げる。
「あれ、でもなんかちょっと……太った?」
そう言ってレッドの前に立つ365番は、どう見ても俺の倍はある体格だ。ちょっと、じゃねぇだろ。
そしてあんまり365番を連呼しないでほしいんですけど。
旧番号とはいえ、別に目立ちたいわけじゃない。
というか雑魚バイトの番号を呼ぶな。関係ないだろ。
そんな俺の願いをあざ笑うかのように、背後からクロウの声が静かに響いた。
「……なぜ3人も、“365番”がいるんだ……」
そう言いながら頭を抱えるクロウ。
三人も、ってことは…俺の前に受付を済ませた連中、全員365番を名乗ってるってことか?
……え、意味がわからん。番号の意味とは。
さっきレッドとイエローが「365番を見つけた」と言っていた。ということは少なくともあと一人、どこかにいるってことか。
「まさか、敵の戦略……?グリーンが365番に執着してるのを知っての、罠とか……?」
少し楽しそうに、ピンクがそんな考察を口にする。
だが、その言葉はあっさりと遮られた。
「違いますよ」
即答だった。
グリーンは一切迷うことなく、淡々と言い切る。
「クロウも動揺していますしね。少なくとも、敵の仕込みではありません」
断言するその口調には、妙な確信が滲んでいて――
理由も分からないまま、背筋がひやりとした。
……これは、めんどくさくなるやつだ。そうなる前に、さっさとやられてしまおう。
気づけば、目の前にはブルーが迫っている。力加減をしてくれそうなタイプではなさそうだが、構わない。
やられてしまえば、こっちのものだ。
そう思った、その瞬間だった。
――視界の端で、緑色が“消えた”。
「……あ」
瞬きをした次の瞬間には、もうそこにいない。
さっきまでピンクの隣に立っていたはずのグリーンの姿が、忽然と消えていた。
そして次の刹那。
ブルーが踏み込むよりも早く、俺とブルーの間に、影が滑り込む。
「そこは、私の担当です」
気配も、予兆もなかった。まるで最初からそこにいたかのように――
グリーンは、俺の目の前に立っていた。
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マイペースな更新にはなりますが、引き続きお付き合いください〜^^
大好き。ホント大好き。読み返しちゃあキュン。読み返しちゃあキュン。幸せをありがとう😌
そんなふうに何度も読んでもらえて、胸がいっぱいです。
キュンを感じてくれたことが、私も幸せです^ ^
ありがとうございます✨