正義の味方にストーカーされてます。〜俺はただの雑魚モブです〜

ゆず

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今日も見つかる雑魚モブ

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昨日のことは──
……一体なんだったんだろうか。

雑魚モブのひとりである俺に、わざわざ話しかけてきたヒーロー・グリーン。

その後すぐに撤収指示が出て、戦闘は終了。俺は何事もなかったかのように逃げ帰った。

(……まぁ、偶然だよな。たまたま、だろ)

──そんなわけで、俺は今日もディヴァイアンの戦闘員バイトに向かっている。

「おはようございます」

「ん? 新人か?」

「いえ、昨日も……」

「あー悪ぃ。人の出入り多くて、顔覚えてらんねぇんだわ」

「いえ、大丈夫です」

ディヴァイアンの戦闘員は、毎日メンバー総入れ替えみたいなもんだ。
控え室には、初顔の新人、中堅、無口なベテランが入り混じるカオスな状況。
シフトも現場も日替わり、誰が何回来てようが基本ノータッチ。まぁこんなもんだろ。

「今日の現場、グリーン来るらしいぞ」

「マジ? あいつ気まぐれで、2日連続って珍しくね?」

「幹部が来ない限りゼットレンジャーが全員揃うことなんてねーし。今日もゆるっとやろーぜ」

……グリーンといえば、昨日俺にマスクをくれようとした、例のヤバいやつ。

あれは──なんだったんだ? 気まぐれ? 悪ふざけ? それとも正義の狂気?

(……いや、気のせい。あれもたまたま)

色々考えたが、考えるだけ時間のムダだと悟った。
今日はマスクの形も違うし、立ち位置も端っこに移したし。バレる要素なんて一つもない。

……はずだ。



現場は、昨日と同じショッピングモール前の広場。
派手な爆発音と悲鳴のBGMが流れる中、バイトのモブたちが次々と華麗にやられていく。

今日のゼットレンジャーは、イエロー、そして──

(うわ、まじでいる...)

──グリーン。

とはいえ、こっちはこっちで役割がある。適当に出てきて、倒されて、帰る。それだけだ。
俺は適当なタイミングでイエローに向かって突っ込もうとした、そのとき──

「お疲れ様です。またお会いできて嬉しいです」

「っ……!?!?」

右から突然、完璧すぎるタイミングで現れたグリーン。
その動きはまるでカメラにだけ映る特殊エフェクトのように、スッと、自然に俺の視界に入り込んできた。

「昨日より少しお疲れのご様子ですね。睡眠は、しっかり取れましたか?肌のコンディションが少し荒れています。心配です」

(いやいやいやいや、マスクでわからんやろ?!)

グリーンは慣れた手つきで、ポケットから新品のマスクを取り出した。
タグ付きで、綺麗に包装されている異様に高級そうなやつ。

「本日は接触冷感仕様にいたしました。今日の気温なら、この素材が快適かと。フィット感も調整済みです。サイズは昨日のあなたに合わせました」

「……なんでサイズ知ってんだ」

「観察です」

にっこり笑うグリーン。こわい。
ていうか、なんで俺ってわかった?今日、昨日とマスクも違うし立ち位置も──

「おいグリーン!何やってんだよ!! 戦え!」

イエローが爆発の中で叫んでいる。ですね。今戦闘中ですもんね。

「うるさい。今は彼の心と肌のコンディションを守ることが私の最優先なので」

いや、怖いわ。

次々と爆破されていくモブたち。
そろそろ俺も美しく吹き飛ばされて帰りたいのだが、いま倒れたら絶対この人なんかしてくる。

(……よし、逃げよう)

イエローの爆風を利用して、自然なノリで吹き飛ばされたフリ→フェードアウトを試みる。

──が。

「どちらへ? 私のそばにいれば、安全ですよ。あなたのことは、私が守りますから」

振り返ると、グリーンが一歩、また一歩と近づいてきていた。
手には、マスクとは別に、冷却スプレーと栄養ドリンクまで持参。なにそのアイテム。どこから出した。

その異様な光景を見て、とうとう周囲のモブたちもざわめきはじめた。

「なぁ、あれ……グリーン、なんかモブと話してね?」

「てか、物渡してない?支給品?……じゃないよな、あれなに?」

「つーか、あのモブ誰? 有名人?」

──このとき、俺はまだ知らなかった。
グリーンが俺にだけ見せる“異様な優しさ”が、じわじわと他の戦闘員たちの目にも映り始めているということに。
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