3 / 71
日常に潜む影
しおりを挟む
俺は今、三つのバイトを掛け持ちしている。
ひとつはこのカフェ。もうひとつは駅前のバー。そして三つ目が──敵組織ディヴァイアンの“雑魚戦闘員”。
それぞれ週に数日、無理のない範囲でシフトを回している。どこもまあ、それなりに刺激的ではあるけど……その中で一番平和だったのが、このカフェだった。
──最近までは。
ここに、最近“やたらと目立つイケメン”が出没するようになったのだ。
最初は本当に、偶然かと思っていた。
俺のシフトは不定期。曜日も時間もバラバラで、このカフェ自体も特に繁盛しているわけじゃない。
それなのに──なぜか“そいつ”は、俺のいる時間帯に限って現れる。必ず。
(……また来てる)
いつもの窓際の席。整った顔立ちに、ミントグリーンと茶色の中間みたいな髪色。静かに本を読んで、たまにカフェラテを口に運んで──
一見すると、落ち着いたインテリ風。でも、あの体格は明らかにスポーツマン。
なんていうか……人間として完成度が高すぎて、逆に嘘くさい。
今日もその“イケメン”は俺に気づいた様子もなく、静かにページをめくっている……と思ったら、ふと視線が合って、にこと微笑んできた。
やめろ。こっちは怖いんだよ。
(……どこかで、会ったことある気がすんだよな)
そう。たとえば、あの戦場で俺の手をしつこく離さなかった、ストーカー系正義の味方──グリーン。
けどあのとき、俺は“365番”ってコードで呼ばれてたし、仮面もつけてた。顔は見せてない。
なのに、どうやって……?
いや、でも……こいつがこのカフェに現れだしたの、あの戦場のあとからなんだよな。
偶然にしては、出来すぎてる。
そういえば、駅前のバーでも見かけたことがある。
あのときも、端の席で静かにグラスを傾けてて……たしかに髪色、目立ってた。
(……もし、全部同一人物だったら……?)
背中にじわっと冷や汗が滲む。
「──あっ、すみませ...!」
ぼんやりしていたせいで、客が目の前にいたことに気づくのが遅れた。
慌てて顔を上げると、そこに立っていたのは──さっきまで考えていた、あのイケメン。
今日も完璧な髪型と服装。そして手には、妙に目立つ銀色の保冷バッグ。
「ご勤務中、すみません。お疲れ様です、365番……いえ、トオルさん」
「……え、あ、どうも……?」
……今、俺の番号呼んだ? 気のせい?
しかも名前で言われた?名札、苗字しか書かれてないんだけど...。
相手がイケメンが故に他のスタッフがこちらを気にしてるが、それどころじゃない。
「えっと……どちらさまで?」
「ご安心を。今日は戦闘支援ではなく、私的な応援です。お店、とても素敵ですね。……それと、こちらを」
そう言って保冷バッグのジッパーを開けると、彼は丁寧に小さなスイーツボックスを取り出した。
中には──俺が前に“まかない中にふと呟いた”地元の人気店のレアチーズタルトが、綺麗に三つ。
「以前、あなたが“ここのチーズタルト、まじで神”と仰っていたので……。冷蔵状態を保って持ってきました。勤務後にぜひ」
「あ、ああ……ありがとうございます……」
言ったよ。たしかに言った。でも裏でスタッフと雑談してた時とかなんだけど?
え、録音してた?それとも盗聴?スパイ?いや、ヒーローか。
「保存温度には気を遣いました。ご安心を」
そういう問題じゃない。
しかも箱の端に──俺の名前、フルネームで手書きされてる。
(……ちょっと待て、どこ情報……?)
「また来ますね。お仕事、頑張ってください」
にこっと微笑み、去っていくイケメン──もとい、おそらくグリーン。
その背中を呆然と見送りながら、俺はスイーツの箱をそっと伏せた。冷たい汗が、首筋を伝う。
(……やっぱり、グリーンだよな……?)
仮面はしてない。声も微妙に違うような気がする。うん、違うと思いたい。
スイーツは美味そうだ。でも、俺の背筋はずっと冷たいままだった。
──俺の平和な日常、どこ行った。
ひとつはこのカフェ。もうひとつは駅前のバー。そして三つ目が──敵組織ディヴァイアンの“雑魚戦闘員”。
それぞれ週に数日、無理のない範囲でシフトを回している。どこもまあ、それなりに刺激的ではあるけど……その中で一番平和だったのが、このカフェだった。
──最近までは。
ここに、最近“やたらと目立つイケメン”が出没するようになったのだ。
最初は本当に、偶然かと思っていた。
俺のシフトは不定期。曜日も時間もバラバラで、このカフェ自体も特に繁盛しているわけじゃない。
それなのに──なぜか“そいつ”は、俺のいる時間帯に限って現れる。必ず。
(……また来てる)
いつもの窓際の席。整った顔立ちに、ミントグリーンと茶色の中間みたいな髪色。静かに本を読んで、たまにカフェラテを口に運んで──
一見すると、落ち着いたインテリ風。でも、あの体格は明らかにスポーツマン。
なんていうか……人間として完成度が高すぎて、逆に嘘くさい。
今日もその“イケメン”は俺に気づいた様子もなく、静かにページをめくっている……と思ったら、ふと視線が合って、にこと微笑んできた。
やめろ。こっちは怖いんだよ。
(……どこかで、会ったことある気がすんだよな)
そう。たとえば、あの戦場で俺の手をしつこく離さなかった、ストーカー系正義の味方──グリーン。
けどあのとき、俺は“365番”ってコードで呼ばれてたし、仮面もつけてた。顔は見せてない。
なのに、どうやって……?
いや、でも……こいつがこのカフェに現れだしたの、あの戦場のあとからなんだよな。
偶然にしては、出来すぎてる。
そういえば、駅前のバーでも見かけたことがある。
あのときも、端の席で静かにグラスを傾けてて……たしかに髪色、目立ってた。
(……もし、全部同一人物だったら……?)
背中にじわっと冷や汗が滲む。
「──あっ、すみませ...!」
ぼんやりしていたせいで、客が目の前にいたことに気づくのが遅れた。
慌てて顔を上げると、そこに立っていたのは──さっきまで考えていた、あのイケメン。
今日も完璧な髪型と服装。そして手には、妙に目立つ銀色の保冷バッグ。
「ご勤務中、すみません。お疲れ様です、365番……いえ、トオルさん」
「……え、あ、どうも……?」
……今、俺の番号呼んだ? 気のせい?
しかも名前で言われた?名札、苗字しか書かれてないんだけど...。
相手がイケメンが故に他のスタッフがこちらを気にしてるが、それどころじゃない。
「えっと……どちらさまで?」
「ご安心を。今日は戦闘支援ではなく、私的な応援です。お店、とても素敵ですね。……それと、こちらを」
そう言って保冷バッグのジッパーを開けると、彼は丁寧に小さなスイーツボックスを取り出した。
中には──俺が前に“まかない中にふと呟いた”地元の人気店のレアチーズタルトが、綺麗に三つ。
「以前、あなたが“ここのチーズタルト、まじで神”と仰っていたので……。冷蔵状態を保って持ってきました。勤務後にぜひ」
「あ、ああ……ありがとうございます……」
言ったよ。たしかに言った。でも裏でスタッフと雑談してた時とかなんだけど?
え、録音してた?それとも盗聴?スパイ?いや、ヒーローか。
「保存温度には気を遣いました。ご安心を」
そういう問題じゃない。
しかも箱の端に──俺の名前、フルネームで手書きされてる。
(……ちょっと待て、どこ情報……?)
「また来ますね。お仕事、頑張ってください」
にこっと微笑み、去っていくイケメン──もとい、おそらくグリーン。
その背中を呆然と見送りながら、俺はスイーツの箱をそっと伏せた。冷たい汗が、首筋を伝う。
(……やっぱり、グリーンだよな……?)
仮面はしてない。声も微妙に違うような気がする。うん、違うと思いたい。
スイーツは美味そうだ。でも、俺の背筋はずっと冷たいままだった。
──俺の平和な日常、どこ行った。
884
あなたにおすすめの小説
悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る
桜城 寧
BL
処刑された記憶とともに、BLゲームに登場する悪役会計に転生したことに気付く。処刑されないために、チャラ男としての仮面を被り、生徒会長に媚び売ったり、どうにか能力を駆使したりして生きてたら、色々な人に構われる話。
悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
冤罪で追放された悪役令息、北の辺境で幸せを掴む~恐ろしいと噂の銀狼将軍に嫁いだら、極上の溺愛とモフモフなスローライフが始まりました~
水凪しおん
BL
「君は、俺の宝だ」
無実の罪を着せられ、婚約破棄の末に極寒の辺境へ追放された公爵令息ジュリアン。
彼を待ち受けていたのは、「北の食人狼」と恐れられる将軍グリーグとの政略結婚だった。
死を覚悟したジュリアンだったが、出会った将軍は、噂とは真逆の不器用で心優しいアルファで……?
前世の記憶を持つジュリアンは、現代知識と魔法でボロボロの要塞を快適リフォーム!
手作りスープで将軍の胃袋を掴み、特産品開発で街を救い、気づけば冷徹将軍から規格外の溺愛を受けることに。
一方、ジュリアンを捨てた王都では、破滅の足音が近づいていて――。
冤罪追放から始まる、銀狼将軍との幸せいっぱいな溺愛スローライフ、ここに開幕!
【オメガバース/ハッピーエンド/ざまぁあり/子育て/スパダリ】
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
帝に囲われていることなど知らない俺は今日も一人草を刈る。
志子
BL
ノリと勢いで書いたBL転生中華ファンタジー。
美形×平凡。
乱文失礼します。誤字脱字あったらすみません。
崖から落ちて顔に大傷を負い高熱で三日三晩魘された俺は前世を思い出した。どうやら農村の子どもに転生したようだ。
転生小説のようにチート能力で無双したり、前世の知識を使ってバンバン改革を起こしたり……なんてことはない。
そんな平々凡々の俺は今、帝の花園と呼ばれる後宮で下っ端として働いてる。
え? 男の俺が後宮に? って思ったろ? 実はこの後宮、ちょーーと変わっていて…‥。
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる