正義の味方にストーカーされてます。〜俺はただの雑魚モブです〜

ゆず

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本当に偶然ですか?

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最後に出勤してから4日後、俺はまた、ディヴァイアンの控え室にいた。

このバイト、やめた方がいいのでは?と心の中で警鐘を鳴らしつつも、実際のところ仕事内容が苦なわけではない。
むしろ、たった1時間雑魚として立っているだけで1万もらえるなんて、バイトとしては最高クラスだ。

ただ問題は──2日連続でグリーンと遭遇したこと。
正直、ちょっと、いや、だいぶ怖い。なので少し出勤を渋っていたのだが……。

今日もモブたちの控室には、たくさんの戦闘員が集まり、それぞれ黙々と準備をしている。
顔見知り同士で軽く会話しているやつもいるが、基本的には静かな雰囲気だ。

そんな中、上司格の男が本日の配置先を読み上げていく。

「えっと~お前はコード365か。前線サイドのA班に加わってくれ。ゼットレッド、ゼットピンクが出陣予定だ」

レッドとピンク。今日はグリーンがいないのか、よかった。
まぁさすがに俺のことなんて忘れてるだろう。あれだけ人が多い中の一人だし。

今日は静かに現れて、静かに消える。目立たず倒れて、給与をもらう。それでいい。それが理想だ。





だが──現場に到着して10分も経たぬうちに、予想は裏切られる。

「ちょ、なに!?レッドが“今日グリーンと交代する”とか言い出してるんだけど!?!?予定にないよね!?」

ピンクの叫びが通信機越しに響いた。

『あー、それなー。グリーン様、本部に直で“予定変更”って連絡入れたらしいわー』

……なんだそれ。ヒーローってそんなに勝手にスケジュール変更していいのか?
ていうか“様”って何??グリーンってそんなに偉かったの?

そして数分後。
突如、全戦闘員の通信機にジジッとノイズが走る。

『──こちらグリーン。少々遅れましたが現場に到着。状況報告を』

その声が入った瞬間、現場の空気がピリついた。

「おいおい……マジで来たのかよ……」「聞いてねぇぞ……」

皆がざわつく中、俺の心拍数だけが異様に跳ね上がっていた。

(ま、まさか……来ないよな。俺のとこには来ないよな……?)

──そう思ったのも束の間。

瓦礫の陰から、颯爽と現れる緑のマント。
真っ直ぐに、まるで狙いを定めたかのように、グリーンが俺の方へと歩いてくる。

(……え、嘘だろ。これ、俺?俺に向かってきてる?)

そして次の瞬間には、彼は俺の目の前に立っていた。

「お久しぶりです、365番。偶然お会いできるなんて、嬉しいです」

仮面の下からは、丁寧すぎる微笑み。なぜ、俺がここにいると??????
そして、ごく自然な動きで、俺の手を優しく握った。

(……は?)

握られた手が、じんわりと熱を持つ。グリーンの声が、また響く。

「今日は湿度が高いので、体調を崩しやすいかと思いまして。こまめな水分補給を忘れずに。……あ、こちら。補給用の水です」

差し出されたのは、やたら高級感のあるミネラルウォーター。

「冷蔵保存しておいたので、ちょうどいい温度かと」

仮面越しでもわかるほど満足げに微笑むグリーン。

「安心してください。私はあなたのサポートに徹しますので。任務に集中してくださいね」

え、まって、俺はなぜ敵であるヒーローのサポートを受けることになるんだ...?

このグリーンという男は、本当に俺のことを認識しているというのだろうか。
マスクの下の顔を見たことがあるわけでもないはずなのに、どうしてここまで──

というか、手、まだ握ってるんだけど!?

引き抜こうとしたら、それよりもわずかに早く、指先に力が込められた。
見せつけるように、決して離さない、そんな意思すら感じる強さで。

「……心拍数が高いですね。緊張していますか?あまり無理なさらずに」

(決してトキメキではない。恐怖でな!)

と、叫びたいのをぐっと堪え、なんとか手を振り解くと、俺は半歩、いや一歩、距離を取った。
しかしグリーンは微笑を崩さず、まるでそれすら計算済みであるかのように──優雅に一礼した。

その姿に、周囲の戦闘員たちは何も言わずに視線を交わす。
グリーンは、任務中であろうと、俺との接触を絶対に逃す気がないらしい。

なんなんだこの異常なヒーローは。いや、もはや正義ってなんだ。

とにかく、これだけは確実に言える。

──次は、絶対別の現場にしてもらおう。

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