空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた 〜筋力Eのひ弱少年治癒士が高みを目指す!?〜

くまみ

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前編 新たなる世界

第九話 記憶喪失と思われて

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 マリーベルと騎士長イカルロスはノエルの部屋から出て行った。

 ノエルはベッドから降り、窓の外を眺めた。

 青い空、白い雲、レンガや石、木で出来た異国の建物が見えた。

 通りを行き交う異国の服を着た人たちの、楽しそうな姿が見えた。

 車やバイク、自転車などは当然ながら見当たらない。

 「レベルにクラス、魔法、やっぱりここは異世界RPGの世界じゃねぇか!でも異世界転生の場合は赤ちゃんからやり直しじゃねぇのかな?だいたい、俺がこの体になる前の持ち主のノエルはどこに行ったんだ?」

 「どっかに隠れているんじゃないのか?」ノエルは部屋の中のタンスや引き出しを開けてみた。

 「いない……いないってことはまさか死んじゃったとか??」

 **そんなところにいるわけがないだろう?馬鹿だなぁ……**

 「ん?誰か何か言わなかったか?……」ノエルは耳を澄ませた。

 **……しーん**物音一つ聞こえてこない。

 「き、気のせいか……ま、まぁいいか……」ノエルは呟いた。

 「気を取り直して考えよう……こう言う場合は転生者はチート能力があるのが普通……なんの努力もしないで魔法が使えるなんてよくある話しだ……」

 「じゃあ俺も!……ファイアーボール!!」ノエルは窓の外に手のひらをかざし呪文を唱えた。

 **……しーん**ノエルの手のひらからは何も出なかった。

 「あれ?あっそうか……俺は魔術士じゃなくて治癒士だった。じゃあ……ヒール!!」ノエルは窓から外に向かって手のひらをかざし呪文を唱えた。

 **……しーん**やはり、ノエルの手のひらからは何も出なかった。

 「な、何でだよ!俺は治癒士じゃねぇのか?治癒士がヒール使えねぇってどういう事だよ!!ま、まさか俺はチートじゃねぇのか??……そ、そんな……」

 ノエルは床に崩れ落ちた。

 「あぁ、俺はもうおしまいだ……そもそも治癒士なんかやりたくねぇけど、その治癒士すらまともに出来ねぇ……」

 「……まぁいいか!どうせ治癒士なんて興味ないし!」ノエルはあっさり割り切った。

 「そうだ!やっぱり俺は戦士か武術士になろう!!よっしゃぁっ!正拳突き10回!一、ニ、三、四、五、六……あっ……」

 **バタン**……ノエルはふらついてて倒れてしまう。

 **ドタドタドタドタ**「ノ、ノエル大丈夫??」セリアがノエルの部屋での物音を聞きつけ階段を勢いよく駆け上がってきた。

 「ノ、ノエル!大丈夫っ!」

 「あっ、おばさん、あ、お袋!あっ、違った、母ちゃん……」

 **ビシャン!**「あんた!実の母親をおばさん呼ばわりして!!」セリアはノエルの頬を勢いよく引っ叩いた。

 (えっ?優しそうで割かし美人なのに、このおばさん結構厳しい……)ノエルは引っ叩かれてジーンと痺れた頬を抑えキョトンとした。

 「あらやだ、私ったらついカァっとなってしまったわ……ごめんなさいノエル!ほっぺたこんなに赤くなっちゃって……ヒール!」セリアはノエルの頬に手を当てて呪文をかけた。

 優しく暖かい黄色い光がノエルの頬に照らされた。

 「あれ?痺れがなくなった……」

 「もうノエルったらどうしちゃったの?あなたはもっと品があって大人しかったじゃないの……お母さん心配よ!」

 (えぇっ?俺は下品ってことか?……汗)

 「セリア、ノエルは男の子なんだからそれくらいでいいんじゃないか?今までが大人し過ぎただけだろう……」後からやってきたオスカー(父)がセリアに声を掛けた。

 「あなた……そうなのかしら?」

 「男の子は何かをキッカケに急にたくましくなるもんだよ。きっと初めて精霊獣と戦ってしかもその精霊獣はルナ・グリズリーだ。その経験が男として急激に覚醒したんだろう」

 「それよりセリア、君に指名の患者さんが来ているぞ!」

 「あっ、そうだったわ予約の患者さんが来る時間だったわ……」セリアは慌てて部屋を出て行った。

 「ノエル、お前はお前らしくすればいいんだぞ!」

 「あ、ありがとう……」

 「俺も小さい頃は体が弱くてな、治癒士じゃなくって戦士に憧れてたなぁ」

 「えっ?父ちゃんも治癒士になるのが嫌だったの?」

 (父か……前はだったのに、やっぱりうちの子変わったなぁ……汗)と、オスカーは思う。

 「いや、治癒士になるのが嫌だった訳ではないんだが……ただ戦士には憧れていたさ!男の子はみんな戦士に憧れるんだ、やっぱり見た目がカッコいいからなぁ!」

 「だよなぁ……さすが父ちゃん話がわかる!」

 「そうか?なら良かった……」
 
 (この父ちゃんなら聞いても大丈夫かなぁ?)「父ちゃん、実は俺、あの時から記憶がないんだ!俺ってどんなヤツなの?」ノエルは思い切って聞いてみた。

 「そうか、やはりそうだったのか……俺も母さんも、マリーベルの母さんのイザベルも、イカルロス様もみんなお前の変わりように心配していたけど、やはり記憶喪失だったんだな!そうか、辛かったな……」

 「父ちゃん、そ、そう何もわかんなく辛かったんだよ」(いや、本当は記憶喪失じゃなくて異世界転生なんだけど……汗)と、ノエルは思う。

 「ノエル、じゃあ色々と話してやるから何が聞きたいんだ?」

 オスカーはじっくりと話をするつもりで近くの椅子に腰掛けた。
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