空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた 〜筋力Eのひ弱少年治癒士が高みを目指す!?〜

くまみ

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前編 新たなる世界

第十三話 英雄のご子息

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 ***休み時間***

 「よぉ、ノエル。生きてたんだな……」

 昼休み、ノエルが一人で教科書を読んでいると、教室内で一際体格のいい少年が、数人の取り巻きを引き連れてノエルの机の前に立ちはだかった。

 (誰だ?こいつは……)

 少年の名は、ライオス・アルト、ノエルを助けた騎士長イカルロス様の息子である。

 ノエルと同じ十歳だが、その体つきはすで に「戦士』のそのものだった。

 ライオスの目は、ノエルに対して隠しきれない強い嫉妬しっとに満ちていた。

 「えっと……どちら様でしたっけ?」ノエルは素っ気なく返すと、ライオスの顔が真っ赤に膨れ上がった?

 「なんだとノエル!この俺を忘れたってのか!馬鹿にしやがって!お前を助けた騎士長イカルロス息子、ライオスだっ!」

 (おぉ、こいつがあのイカルロス騎士長様の息子か……。すげぇな、まだ小学生でこのガタイかよ!俺の高校時代と同じくらいだぜ。資質ってズリぃなぁ……泣)ノエルは情け無い気持ちになった。

 (不公平だっ……)ノエルは、治癒士である自分のひ弱な筋力Eの体を改めて痛感し落ち込んだ?

 「ずいぶん優雅ゆうがに本を読んでるじゃねぇか、病み上がりのくせに。どうせまた、母親に泣きついて早退するんだろ?」ライオスはノエルの顔を覗き込み、嘲笑あざわらった。

 (優雅に本を読んでいるだって??なんつー言いがかりだ!俺は仕方なく学校に来て、暇だから教科書を読んでいるだけなのに......)と、ノエルは思った。

 「別に、もう大丈夫っすよ、つまんねぇから帰れるなら帰りたいけど……」ノエルは椅子に座ったまま、淡々と答えた。

 「んだと!つまんねぇだと!?それにその変な喋り方!お前、あのルナ・グリズリーのせいで、頭打って脳みそまで柔らかくなっちまったんじゃねぇのか?」ライオスはノエルの胸元を掴みあげた。

 「どうせお前は、この学校で一番の成績を取って、早く卒業してチヤホヤされたいだけだ。勉強しかできないひ弱な能無しが!」

 ライオスは、戦士の資質を持ちながら勉強が苦手な自分と、体はひ弱なのに飛び級で卒業しようとしているノエルを、長年ねたんでいたのだ。

 「何言ってやがる!テメェの方が恵まれてるじゃねぇか!」

 「なんだと!ノエルのくせに俺をあわれんでるのか!?」

 ライオスはノエルを突き飛ばし、ノエルは床に尻もちをついた。

 「ノエル!お前なんか目障りなんだよ!さっさと出ていけ!」

 (……柔よく剛を制す……)その瞬間、ノエルの脳裏に言葉が浮かんだ。

 (そうだ。力弱き者が、技で剛力を制す。それが武術の真髄だ)

 (力はEだ。筋力じゃ勝てねぇだが、技と速度なら……)ノエルの体が一瞬緑色の光を帯びた。

 ノエルはスッと立ち上がると、無防備に近づいてきたライオスに向かって、素早く、低い姿勢からのしなやかな前蹴りを放った。

 「ウッ……!」ライオスは腹部に強烈な衝撃を受け、一瞬息を呑んだ。

 体格で勝るはずのライオスは、その衝撃に耐えきれず、後ろの机に突っ込むように倒れ込んだ。

 「ぐっ……な、なんだ今の……」ライオスは腹を押さえてうずくまる。

 「技だよ。お前の力が強ければ強いほど、技は効く」ノエルは倒れたライオスを見下ろし、静かに言った。

 「何だと!!弱虫ノエルのくせに偉そうに!お前!生意気なんだよ!」

 怒りに燃えたライオスが再び突進してくるが、ノエルは最小限の動きでかわす。空手の受け流しの要領でライオスの腕を払い、その勢いを利用して体勢を崩した。

 その動きは、無駄がなく、流れるようだった。

 (俺、すげぇ……!何だか体が軽いし、しかも体が覚えている!)ノエルは倒れうずくまっているライオスを見て思う。

 「前世で磨いた空手の技は、この異世界の体でも使えるぞ!筋力Eでも、技術は死んでねぇ!」

 静まり返る教室。普段泣いてばかりだったノエルが、あのライオスを一方的に制している光景に、生徒たちは開いた口が塞がらなかった。

 ライオスは悔しさに顔を歪ませたが、ノエルの異様な迫力と、それに恐怖を感じ立ち上がることすらできなかった。

 ノエルは冷めた目でライオスを一瞥いちべつすると、落ちた教科書を拾い上げる。

 「ヒーラーの資質なんて関係ねぇ!俺は武術士(ファイター)になる!」

 ノエルはそう呟くと威風堂々と教室を後にするのだった。
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