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現実
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殿下はサリーが解消を望み、あれからもエマ・ネイリーが代わりを出来ると思い込んでおり、周りにも不出来な私より優秀だと話していることは王家にも届いており、自分の有責でいいとすら言っていることを両陛下に話した。
今更ではあるが、両陛下も殿下の行動が悪手だったことは分かっている。だが、サリーほどの有能な令嬢を、はいそうですかと手放すことは出来ない。
エマ・ネイリーは王宮に呼び出され、試験を受けるように言われた。来たことで分かるように縁談は持ち込まれたが、まとまることはなかった。
「私は王太子妃教育を任されております、ティファナ・アズラーと申します。ネイリー様が、サリー様の代わりが出来ると伺っております」
「あの、代わりが出来ると言ったわけではありません」
「いえ、その場にいた者も"あなたの代わりをしていたのです"と聞いており、確認が取れております」
あの場にいたメイドだと思った、確かに言ったが、今さらそういう意味では無いとは言えない。
「ですので、試験を受けていただきます」
「私が殿下の婚約者になるということでしょうか」
「私にそのような権限はありません。ただ、試験を行って欲しいと頼まれただけでございます。拒否も出来ますが、いかがなさいますか」
「いえ、光栄だとは思いますけど。私と王太子妃教育を終えているサリー様では格が違います」
「でも仰ったんですよね?代わりをしていたと」
「あのそれは…」
「他の者にも調査をしましたら、そのように振舞ってらしたと多数の確認が取れております」
確かに優秀な方なのでしょうと言われて、否定はせず、協力者だったと分かった後でも、サリーの代わりをしていたと周りにも話していた。
「心配せずとも、これは学力がどの程度あるかの試験です。王太子妃教育であれば、ここからどう進めるかの試験でございます」
「なるほど、そういうことですか」
エマは出来なくとも問題ないと判断し、分かるところを埋めて行くも、結果は見なくとも分かるというものであった。外国語はその外国語で問題が書いてあるため、答えが書けないどころか、問題が理解できないので白紙であった。
子爵令嬢で特に家庭教師も雇っていない、成績上位者でもない、何か秀でたものもない。劇で男装をして、長身であることから、一部の低位貴族に持て囃されただけである。見た目だけは凛としているので、馬鹿には見えないと言ったところだろうか。
サリーがこの試験を受けたのは八歳の時である。サリーは勤勉でもあるが、非常に記憶力がいい。
殿下も両陛下に呼ばれ、エマの結果を聞くこととなった。
「まさか受けさせたのですか」
「ああ、よくも代わりなどと言えたものだ」
「代わりだとは言っていないと言っておりましたが」
「侯爵家のメイドが"あなたの代わりをしていたのです"と聞いておるし、その後も周りに話していたそうだ。試験も些細なミスも多く、回答した部分だけでも半分も正解していない。アズラー夫人に言わせれば、見掛け倒しだそうだ」
「そうでしょうね」
「気に入っているのならば、側妃も無理だが、愛妾にでもするか?」
「いいえ、そんなつもりはありません」
サリーの現実は残酷であった。
「結婚は覆らなかった、希望があれば言ってくれ。傷付けた分の責任はちゃんと負うつもりだ」
「では希望ではなく、条件があります」
「ああ、何でも言ってくれ」
「まずネイリー様を王太子妃が難しいなら、時を見て側妃にして下さい。そして子どもはネイリー様に産んで貰ってください。私はあなたに触れられたくもない」
「エマとはそのような関係ではない」
殿下は立ち上がってまで、大きな声で否定をした。
「あんなに親しかったではありませんか」
「あれは演技だ」
「まあ、でしたら役者にもなれますわね」
「もう許してはくれないのか」
「あなたはこう思っているんでしょう?当たり前のことをした、お前を守るためでもあったのにと、何で感謝されずに罵倒されるのかと、間違っているのはお前の方だと。私が狙われたのはネイリー様がいたからでしょう?それなのに、なぜ正義面が出来るんですか?前後が逆ですよ?恥ずかしくないの?」
「いや、エマがいなくても狙われていたんだ」
「ネイリー様関連はあなたのせいでしょう?あなたが油を撒いたも同然でしょう?」
「でも守ったのは事実だ」
王太子の婚約者という立場上、命を狙われたことは何度もある。ただし、最近の嫌がらせは明らかにエマを担ごうとした人の仕業であった。
「殿下が出来るのはただ一つです。私の代わりの出来るネイリー様を側妃にして、子どもを産んでもらってください。あなたがやるべきことはそれだけです」
「それは出来ぬ、彼女に側妃すら無理だ。どちらにせよ、不貞だったと思われる」
「演技する間に愛が生まれたとでも言えばいいじゃないですか」
「彼女には彼女の人生がある。責めるのは私であって、彼女ではない」
「私の人生は考えてくださらないのですね」
「我儘を言うな!」
今更ではあるが、両陛下も殿下の行動が悪手だったことは分かっている。だが、サリーほどの有能な令嬢を、はいそうですかと手放すことは出来ない。
エマ・ネイリーは王宮に呼び出され、試験を受けるように言われた。来たことで分かるように縁談は持ち込まれたが、まとまることはなかった。
「私は王太子妃教育を任されております、ティファナ・アズラーと申します。ネイリー様が、サリー様の代わりが出来ると伺っております」
「あの、代わりが出来ると言ったわけではありません」
「いえ、その場にいた者も"あなたの代わりをしていたのです"と聞いており、確認が取れております」
あの場にいたメイドだと思った、確かに言ったが、今さらそういう意味では無いとは言えない。
「ですので、試験を受けていただきます」
「私が殿下の婚約者になるということでしょうか」
「私にそのような権限はありません。ただ、試験を行って欲しいと頼まれただけでございます。拒否も出来ますが、いかがなさいますか」
「いえ、光栄だとは思いますけど。私と王太子妃教育を終えているサリー様では格が違います」
「でも仰ったんですよね?代わりをしていたと」
「あのそれは…」
「他の者にも調査をしましたら、そのように振舞ってらしたと多数の確認が取れております」
確かに優秀な方なのでしょうと言われて、否定はせず、協力者だったと分かった後でも、サリーの代わりをしていたと周りにも話していた。
「心配せずとも、これは学力がどの程度あるかの試験です。王太子妃教育であれば、ここからどう進めるかの試験でございます」
「なるほど、そういうことですか」
エマは出来なくとも問題ないと判断し、分かるところを埋めて行くも、結果は見なくとも分かるというものであった。外国語はその外国語で問題が書いてあるため、答えが書けないどころか、問題が理解できないので白紙であった。
子爵令嬢で特に家庭教師も雇っていない、成績上位者でもない、何か秀でたものもない。劇で男装をして、長身であることから、一部の低位貴族に持て囃されただけである。見た目だけは凛としているので、馬鹿には見えないと言ったところだろうか。
サリーがこの試験を受けたのは八歳の時である。サリーは勤勉でもあるが、非常に記憶力がいい。
殿下も両陛下に呼ばれ、エマの結果を聞くこととなった。
「まさか受けさせたのですか」
「ああ、よくも代わりなどと言えたものだ」
「代わりだとは言っていないと言っておりましたが」
「侯爵家のメイドが"あなたの代わりをしていたのです"と聞いておるし、その後も周りに話していたそうだ。試験も些細なミスも多く、回答した部分だけでも半分も正解していない。アズラー夫人に言わせれば、見掛け倒しだそうだ」
「そうでしょうね」
「気に入っているのならば、側妃も無理だが、愛妾にでもするか?」
「いいえ、そんなつもりはありません」
サリーの現実は残酷であった。
「結婚は覆らなかった、希望があれば言ってくれ。傷付けた分の責任はちゃんと負うつもりだ」
「では希望ではなく、条件があります」
「ああ、何でも言ってくれ」
「まずネイリー様を王太子妃が難しいなら、時を見て側妃にして下さい。そして子どもはネイリー様に産んで貰ってください。私はあなたに触れられたくもない」
「エマとはそのような関係ではない」
殿下は立ち上がってまで、大きな声で否定をした。
「あんなに親しかったではありませんか」
「あれは演技だ」
「まあ、でしたら役者にもなれますわね」
「もう許してはくれないのか」
「あなたはこう思っているんでしょう?当たり前のことをした、お前を守るためでもあったのにと、何で感謝されずに罵倒されるのかと、間違っているのはお前の方だと。私が狙われたのはネイリー様がいたからでしょう?それなのに、なぜ正義面が出来るんですか?前後が逆ですよ?恥ずかしくないの?」
「いや、エマがいなくても狙われていたんだ」
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「それは出来ぬ、彼女に側妃すら無理だ。どちらにせよ、不貞だったと思われる」
「演技する間に愛が生まれたとでも言えばいいじゃないですか」
「彼女には彼女の人生がある。責めるのは私であって、彼女ではない」
「私の人生は考えてくださらないのですね」
「我儘を言うな!」
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