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嘆息
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クリコットは侍女であるリビアナ・ゾーイからサリーの宮にエマ・ネイリーがやって来て、側妃になると言い出したという報告を受けていた。
「はあ?なんだそれは」
「それはこちらの台詞です。側妃になります。三ヶ国語は学びはしますけど、免除ということで、語学はサリー様にやってもらって、私は別のことを。別のことってなんだよ!お前に出来ることなんてねーよ」
「おい、言葉が酷すぎやしないか」
「いいじゃない、怒りたくもなるわ」
この二人、実は親戚であるため、言葉使いが酷くても許される間柄である。だからこそ、サリー様付きの侍女に抜擢したのだ。
「まあ、そうだな」
「さらに横領の件で自分は功績があるから、通訳を付けて貰って、はあ?その程度でお前だけ通訳付けられるはずないだろ」
「うん、まあいい。その通りだな」
「サリー様が全て撃退されました。おそらく三ヶ国語すべてで、三ヶ国語は出来るのよね?と仰った時のエマ・ネイリーの顔は無様なものでしたよ。心の中で、サリー様格好いいと旗を振りたいほどでした」
「それは格好良かっただろうな」
エマ・ネイリーは何を勘違いしてやって来たのだろうか、三ヶ国語が出来ないと側妃にはなれないと教えたではないか、妃殿下の言葉でそんな顔をする資格すら、本来はないのだ。
「ええ、あの男装もどきは」
「うん、男装もどき、まあ、もういい」
もはや名前も呼びたくなくなったのだろう、見掛け倒し、張りぼてと来て、男装もどき、一番酷いが見事である。
「いつもの側妃希望と同じものです。サリー様も公務は私に任せて、高価なドレスを着て、溺愛されて、閨を行いたい女性と評されました。素晴らしい表現です」
「そういったのか?」
「はい、概ねそう仰いました。そして三ヶ国語なんてと言い方をしたので、サリー様が陛下と殿下を馬鹿にしているのか、あなたは出来ないと言えるけど、王家に生まれていたら、死ぬ気で覚えることよと、これまた格好良かったです」
「王太子妃の鑑のような方なんだよな」
王族は出来る出来ないではない、我々も三ヶ国語が話せるわけではないからだ。
「当たり前です!しかもその癖、愛妾は嫌だという雰囲気を出しておりました」
「愛妾すら断れたと言ったんだがな」
「愛妾は駄目でも側妃ならと考えているのではありませんか。あったまがおっかしい様子でしたから」
「そ、そうだな。妃殿下は怒ってらっしゃるか」
今でも冷戦状態、しかもレベッカ妃の見習いによって、王女の今後も危うい立場である。今にも貴族たちが新たな側妃と言い出しかねない状況である。
「あの男装もどきには怒ってました。お前が私の代わりをしたと言ったくせに、一体何を持って代わりなんだと」
「ああ、でもこれでやっと代わりにはなれなかったことは、妃殿下もエマ・ネイリーも分かっただろう」
「あれが分かってますかね?納得いかない様子でしたよ」
「はぁ…何なんだあれは」
「だから、それはこちらの台詞です!」
「ああ、その通りだな」
「あと、殿下はあの男装もどきにキッスしたのですか」
「はあ?」
リビアナの言葉に思わず、ふざけた声が出てしまった。
「サリー様が仰ってました。キスされて舞い上がったのだろう?抱いては貰えなかったのだろうけどと」
「そう言ったのか?」
「はい、概ね。確信を持っているようでしたし、あの男装もどきも図星という表情でした。私は特別だったとまで言っておりました、どこがだよ!」
「性欲処理の相手はお気付きだろうと思っていたが、知ってらしたのか」
「したんですか?」
「ああ、うっかりと言ってらした」
「うわ…それ以上は殿下なので控えます」
「ああ、そうしてくれ」
酷い言葉が飛び出しそうであったが、さすがに控えるところは分かっている。
「ですので、あの男装もどきはキッスで舞い上がって、側妃になると言い出したんでしょう。能力もないのに、サリー様はあれが優秀だったら、ここにいなくて済んだのにと、本当に憎い、この大嘘つきがと叫ばれて、顔を見たくない、帰って頂戴と追い出されました。これも格好良かったです」
「そもそも何で入れたんだ?」
「私たちは追い返そうとしたのですが、サリー様が今さら何なのか興味があると仰いまして」
「なるほどな、役立たずがのこのこ何しに来たんだというところか」
「ええ、そうだと思います」
リビアナは言いたいだけ言ってスッキリしたようで、私はこれを殿下に告げなくてはならないのかと思うと、どっと疲れるクリコットであった。
「はあ?なんだそれは」
「それはこちらの台詞です。側妃になります。三ヶ国語は学びはしますけど、免除ということで、語学はサリー様にやってもらって、私は別のことを。別のことってなんだよ!お前に出来ることなんてねーよ」
「おい、言葉が酷すぎやしないか」
「いいじゃない、怒りたくもなるわ」
この二人、実は親戚であるため、言葉使いが酷くても許される間柄である。だからこそ、サリー様付きの侍女に抜擢したのだ。
「まあ、そうだな」
「さらに横領の件で自分は功績があるから、通訳を付けて貰って、はあ?その程度でお前だけ通訳付けられるはずないだろ」
「うん、まあいい。その通りだな」
「サリー様が全て撃退されました。おそらく三ヶ国語すべてで、三ヶ国語は出来るのよね?と仰った時のエマ・ネイリーの顔は無様なものでしたよ。心の中で、サリー様格好いいと旗を振りたいほどでした」
「それは格好良かっただろうな」
エマ・ネイリーは何を勘違いしてやって来たのだろうか、三ヶ国語が出来ないと側妃にはなれないと教えたではないか、妃殿下の言葉でそんな顔をする資格すら、本来はないのだ。
「ええ、あの男装もどきは」
「うん、男装もどき、まあ、もういい」
もはや名前も呼びたくなくなったのだろう、見掛け倒し、張りぼてと来て、男装もどき、一番酷いが見事である。
「いつもの側妃希望と同じものです。サリー様も公務は私に任せて、高価なドレスを着て、溺愛されて、閨を行いたい女性と評されました。素晴らしい表現です」
「そういったのか?」
「はい、概ねそう仰いました。そして三ヶ国語なんてと言い方をしたので、サリー様が陛下と殿下を馬鹿にしているのか、あなたは出来ないと言えるけど、王家に生まれていたら、死ぬ気で覚えることよと、これまた格好良かったです」
「王太子妃の鑑のような方なんだよな」
王族は出来る出来ないではない、我々も三ヶ国語が話せるわけではないからだ。
「当たり前です!しかもその癖、愛妾は嫌だという雰囲気を出しておりました」
「愛妾すら断れたと言ったんだがな」
「愛妾は駄目でも側妃ならと考えているのではありませんか。あったまがおっかしい様子でしたから」
「そ、そうだな。妃殿下は怒ってらっしゃるか」
今でも冷戦状態、しかもレベッカ妃の見習いによって、王女の今後も危うい立場である。今にも貴族たちが新たな側妃と言い出しかねない状況である。
「あの男装もどきには怒ってました。お前が私の代わりをしたと言ったくせに、一体何を持って代わりなんだと」
「ああ、でもこれでやっと代わりにはなれなかったことは、妃殿下もエマ・ネイリーも分かっただろう」
「あれが分かってますかね?納得いかない様子でしたよ」
「はぁ…何なんだあれは」
「だから、それはこちらの台詞です!」
「ああ、その通りだな」
「あと、殿下はあの男装もどきにキッスしたのですか」
「はあ?」
リビアナの言葉に思わず、ふざけた声が出てしまった。
「サリー様が仰ってました。キスされて舞い上がったのだろう?抱いては貰えなかったのだろうけどと」
「そう言ったのか?」
「はい、概ね。確信を持っているようでしたし、あの男装もどきも図星という表情でした。私は特別だったとまで言っておりました、どこがだよ!」
「性欲処理の相手はお気付きだろうと思っていたが、知ってらしたのか」
「したんですか?」
「ああ、うっかりと言ってらした」
「うわ…それ以上は殿下なので控えます」
「ああ、そうしてくれ」
酷い言葉が飛び出しそうであったが、さすがに控えるところは分かっている。
「ですので、あの男装もどきはキッスで舞い上がって、側妃になると言い出したんでしょう。能力もないのに、サリー様はあれが優秀だったら、ここにいなくて済んだのにと、本当に憎い、この大嘘つきがと叫ばれて、顔を見たくない、帰って頂戴と追い出されました。これも格好良かったです」
「そもそも何で入れたんだ?」
「私たちは追い返そうとしたのですが、サリー様が今さら何なのか興味があると仰いまして」
「なるほどな、役立たずがのこのこ何しに来たんだというところか」
「ええ、そうだと思います」
リビアナは言いたいだけ言ってスッキリしたようで、私はこれを殿下に告げなくてはならないのかと思うと、どっと疲れるクリコットであった。
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