【完結】あなたの愛は今どこにありますか

野村にれ

文字の大きさ
1 / 34

死別

しおりを挟む
 カールス・ハイラードには、半年前に息子・リークスが誕生した。

 息子の誕生は本当に嬉しかったが、妻は産後の肥立ちが悪く、徐々に弱っていき、大好きなふわっとした少しくせ毛の髪も、ずっとベットに寝ており、今ではぺちゃんこになってしまっている。

 時間の許す限り、妻に付き添い、息子と三人で過ごすようにした。

「もっと生きたかった、リークスが成長した姿も見たかった…」
「見れるさ!」

 妻は起き上がれなくなってしまい、食事も喉を通らないことが増えていた。

「そうね…でも、もし私がいなくなっても、リークスを大事に守って、駄目な時は叱ってあげてね」
「そんなこと言わないでくれ!私は、君以外を妻にする気はない!」

 そのまま、いよいよ危険な状態になり、泣きながら叫んだが、妻・メリリーは帰らぬ人となってしまった。幼いリークスはまだ何が起きたのか分からない。

 そんな息子を抱きながら、私はただただ悲しみに暮れるしかなかった。

「もし、君がいなくなっても、絶対に再婚なんてしない…」

 メメリーの葬儀が終わり、両親も手伝ってくれて、何とか生活は出来ていたが、心はままならなかった。

 喪が明けると、ハイラード家は伯爵家という立場、幼子には母親が必要だろうと言われたが、全て突っぱねた。

 だが、再婚話は消えることなく、リークスが二歳になる頃、また勧められたが、私の妻はメリリーだけだと、彼女に誓ったのだと言い切った。

 だが、一人だけ妻はメリリーだけでいいと、私にご子息を育てさせて貰えないかという令嬢がいた。夫の浮気で離縁し、実家も折り合いが悪く、私も居場所が欲しいだけなのだと話した。

 明るく活発な女性で、リークスも懐き、再婚を決めた。

 メリリーを思い出しては、リークスにメリリーの面影を感じて、じめじめする私を叱ることもなく、見守ってくれて、再婚して三年後には次男・エンバーも生まれた。それでも、私の中にメリリーが消えることはない。

 リークスは今でも、メリリーの生家であるスペンサ侯爵家にも訪れている。始めは私とリークスだけが行っていたが、今は妻・バイラとエンバーも一緒に訪問させて貰っている。

「メリーナ、お前もこちらに来て遊んだらどうだ?」
「いいえ、わたしはえんりょしますわ」

 スペンサ侯爵家は、メリリーの兄が継ぐことになっており、ご子息が二人と、エンバーと同い年のご令嬢がいた。

 ご子息たちはリークスもエンバーも可愛がってくれたが、メメリーが亡くなってから、生まれたメリーナはメメリーにも似ており、名前もメメリーから名付けられたが、私たちとは距離を取っていた。

 カールスは女の子だから男の子ばかりは、嫌なのだろうと思っていた。

 だが、エンバーはメリーナを気に入り、物静かなメリーナに、活発なエンバーがよく引っ張っていくようになった。

「メリーナ、外で遊んだほうがいいよ」
「私はいいわ、汚れるもの」
「少しだけだから、大丈夫だよ」

 始めはメリーナは拒否していたが、いくら断っても諦めずに誘ってくる様子に、その後は仕方ないという形で、付き合ってくれるようになり、時折は笑顔も見られた。

「仲良くなれて良かったな」
「メリーナ様はメメリー様に似てらっしゃいますから、カールス様と好みが同じなのかもしれませんね」
「どうかな、メメリーは穏やかだったからね、ハッキリと口にするメリーナ嬢とは違うかもしれないよ。むしろ、君に似た人だからじゃないかい?」
「まあ、そうかしら」

 カールスとバイラは、エンバーとメリーナを微笑ましく見守っていた。

【神様…私は何か罪を犯したのでしょうか…】


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お読みいただきありがとうございます。

ただいま、連載中の話を書いていたら、
どうしてもこちらの話が書きたくなってしまい、
昇華するために自己満足で書かせていただきます。

いつものように短編詐欺ではなく、
あまり長くならない予定です。

ただ、捻くれた話になると思いますので、
よろしければお付き合いください。

よろしくお願いいたします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする

夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、 ……つもりだった。 夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。 「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」 そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。 「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」 女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。 ※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。 ヘンリック(王太子)が主役となります。 また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

処理中です...